運気0の行動理念
《レイドバトルイベント近日開催! ノルド諸君、戦闘の準備だ!》
ZDOにログインすると、画面上にこんな告知が載っていた。ゲームイベント告知ではよくあるフレーズ。レイドイベントが開催されるらしい。
ZDO初のイベントとあって、ゲーム内での盛り上がりは最高潮に達している。
無論、ジゼルとカナデも参加することに決めていて、そのために今は準備期間として戦闘を行なっている。
「ジゼル! そっちお願い!」
「りょーかい!」
ジゼルに近づいていく青肌の蜥蜴型モンスターに向けて、数本の雷の矢を放つ。
「【サンダーアーツ】!」
雷の矢は的確に蜥蜴型モンスターの頭を射抜き、ポリゴン化して絶命した。『ジゼル再来案件』が終わってからと言うもの、ジゼルは魔法の威力よりも命中率を上げることに精を出し、DEX値を上げることはもちろん、魔法精度向上系のスキル取得に向けて励んでいた。
魔法を上手くカッコよく使うには、威力ばかりを上げて外すよりも、命中率を上げてジンワリも追い詰めていく方がやりやすいのだ。
それに高火力の魔法を使えば、嫌でもカッコいい魔法使いが完成することだろう。
ジゼルは剣より魔法を使いたい。カッコよく魔法を使いたい。その一心のためにZDOにログインし、修練し、スキルや魔法の習得に向けて動いているのだ。
かつて憧れた童話に出てくる『魔法使い』のように。
幼い頃から自然月花は童話の『灰被り』が好きだった。その中でも『魔法使い』が大好きだった。
人のために万能の魔法を使って、シンデレラにドレスを着せて、南瓜の馬車を作って美しい白馬を用意して、制限を設けて自立を促す大人の女性だと。
いや、幼い頃の自分はそこまで考えてはいなかったと思うけれど、齢16となった自分の思考回路では、魔法使いはそんな女性に映っている。
つまるところ、月花は童話に憧れるありふれた少女だったのだ。
白馬の王子様、豪華な舞踏会、万能の魔法、正義の味方、使いきれない量の金、笑って暮らせる平穏な日々、仲間とともに駆け抜ける冒険の数々。
そんなファンタジー染みた物に取り憑かれた、ありふれた少女の一人だったのだ。
ジゼルは夢にまで見た魔法を、自分の手から放たれていることに感慨を覚え、つい昔からの夢を思い耽ってしまう。
そんなジゼルに相方の少女から怒声が浴びせられる。
「ぼーっとしてないでジゼル! もう一体来るよ!」
「――え、あ、りょーかい!」
水瓶迷宮のボスが落としたドロップアイテムの鍵のような杖『宝瓶主の魔錠』を持つ手に力を込めて、自分の使える火球の魔法を放った――!
「【ファイアボール】!」




