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あなたに捧げるサプライズ

前回の続きです。



『ああ、アイリーン。私は心から君を愛している。あんな平民など捨て、どうか私の元へ来なさい。』


『わ・わたしの事など、ほっと、いでください・ませ。ディニス様…』


…。


どんなに目の前の女性(?)に愛を囁いても、女性は引きつったまま石顔。


「ちょっと、シリウス!やる気あるの?いい加減にしないと引っ叩くわよ?」


「ちゃんとまじめにやっていますよ!!」


セリフがカミカミで何処かだ?


ロザリアは不満で頬を膨らませる。


本番まで残り僅かとなりメインである4人は居残り稽古をしていた。

その中で余りにもシリウスの酷い演技。


相手役のレイドリックや恋敵役のナージャが頭を抱える。


「まさか演技が得意そうなお前が、こうも駄目だったとは…情けない…。」


「兄さん!別に劇が苦手ではありません。たた、女性役が問題なのです、女性役が!!」


シリウスが真剣な顔で言い訳をする。


役を演じるのは問題ない。

だけどシリウスの役はヒロイン、女性役だ。

中々女性のように振る舞えないシリウスはかなり苦戦している。


これが女性役でなければ、恐らく軽々と役をこなせるだろう。

裏で暗躍する為に己を偽るぐらい次期宰相なら容易い事なのだから。


だが、どんなに苦手でも放棄は許されない。



「リリーを怒らせるからよ?でも、お陰で学園祭が楽しくなったから、わたくしは嬉しいけど…ただの歌劇なんてつまらないわ?ねえ、ナージャ?」


「ええ、勿論。私達には嬉しい案件だわ。」


前回のやらかし案件をロザリアとナージャは以下当然の様に言う。

仔兎様を思い出したのか、シリウスは苦い顔をした。


「く…あの仔兎を甘く見ていましたよ?…いつも僕達のいないフォローを淡々とこなしてくれるから気づくのが遅かった…流石はバロンの元英雄。ただでは行きません…。」


生徒会の仕事を蔑ろにして己の仕事を優先した彼ら達に、仔兎様からの強力な兎キック。

約三名はかなりの大ダメージを受けている。


「しかもあの子兎は僕の父まで味方につけているのですよ!?父に何を言われたと思います?『リリー嬢が満足する劇に出来なければ、ナージャ嬢との婚式を遅らせて宰相へ武者修行を行う』って!?ルーも陛下から脅されているって言っていましたし、どれだけ最強なのですか!?」


シリウスの叫びに三人は引きつっている。


各親に脅されている次期大臣達。

学園祭を盛り上げないと強烈な罰が与えられる。


「リリー様に当たるな。お前の怠慢さを呪え。」


「そうよ。わたくしの妹にそんなことを言うなんて…まだまだお灸が必要かしら?」


「私もハワード侯爵様に賛成!しっかりしないと、私の代わりでナディルに嫁いでもらうわ!!」



三人の容赦ない言葉にシリウスは撃沈する。

誰も彼を庇う者はいない。


特に最後の言葉がかなりの大ダメージだ。


「あれー、皆さんお揃いですねー?」


「ジュリア!?」


監督が来たようだ。



「御機嫌よう。…あれ?灰被り姫が落ち込んでいますねー、またですか?」


更に追い打ちをかけるようにジュリアは冷めた目でヒロインに視線を向ける。


「そうなの。困ったものだわ?」


大いにため息をついてロザリアは言うと、ジュリアは更に目つきを鋭くする。


「ふーん。これはいけませんね?仕方ありません。私がみっちり指導してあげましょう?」


「はぁぁっ!?」


シリウスがジュリアを見て後退る。

ジュリアの『指導』と聞いて顔色が更に悪くなっているようだ。


「大体、もう時間がないと言うのに往生際が悪い人です。あの子兎に3人をとことん追い込んでいいと言われているし、覚悟して貰いましょうかー?」


恐ろしいこと言ってじりじりと迫るジュリアにシリウスは完全に白旗を掲げた。


ジュリアは最強仔兎の相方。


その恐ろしさをシリウスは身をもって知っているからこそ、逃げたくとも逃げられない。


「ちょ、ちょっと三人とも!そんな冷めた目で見ないで助けてくださいよ!?」


とうとうシリウスが三人に助けを求めた。


「助けて…だそうよ?どうする?」


「でも本番まで時間が無いわ?もう少し付き合いましょう?」


「仕方ない…僕もまだシリウスに付き合うか…。」


三人はまだ稽古を続けると決める。

シリウスを助けるではなくジュリアに味方しているようだ。

その所為か灰被り姫は大きくショックを受けている。


「助かります。あ、でもリリーがロザリア様を呼んでいましたよ?もうすぐナディルさんとナルシェさんもここに来ますので私達に任せて行ってください。恐らく今、訓練場に居ると思います。」


「リリーが?何かしら…わかったわ。後の皆でこのお馬鹿さんをお願いね?」


ロザリアは舞台から降り外へと向かった。


「さて、お待たせしました。じっくりその身に叩きこんで差し上げましょう?お義兄様」


「ぐぐっ…。こんな時に義兄と呼ばないでくださいー!!」


舞台にシリウスの悲鳴が大きく響いた。




・・・・・


一方、


ロザリアは一人訓練場へと向かう。


「訓練場か…今頃、マリアンたちが稽古しているわね?リリーは何であそこにいるのかしら?」


訓練場の門に入ると多くの騎士候補や現騎士である学生が必死に稽古に励んでいた。


ロザリアが入ると、多くの訓練生がロザリアに注目してにこやかに手を振っている。

そんな彼らにロザリアも手を振って返すと、いきなり怒鳴り声が聞こえた。


「そこー!訓練中に余所見をするとは何事かー!?」


「…あ、駄犬の声だわ?」


吠える駄犬に訓練生が怯えて再び剣を振る。


「お前もここは神聖なる訓練所だぞ?関係ない奴は戻れ!」


「煩いわね?わたくしはリリーを探しに来たのよ。リリーはいる?」


「はぁ?…ああ、あいつはさっきまでいたが、クルクル毛の女に担がれて出て行ったぞ?」


マリオットがその女性の特徴であるクルクル毛を再現する様に頭の横でクルクルと人差し指をまわす。


クルクル毛、それはリリーとジュリア達の後輩であるアリエッタ嬢のツインテール。

ロザリアも「あの子ね?」と理解する。


「担がれて…て、あの子に何かあったの?」


「いや、ただクルクル毛に抱っこされていた。…最近、あいつが金毛の兎しか見えん。」


「…。」


マリオットの言葉にロザリアも渋い顔して頷く。

そう、最近のリリーは更に兎へと進化しているのだ。

しかも後輩達に可愛がられてご満悦している。



「リリーが他人に懐いていると…若干一名、ヤンデレ度がパワーアップする奴がいたわね?」


「…ああ、もう手遅れだ。あれ見ろ…屍だらけだろう?」


マリオットが差す先に多くの屍…訓練生が倒れている。


その先にその屍を作った元凶とマリアンが手合わせをしていた。


「…なんか…リアンが勇者に見える。」


目の前の景色にロザリアは、勇者マリアンが魔界の邪狼と対峙しているような構図に思えた。


その勇者は邪狼にかなり苦戦している。


「…お前が来ると余計にあいつに火が着く…ただでさえ、この前の案件で手が抜けなくなったから、グレンは凄く荒れているんだ。…リリーがまだ怒っているから、誰もグレンを抑えられない。」


「ここにも仔兎に蹴られた人が居たわ。」


未だにリリーはお菓子を食べられた恨みでグレンを許していない。

その所為かグレンは稽古しながら色んな訓練生たちに八つ当たりをしていた。


誰も止められないから余計に厄介者。

そんな邪狼を止めるべくロザリアはグレンの元に向かう。


ちょうどマリアンを吹き飛ばし、冷酷な目で見下して止まっている邪狼。


「ちょっとグレン、いい加減になさい。」


「…馬鹿猪か。なんだ?」


邪狼はロザリアに刺すような眼を向ける。

でも、ロザリアは慣れたもので怖がらない。


「少しは穏やかにいられないの?そんな事ばっかりすると余計にリリーに蹴られるわよ?」


「煩い。ただの文句ならさっさとここを去れ。俺は忙しい。こいつら全員、大会の前に叩き潰してやる。」


邪狼がまだ血を求めている。

周りにはたまったものではない。


するとマリアンが戻って来た。


「ロザリア様、ここは危ないですよ?」


「大丈夫。こいつの圧は慣れたものだから。…ねえグレン、リリーがどこに行ったか知らない?あの子を探しているの。」


「リリー?あいつはルーベルトの所に行くと言っていたが?…リリー…俺を置いて、あんなガキによしよしされて喜ぶなんて…俺のリリーなのにっ!」


八つ当たりする様に足で地面を蹴る邪狼。

そんな邪狼にマリアンは大きくため息をつく。


「…ずっとこんな調子なのです。」


「…マーカス侯爵との勝負で悶々しているわけではないのね?グレンらしいったららしいけど、少し頭を冷やす必要があるわ…悪いけど、こいつも連れて行くわね?」


そう言ってロザリアはグレンに近づいた。


「ほら、もういいでしょう?リリーの所に案内して?」


「はぁ?なんで俺がお前を案内しなければならない?行くなら俺一人で行く。お前は勝手に行け。」


プイっとそっぽ剥く狼の裾を掴みロザリアは引っ張った。


「今のあんたがここに居ると皆の邪魔よ?それよりあの子の機嫌をすぐに直すいい方法があるわ。聞きたくない?」


いい方法と聞いて狼の耳が大きくなった。


「…なんだ?」


流石にリリーの怒りに堪えているのか、グレンがロザリアの話に耳を傾ける。


「移動中に話すわ。だから一緒に行くわよ?」


「…嘘だったら容赦はしないぞ?」


「嘘つく訳ないでしょ。リアン悪いけど、こいつを連れて行くわ。また後でね?」


威嚇するような顔で睨みつける狼を連れてロザリアは訓練所を後にした。


「…いい練習相手が連れて行かれましたね?」


「ああ…。ちょっと寂しいな…?」


マリアンとマリオットが顔合わせに言った言葉はロザリア達に届かなかった。




・・・・・



「…確かにそう言われると、どおりで最近あいつの仕事部屋に似合わぬ家具が増えたと思った…。敢えてリリー用として用意していたのか…?」


「あの子、家にいる時もそうなのよ?お気に入りのクッションの上で丸まっているかと思えば、気づいたら突然いなくなっているの。」


ルーベルトがいるところまで、ロザリアとグレンはリリーの機嫌を取る方法を話していた。


「ここずっと、抱っこしてキスしたり撫でたりしたけど…いつも何か言いたげな顔していたな?…やってみる価値はありそうだ。」


「ド変態!…でも、リリーはそんなあんたが良いみたいだし…もう、二人の行く道先が不安だわ?」


姉として行き過ぎる二人の行為に不安を覚える。

成人だからと言って、せめて婚姻までは止めて欲しい。


「まあ…だからって、あんたのお仕置きは変わらないからね?リリーに聞いた話だと、マーカス侯爵は既に武術指南を騎士団長と話を付けたという話よ?」


「…。」


武術指南と聞いてグレンの眉間に思いっきり皺が寄った。


そう、武術大会でグレンが自分の父に負けた場合、騎士指導を任されるという罰が待っている。

後、大臣補佐の仕事と領地関係の仕事を増やされ、リリーといちゃつく時間を削られると言う恐ろしい罰も含まれていた。


「その件でリリーが困っていたわね?カイナン団長とアンバー副団長がマーカス侯爵と手を合わせたくて、自分達も参加させて欲しいとせがまれたって…もうカオスだわ?」


最強と呼ばれた英雄の弟子。

その弟子も強く、国一番の強さを持つ。


そんな相手に手を合わせられるなど、マリオットとマリアン、そして強さを求める戦士たちにとってはこれ以上のない褒美。


その話を聞いて城に居る最高幹部は…凄く羨んだ。



「…ほっとけ。あいつらはどうやっても大会には出られん。」


どんなに最強と手を合わせたくても、騎士団長と副団長という最高役職を持っている以上、子供たちの大会には出られない。


参加できたとしても、国と国王を守る者が不在なんて到底有り得ない。


「…そうねぇ…でも何か起きそうで怖いわ?」



二人で話していると校舎の中にあるホールへ辿り着く。



中に入るとそこには…


「きゃぁぁっ!リリーお姉様、ルーベルト様、素敵―!!」


アリエッタ嬢の興奮した声がホールに響いた。


よく見ると、アリエッタ嬢だけではなくハリスや他の生徒達が二人を囲いその様子を眺めている。


皆が見守る中、仔兎と現王子なのに仮ドレスを着せられた王女様が踊っていた。


「やっているわねー?随分、可愛いダンスなこと。」


「練習でも女装か?あいつ哀れだな。」


仔兎と王女のダンスを見て二人は各々の感想を言った。


だが…。


「ルーベルト様、全然駄目ですよ?固すぎます、もっと柔らかく笑ってください。」


「そ、そんなこと言って、これが精一杯だよ?」


「いいえ、二人が取り合うヒロインはもっと女神の様に慈悲深く、華やか且つ可憐に、周囲を魅了するような艶やかさな表現を求められます。そのお面を付けたような笑みなど、以てのほか!」


「無理だー!!」


仔兎の無茶ぶりに王女様は半泣き状態だ。


「「…。」」


そんな子兎と王女を見つめる二人は沈黙してしまう。


「無理というから無理なのです!ほら、もう一度最初から…あら、お姉様?グレン?」


叱る仔兎は二人を見つけると満面な笑みを見せる。

そして…


「お姉様―。」


仔兎様は嬉しそうにロザリアに手を振った。


「段々、様になっているじゃない?」


「いいえ、この程度はまだ序の口ですよ?ルーベルト様に足りないのは表現力だけではなく、動作、女性の身のこなし等、全部。これはザハラン先生のご指導の元、今日中にマスターしてもらいましょう?」


ロザリアの褒め言葉も仔兎様にとっては妥協点に達していない。


リリーの後ろにザハラン先生が構えている。


「リリー嬢の仰る通りですわ。さあ、ルーベルト様、最高の舞台になるようレッスンを致しましょう?」


「ううっ。ロザ、助けて?」


ルーベルト姫が助けを求めてもロザリアは素敵な良い笑顔しては動かない。


「ザハラン先生、どうか我らの姫をお願いしますね?ルーベルト姫、頑張って励みなさいな?」


「ロザの裏切り者ー!!」


泣き叫ぶ姫に味方をするものは…残念だが誰もいない。


「お姉様、一旦お外に行きましょう?ハリス、私の代わりに姫の相手をお願いします。」


「はい、リリー様。」


ハリスに相手役を交代しリリーはぴょんと金毛の仔兎になってロザリアに抱きつく。


「こらリリー、マナーが良くなくってよ?」


「いいのですー。たまにはお姉様に甘えたいー。」


「リリー、俺もいるんだぞ!?おいで!」


姉に甘える仔兎に狼が嫉妬する。

でも、仔兎はそんな狼を見向きもしない。


「グレンはまだ稽古の時間なので相手をしません。稽古にお戻りくださいねー?」


冷たい仔兎に狼はたじたじだ。


「リリー、ほらこの中、暗くて狭くていいぞ?暖かいし、入ってみないか?」


グレンが自分の着ているジャケットの中を見せ仔兎を誘惑する。

傍から聞いていると変態だ。


これは先ほどロザリアから聞いた機嫌取り方法。

機嫌を取る魂胆だと丸見えでロザリアはかなり引いている。


でも仔兎は…


じー


しっかりとグレンのジャケットの中を見ていた。


「リリー、無理しなくてもいいわよ?」


ジー


ロザリアは気遣うものも、仔兎はずっとグレンのジャケットの中を真剣に見つめる。


そして…。



・・・・・




「…本当に暗くて狭い所が好きね?」



外に出たロザリアは狼のジャケットの中にいる子兎に呆れる。


「リリー、どうだ?」


「とてもいいです。落ち着きますねー?」


金毛の仔兎は満足そうに狼のジャケットの中で大人しくなる。


そんな仔兎に狼は嬉しそうだ。


「リリーは可愛いなー?どこもかしこも可愛い。これから何時でも入っていいからな?間違っても俺以外は駄目だぞ?」


「はーい。」


「待ちなさいよ、このド変態。機嫌が治ったなら控えなさい。リリーも人前なんてはしたないのだから駄目よ?」


狼にいい様に手懐けられる仔兎に流石のロザリアも注意をした。

でも注意がリリーを探していた理由ではない。

リリーはロザリアを探していた。

その件をロザリアは切り出す。


「ところで呼んでいたと聞いたけど、わたくしに何かしら?」


「はい。お姉様にお願いがありまして呼んでもらいました。」



指摘された仔兎は、一度はグレンのジャケットに身を隠し、再び現れる。

その手には一冊の薄い本を持っていた。


「実は、お姉様達の劇終了後に一つ余興の追加をすることになりまして、お姉様に“ディニス伯爵”としてその余興を出て欲しいのです。」


「余興?ジュリアはそんな事を一つも言わなかったわよ?」


そう、学園祭まで残り僅かな時間。ヒロイン以外は殆ど完成している。

なのに、このタイミングで余興を追加するなど些かおかしい。


「それは今日、生徒会議で決めたからですよ。これは本編とは違いますが、本編の続編として生かせるようになっています。台本を見てください。悪役のディニスが主役としているでしょう?」


「待って?…まぁ、彼の救済という処かしら?」


ぱっとみると悪役が反省し、その後へと繋がる話。

よくある悪役救済話だ。



「ええ、今回行う劇はあくまで悪役。でも悪役も話を彩らせる役だけなんて、些か勿体ないと思います。そこで色んな演技を得意とするお姉様なら続編を担う役目を十分に出来る。来年度の学園祭の為に是非お願いします。」



今回はライバルだけど、次回は続編の主役。

来年の学園祭の劇を盛り上げるためにも、演技の得意なロザリアに任せたいとリリーは言った。


「フーン…いいけど…この追加役は誰がやるの?」


既に了解しているのか、ざっと内容に目を通すロザリア。

台本の中で新たなキャラが出てくる事に疑問を抱く。


「それはジュリが担当します。…あ、お姉様に一つお願いがあります。」


ジュリアと聞いて納得したロザリアにリリーはもう一つお願いをした。


「実はこの話、全生徒と観客へサプライズを予定しています。なので、この話は誰にも他言はしないでください。グレンもよ?内緒ですからね?」


カムやルーベルト達にも内緒にして欲しいと仔兎は釘をさした。


「ああ。」


「分かったわ。…成程、だからジュリアは先ほど言わなかったのね?練習は今日かしら?」


「はい。今日の夜、ジュリは私のお部屋に来ます。そこで劇の練習と、あと少し細かな打ち合わせをしましょう。」


一通り話を伝え仔兎の話は終わった。


そして再びルーベルトの所に戻ろうと三人は向かう。


「今回は楽しみね?他国まで耳にして多くの客が来るそうじゃない?」


「はい。お姉様達の最後の学園祭を盛大に盛り上がるよう、手を尽くしていますからね?ふふ、グレン、責任重大ですよ?」


「やめてくれ…。それよりリリー、ちょっといいか?」


突然、グレンがリリーを止める。


「なんでしょう?」


「ロザリア、先に行っていてくれ。俺達はこのまま寮へと戻る。」


「いいけど…リリーに変な事したら許さないわよ?」


「俺達は夫婦なのだから良い。ほら、早く姫を迎えに行ってやれ。」


しっしっと追い払う狼に、ロザリアが怪訝な顔して先へ歩く。


二人を置いてロザリアは器楽ホールへと向かった。



ホールに入るとそこに居たのは、ルーベルト姫と珍しい相手がいた。

ザハラン先生やアリエッタ、ハリスなど他の生徒がいなく、ホールにはたった二人だけ。



「カム!?」


「ロア、お疲れ様です。」


婚約者がいることに驚き急いでロザリアは二人の元へ向かった。


「どうしてカムがここに居るの?」


「どうしてって…学園長の呼び出しで学園に来ましたが、途中生徒達に捕まりここへ連れられたのです。そしたら貴女ではなくルーベルト様がいたので、少し話していました。」


お節介な同級生がロザリアに会わせるためにカムをホールまで連れて来たらしい。

そしたらルーベルトが生徒と練習をしていた為カムは去ろうとしたが、ルーベルトが助けを求めたので見捨てる事も出来ず、王子に話があると言って練習を終わらして貰い今に至る。


「…ルーぅ?」


「仕方ないだろう?この後、仕事が残っているんだ!流石に僕も練習ばかり出来ないよ!!」


般若の様な恐ろしい表情したロザリアに、ルーベルトは必死に言い訳をした。


「まあ、先ほど見ていましたが、とても良かったですよ?とても可愛らしく華やかで、きっと見惚れる方が沢山いるでしょう?」


「…カム、男としてその言葉は…嬉しくない。」


ルーベルトを庇うカムに少しだけロザリアはムッとした。


「いいわ、後にリリーに判定して貰うから。」


リリーと聞いて青褪めるルーベルト。


「と、とりあえず僕は仕事に向かうよ?…夜中には戻る…。」


そう言ってルーベルトはホールをいそいそと出てしまった。

最近のルーベルトはちゃんと学園に戻ってきている。


リリーのお仕置きが相当堪えた様だ。



「…一国の王子をあまり虐めてはいけませんよ?」


「なによ?最近カム、ルーに凄く甘くない?仕事でも一緒に居るからかしら?」


財務大臣補佐であるカムは外務業務でルーベルトと良く仕事にする。

だからロザリアよりも長く一緒に居る事が多い。


「そんなことはありません…というより、可愛い弟な感じですね?グレンと一緒です。」


最近のカムはお兄ちゃん属性が強く、グレンやルーベルトなど甘えてくる者に弱い。

それはロザリアに対してもそうだが…。

そんな理由で毎回ロアリアは二人に嫉妬してしまう。


「…ずるい…。」


「え?」


ロザリアは悔しそうに頬を膨らませてそっぽを向く。


「カムといつも一緒に居るのは、わたくしだったのに…。」


幼少期からいつも一緒に居たのはロザリアだ。


お嬢様と従者。


そんな関係で、父の仕事以外はいつもカムの傍に居たのは自分だと、ロザリアは不貞腐れる。


恋人となってもその関係は崩れない…そう思っていたが、現実はそうはいかなかった。


「…俺はいつもロアの傍に居ますよ?」


そんなやきもちを妬く婚約者にカムは柔らかな笑みを浮かばせて微笑む。


「うそ!いつもあいつらと一緒じゃない!!」


カムが沢山の人に慕われている。

それは恋人であるロザリアにとっても自慢な事。


だけど、たまには恋人を独占したい。


『…カムを困らせるという事はわかっている…でも…』


良い子ばかりではいられない。


「ロア、俺は普段二人の前で仕事の話だけではなく貴女の話をよくします。」


「…わたくしの話?」


そっとロザリアはカムに視線をむける。

そこには、やきもちを妬いて呆れているカムではなく、穏やかで柔らかい笑みで見つめるカムだった。


「俺達の共通点は常に貴女、だから話は殆ど貴女の話になるのでしょう。…普段はロアと離れているのに、離れた気がしない…いつも貴女が隣にいる気がして安心するのです。」


「カム…。」


必ずその場に一緒に居なくても、その人を感じる。


そうカムは言ってロザリアを抱きしめた。


「寂しい思いをさせている事にはすみません。でも、俺は常に貴女を感じています。貴女を忘れられないぐらいに…いつも、またあの三人と喧嘩しているのだろうなって…ハラハラしています。」


「…最後の言葉は余計じゃないかしら?」


折角のいい雰囲気が台無しだ。


「他に余所見をする暇を与えないぐらいに、貴女の存在が大きいという事ですよ?ロア。」


そう言ってカムはロザリアの唇にキスを贈った。

ロザリアが顔真っ赤にして黙ってしまう。


「卒業まであと少し…その後が楽しみですね?」


してやったりの顔で微笑むカムに、ロザリアは更に顔を赤くして唸る。


「カ…カムの…馬鹿―!!」


ホールにロザリアの声が大きく響いた。





・・・・・


とある狼と仔兎の話


寮に向かう前に園庭まで狼が仔兎を運ぶ。


「リリー…さっきの台本の追加だが、あれに何かあるだろう?」


「流石旦那様、よくお気づきですね?」


狭くて暗い中をしっかり堪能している仔兎が、何かに気づいた狼を褒める。


「ふふっ、追加の話の主役はお姉様…それは先ほどお伝えした通りです。ですが、追加の役を演じるのはジュリではありません。」


ジュリアはフェイクだと仔兎は微笑む。


「じゃあ、誰だ?」


フェイクと知って狼は想像する相手を思い浮かべる。

大体の事は予想がついた。


「…グレン、当たりですよ?だから今日、わざわざ学園長からと偽ってお呼びしたのです。」


既に仔兎は次の手を打っている。


怪しい仔兎の微笑みに狼はたじろいだ。


「…あいつ…何かしたのか?」


「うーん、ちょっとした話を耳にしましたので…お姉様の為にサプライズを。勿論本人も恥ずかしいと言っていましたが了承を得ました。まあ、了承することは当然の事。しっかり裏の主役として頑張って頂きましょう?」


ふふっと仔兎は楽しそうだ。


「…完全にレベンスだな?その兎姿も…可愛いけど…。」



満足そうにジャケットの中で仔兎は近い未来を思い浮かべながら笑っていた。




and


お読みいただきありがとうございます。


こちらの仔兎様も着々と支配を強めています。

姉と義兄は青春を謳歌しているのに…


後お知らせです。

レベンス達の物語がスタートしました。

詳しくは活動報告に書いてあります。

タイトルは『いつか視る夢の先』、こちらも是非ご覧ください。



宜しくお願いします。


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