運気0の熱望者
「カァーっ! やっぱ見つかんねえか!」
「まあ1日目ですし、こんなもんですよ」
現実世界は深夜のZDOの世界にて、昼間と同じカフェテラスに、二人の男が座っていた。
悔しさからか頭を掻きむしり、ガンッ! とテーブルに頭をぶつける。傷がついた時の赤いエフェクトがジェネシスの頭に出来るが、当人はさして痛そうな素振りも見せず、額をテーブルとキスさせている。
そんなジェネシスを見て、男は優しく微笑みながら呟いた。
「……まあ、気になる人達はいたんですけどね」
「……男か? 女か?」
「女性でした」
ガバッと顔を上げ、「それで?」と目で促す。
「ジゼルか?」
「確証はありませんが、名前を隠そうとはしてましたね」
「へぇ……黒じゃねえの?」
「いいえ、まだ白です。隠す理由は色々とありますから。それに見たところ、魔法使いっぽかったですしね」
「マジかよ……あぁああ! 早く戦いてぇええ!」
早くあの日の剣技を見たい。また進化した自分で、彼女と戦いたい。溢れ出る闘争心が、彼の心を暴走させ、そして制御していた。
「それよりも新しいスキルを習得できましたか?」
「……ああ。なかなかオモシロそーなのゲットしたぜ」
「そうですか。それは良かった。今度ぜひ見せてくださいね」
足をバタつかせるジェネシスに苦笑して、男は席から立ち上がる。
「もう行くのか?」
「はい。動画の編集がてら、掲示板にスレでも作って、目撃者がいないか探ってみますよ。貴方は寝るのですか?」
「おう。俺はもう寝るわ……」
ふわぁ……と欠伸を漏らす。毎日ゲームをぶっ続けでプレイしなければならないプロゲーマーの睡眠時間というのは、とても貴重な時間だというのを彼は知っている。
「んじゃおやすみ」
「はい。おやすみなさい」
ジェネシスは青い光に包まれて、夜の帳の中へと消えていく。見上げると、日本では地方に行かなければ見えない星々が眩く瞬いていた。
片や最強。片や最強。奇しくもどちらも最強と呼ばれた者達の再会を目前に、片方の最強の相棒となった彼は独り吐息を吐いた。




