02
「げ・・・明日も体育あるじゃん」
ホームルーム後、私は予定黒板を見て、ひとり憂鬱になった。
中二なったばっかりなのに、何で春先から体育ばっかり・・・。
はぁ、と息をついてから、予定をメモする。
「佑ー、帰ろ!」
「あ、睦子まって!」
私は顔に日焼け止めクリームを塗りたくり、捲し上げていた袖を元に戻し、彼女の後を追いかけた。
「明日も体育あるじゃん」
「ほんと、先生仕組んでるよね」
日傘を差して、馬鹿みたいな会話と共に、歩く。
山崎睦子は、私の一番仲のいい友達だ。
1年のときに、同じクラスになり、病気のことを何も気にせず接してくれた。
他にも中のいい子はいたけれど、2年にあがって、みんなクラスが離れてしまって、睦子だけが同じクラスになったってワケ。
「そういえば、睦子この間の記録会どうだったの?」
「ん?ぎりぎり3位」
「さっすがぁ・・・」
ちなみに、睦子は陸上部で、長距離走のエース。
部活が休みの日しか、一緒に帰られないし、私はめったに大会の応援に行けないけれど、時々一緒にいられるだけでもうれしい、そんな存在だ。
「あーあ・・・」
私は本を読みながら、またため息をついた。
調度、陰になった窓際の席からグラウンドを見下ろす。
今日は、短距離走を走っているらしい。
照りつける太陽の下、笛の音と、先生の大きな声、それに、勢いよく走っていく生徒の姿。
どれもこれもがうらやましくて、私は下唇をかみ締めた。
「いいな・・・」
思わず口走って、口をつぐむ。
そんなふうに思ったら、埒が明かない。
はぁ、とため息をついて、自分の席に戻った。
「あら?江桜、何でここにいんの?」
その時、最近聞きなれた声が、耳に届く。
私は、瞬時に振り向いて、露骨にいやそうな顔をした。
「私が体育でられないの知ってるくせに・・・」
「あぁ、そうだった、わりぃ」
「宇山だって、何でここにいるわけ?」
「筆記用具って言われてたのに、忘れてたんだよな」
「馬鹿じゃん」
「うるせぇ」
もう一人、私の病気のことを何も気にせずに話しかけてくれる人がいる。
それが、彼。
春先だというのに、もう徐々に日焼けしつつある、太陽がよく似合う少年、宇山央だ。
宇山は、2年生の始業式に知り合った。
出席番号が、「宇山」「江桜」で続いていた為、席が後ろ前だったのだ。
「宇山央です。ヒロって呼ばれてます。部活は、陸上です!
ちなみ、色が黒いのは、親父譲りっす。よろしくお願いしますー」
確かに、始業式の日から、色黒かったっけな。
一番最初に話しかけてきた男子も、あいつだった。
仲のよかった子が、ほとんど違うクラスになってしまい、みんな、病気のことばかり気にして、まるで、腫れ物に触るかのようだったから。
遷るんじゃないか、なんて噂まで広まったらしいし。
そんな中で、あいつだけが、話しかけてきた。
「あんた、真っ白だなー」
「え?」
「ちょ、待てよ・・・これで後ろ前一ヶ月かよ・・・。
俺の色黒、超目立つじゃねぇか!ショック・・・」
一変に、教室の空気が変わった。
誰も、ためらいもなく、私に話しかけてくるようになったし、変な目で見られることもなくなった。
そういうところでは、ちょびっと、感謝してる。
・・・ちょびっと、ね。




