59.日本語の方言に残る中国語
みなさんの地元では、二個ずつ数を数える時にどんなふうに数えるでしょうか。取り立てて特筆すべきものなどないように見えるこの数の数え方ですが、実は地方によって、少しずつ違いがあることをご存知でしたか。
ざっと調べてみたところ、日本の東西においておおむね二つに分けられているようです。
ひとつは、「二、四、六、八、十」。そしてもうひとつが、「二、四、六、八、十」です。(十ではなく、十と数える地域もあるようですが、ここでは話を簡略化するために省きます)
ところが、私の地元を含め、日本のいくつかの地域ではこれとは異なる数え方をします。「二、四、六、八」と数えるのです。(しかも十ではなく、十と数えています)
私は田舎の出身なので自分が話す言葉は方言だとよくよくわかっていたのですが(料理の名前やちょっとした動作がいちいち標準語とは異なります)、まさか数の数え方まで全国的なものと異なるとはまったく予想もしておらず、これを知った時は相当動揺したものです。しかもそれを知ったのは大人になってから(笑)
国語の教科書でも数の数え方は習ったはずなのですが、この違いについては何も記憶に残っておりません。先生をはじめとして、誰も違和感に気がついていなかったのかもしれません。
この数え方には諸説ありまして、一説には福建省訛りの中国語、閩南語の影響があるのではないかとも言われています。日本の漢字発音の漢音は唐時代に伝来されており、閩南語との発音の類似が見られるそうです。(歴史や中国語を勉強している方の間では当然のお話のようですが、不勉強な私は大人になるまで知らなかったです!)
福建省で使われている閩南語は、普通話とは大きく異なっています。ここでは、「六」は「lio̍k」、「八」は「pat」と数えるのです。最後の子音は日本語では表すことができないのですが、リュックの「ッ(クは発音しない)」、「パット」の「ッ(トは発音しない)」感じでしょうか(ちなみに普通語なら、「六」は「リウ」、「八」は「バー」です)
私は「二、四、六、八」と数えているのですが、どうも県外の方には「二、四、六、八」と聞こえるようなのです。(長音が他の地域の方に比べて短く発音する地域のようで、長音ではなく促音に間違われることが度々あります)
ちなみに、閩南語で一から十までを挙げてみると、こんな風になります。一、ニ、三、四、五、六、七、八、九、十。声調抜きの文字表記ですが、どうですか?(閩南語には白話音と文読音があり、「文白異読」といわれています。数の数え方も2種類あるのですが、より日本語の音に近い方を記載してみました)
思ったよりも日本語に近い音でびっくりしてしまいますよね。(ちなみに普通話ですと、イー、アル、サン、スー、ウー、リゥ、チー、バー、ジゥ、シーとなります)そういえば、私の友人(中国語ぺらぺらの日本人)が、失われた音が方言に!と感激していたことが懐かしいです(しかし、当時の私は自分の数の数え方が方言だった方が衝撃が大きかった……)
とはいえ中国では福建省付近の方しか使わない声調、子音が、日本語や各地の方言として残っているのだと思うと、なんだか歴史的なロマンを感じてしまいますね。当たり前に使っているその言葉、もしかしたら中国語由来の方言かもしれませんよ。
というわけで、今日は日本語の方言に残る中国語のお話でした。




