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夢中にさせちゃいました!



天界から下界に降りたカスピエルは紫苑の家に向かおうとしていた 商店街を歩いている


「早く紫苑君に会って無事か確かめないと...! もしかしたら紫苑君の所に天使が行っているかもしれません。 そうでなくとも、別次元の紫苑君が蒲公英ちゃんの後を追ったように自らの命を絶っていないとも限りません...とにかく紫苑君に...!」


「カスピエル様!」


「!?」


カスピエルは後ろから声をかけられたので振り向いた


そこにはつい先程、天界にて戦ったアルミサエルが居た


「私もお供させて下さい!」


「・・・・・・本当にあなたは運が悪いですね...。 なんというか...タイミングが悪いとでも言うんでしょうか?」


「?  いったい何のことでしょうか?」


「くだらない猿真似はやめろと言っているんですよ。 オルニアス!」


「・・・・・・どうしてお前には俺の変身が効かないんだ?」


「アルミサエルは今眠っています。 数時間は起きてこれないはずです。 だとしたら以前、アルミサエルに変身していたお前しか居ないということになるでしょう?」


「成る程な。 ん? お前何か変じゃないか?」


「変?」


「その...以前とは口調が違うというか雰囲気が違うというか...。」


「そんな風に言われる程関わった覚えはありませんが。」


「そうだな。 取り敢えずお前には死んでもらおう...。 この前みたいに記憶を消して放置はしない。 お前は記憶を取り戻すというイレギュラーだからなぁ...今回は消させてもらう。」


「それが狭山強の判断ですか? 滑稽ですね。 私が狭山強の立場なら、最初の時に始末していますよ。」


「怖いねぇ...お前は本当に天使なのか? 不思議に思うぜ。」


「天使にだってこういうのも居るんですよ。 まぁ私はもう天使じゃなくなるでしょうけど...お前には関係ない。」


「・・・反逆でもしたか。 ならお前もこちら側に来い。 歓迎するぞ?」


「関係ないと言ったはずだ。 それにもう私は誰の下にもつかない。」


カスピエルは天使の翼を大きく開く 翼の羽がカスピエルの周りを舞う


「さぁ、戦うなら相手をしてあげます。 時間が惜しい! 来なさい!!」


「ふむ...勧誘は無駄に終わったか...。 ならば当初の予定通り倒させてもらうぞ!!」


オルニアスは両手を目の前で合わせて離す すると緑色の球体が真ん中に出てきて、緑色の炎がカスピエルに放射状に放たれた


「これはアモンの...!」


「炎が使える悪魔がアモンだけだと思うなよ! 俺が何故変身能力ばかり使うの教えてやろう! 変身能力を使って騙し討ちをした方が早く終わるし、圧倒的に楽だからだ!! だがカスピエル! お前には変身能力が効かないからこうやって本気で戦ってやっているんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


放射状の緑色の炎は確かにカスピエルに向かって放たれているが、それがカスピエルに届くことはなかった


何故なら舞っている羽が回転して炎を止めていたからだ


「な、なんだと!? そんな馬鹿な!!」


「そんなに驚く事ですか? お前達悪魔だって色々な能力があるだろうに。 自分達の力が止められたり無効にされたり想定外の力を目の当たりにしただけで驚くなんて間抜けじゃないか?」


「・・・・・・ククク...! 確かにな...貴様の言う通りだ...! だからお前も驚いてはいけない...!」


「?」


カスピエルの背後にアルミサエルの姿をしたオルニアスが居たのだ カスピエルと対面して話しているオルニアスとは別にだ


「分身...。」


「そうだ! 俺は変身能力を持っているが故に自分の体を自由自在に分けて移動させることが出来るのさ! そしてお前は俺との会話で気付けなかった!! さぁ! まずは一撃喰らってもらうぞ!!」


分身のオルニアスがカスピエルに放射状の炎を浴びせる


「無駄だ。」


回転する羽がその炎さえも防いだ


「まだだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


対面しているオルニアスとカスピエルの背後で炎を放っているオルニアスがカスピエルに右手を伸ばしながら同時に向かう


「直接攻撃なら羽で防げまい!!」


「その考えは危険過ぎる。」


回転していた羽が回転をやめて両方のオルニアスに向かって飛んだ 羽は両方のオルニアスの右手に突き刺さった


「これぐらぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


それでも右手を伸ばす カスピエルの翼はカスピエルを包む様に閉じた


「なにぃ!?」


カスピエルは青白い透明な球体に包まれる


オルニアスの右手が突き刺さるがカスピエルの翼にすら届かない 続いて炎を左手から放って挟み撃ちの形にしたがそれでも球体に阻まれる


「リフレクト」


カスピエルがそう呟いた瞬間、球体は青から赤へと変わって強く光り出した


そして、オルニアスは吹き飛ばされた


商店街に居る人間達は慌てて逃げ出していた それが救いだったかもしれない 犠牲者は出なかったのだから


「愚かな...まあ仕返しは出来たんでよしとしますか...。」


カスピエルがその場を離れようとした時、オルニアスの両手が合わさって槍となった その槍が静かにカスピエルの背中へと向かった


「危ない!!」


「!?」


カスピエルは慌てて振り返った それと同時に押し倒された


「あなたは...! あの時の...!」


カスピエルを押し倒したのは以前、カスピエルが情報収集の為に運命の書で自分の事を友達と思わせた女子高生だった


女子高生は背中からお腹をオルニアスの槍で貫かれていた 口から血が出る


「ど、どうしてっ!?」


「・・・だっ...て...エルちゃんは...親...友...だ...から...!」


女子高生は息絶えた


「そんな...! ごめんなさい! ごめんなさぁい...! 私っ...あなたの名前だって...! 知らないのに...! 私なんかの...っ...!」


カスピエルは泣きながら謝る


「ちっ...人間如きがよくも邪魔を...してくれたな...!」


オルニアスの言葉を聞いたカスピエルの眼が怒りに満ちる


「・・・・・・れ...!」


「不意打ちも失敗したし...今の内に逃げ...」


「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


カスピエルの翼から羽がオルニアスに繰り出される それは猛吹雪の様だった


「!?」


負傷しているオルニアスはかわすことが出来ず、全弾当たってしまう


「うがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


そして、カスピエルはオルニアスの上空に飛んでおり、運命の剣を構えながら急降下する


運命の剣がオルニアスに突き刺さった


「お前に破滅の運命を決定付けたっ!! 逃れる術はないぞっ!! オルニアス!!!!」


オルニアスの体は灰となって消えた


カスピエルは女子高生に近付く 左手で女子高生の額に触れた 金色の文字が浮かび上がる


『楽園では幸せになる』


「運命の書の効力が楽園後にまであるかは分かりませんが...どうか...。」


カスピエルはその場を後にした

























カスピエルは紫苑の家に着いた カスピエルはインターホンを鳴らす


しかし、紫苑は家から出てこない


「・・・大丈夫ですよね? 紫苑君...。」


カスピエルは玄関のドアを開けた そして中に入り、蒲公英の部屋に行く


ドアを開けると以前、カスピエルが訪れた時と同じく紫苑が部屋に居た


「紫苑君...。」


カスピエルが紫苑の名前を呼ぶと紫苑が反応した


なんと紫苑が顔を上げてカスピエルの方を向いたのだ


その瞳はかすかに光が映っているかの様だった


「・・・エルさん...いらっしゃい...。」


「紫苑君、蒲公英ちゃんとまた過ごすことが出来るとしたら望みますか?」


「そんなことできるわけないですよ...人は死んだら生き返らないんだから...。」


「そうですね。 ですがやり直すことは出来ます。 そして死を防ぐことも。」


「エルさん...? いったい何を言っているんですか?」


「紫苑君。 私、本当は天使なんです。」


「天使?」


「はい。 紫苑君達の居るこの世界の上にある世界で過ごしています。」


「・・・。」


「信じてもらえませんよね...。」


「信じますよ。 エルさんのことは信じています。」


「ありがとう。 それでね、紫苑君達の記憶は消えるけど蒲公英ちゃんとまた過ごせるよ。」


「どうすればいいんですか?」


「紫苑君は私を信じて待ってくれればそれでいいです。」


「・・・分かりました。 エルさんを信じて待ってます。」


「ありがとう紫苑君。」


カスピエルはこの時覚悟を決めた


紫苑君は私との記憶を失ってしまうけれど...紫苑君が蒲公英ちゃんと兄妹でまた幸せに暮らせるならそっちの方がいい そう決めたんです 紫苑君に甘えたらこの決心さえ揺らいでしまいそうです


だから今から楽園にしましょう


カスピエルは紫苑の家から出た


「そこまでだカスピエル。」


「!?」


紫苑の家の玄関から出た時に声をかけられた 声の主は熾天使・ミカエルだった


「どうしてここに!?」


「部下がお前を目撃したんだ。 それよりどういうことだ? カスピエル、説明してもらおうか。」


「・・・私は自分が正しいと思ったことをするつもりです。」


「神様の命令に背いているんだぞ?」


「それでもです。 私は間違っていません。」


「天使にも反抗期があるものなのか...? 馬鹿な事を言ってないで天界に戻るぞ。」


「私は本気ですよ? ミカエル様。」


「ならばどうする気だ? まさか私と戦う気か?」


「それしかないのなら。」


ミカエルは目を閉じ考える そして目を開いた


「・・・ならば俺は容赦はしないぞ!!」


ミカエルがカスピエルに超スピードで殴りかかる 殴ろうとしている右の拳は赤くなっている


それに対しカスピエルは羽を猛吹雪の如くミカエルに向けて放つ


羽は拳に当たって焼かれていく


「!?」


ミカエルの拳がカスピエルの左脇腹に命中する 焼ける様な痛みと熱がカスピエルを襲う


「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


そしてミカエルはそのまま体を半時計周りに回転させ、左足でカスピエルを蹴り飛ばす


「ぐぇ...!」


カスピエルは壁まで飛ばされ、背中を強打した


壁にもたれかかって座っているカスピエルにミカエルが歩いて近付く


「なぁ、もういいだろ? カスピエルよぉ。 お前の行いは断罪されるべきことだが私から神様に言って軽くしてやる。 それくらいな...」


カスピエルはこの瞬間、運命の剣をミカエルに向かって投げた


「な!?」


ミカエルは体を横に反(そ)らして間一髪かわした


カスピエルの金色の眼はまだ諦めてはいなかった


「ならば再起不能にして連れて帰ってやる!!」


ミカエルは再びカスピエルに向かって殴りかかる カスピエルは羽を自分の前で回転させた


「そんなもので防げるものかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


ミカエルの拳がお腹を貫いた 血が大量に溢れ出す









紫苑がカスピエルを守ったのだ


「紫苑君っ!!!!」


「? カスピエルの知り合いの人間か。 気の毒に...。」


「どうして!? 紫苑君!!」


カスピエルが紫苑の体を抱きかかえる


「・・・エルさんに...生きてて...ほ...しいか...」


カスピエルは涙を流す


「紫苑君っ!! あなたが居ない世界なんて私は生きたくないですっ...!!」


「・・・だ、いじょ...うぶ......しんじ...てる...から...また...あいま...しょ...う」


「はい! 約束ですっ...! 必ず会いに...行きます...!」


カスピエルは紫苑にキスをした 金色の文字が小さく浮かび上がる


『楽園では妹と幸せに暮らす』


カスピエルは唇をゆっくり離して小さく呟いた


「さよなら...紫苑君...。」


「カスピエル。 これで分かっただろ? 天使である私達が人間と深く関わってはいけないと。 ましてや恋人関係など...俺は短期間とはいえお前の師匠でもある。 アザゼルの二の舞にはしたくない。 さぁ、帰るぞ。」


カスピエルは紫苑を寝かせ、うつむいたまま立ち上がる


「カスピエル...今は辛いかもしれんが俺達は永い時を生きるのだ。 悲しむのは今だけにしておけよ。」


「・・・・・・悲しむ必要はもうありませんよ。」


「?」


「だって」


「?」


カスピエルは顔を上げた


「世界は再編成されるから!!」


カスピエルの金色の眼が銀色に変わっていた


「!! お前...その眼は...!!」


「・・・やはりご存知でしたか。 そう、次元の天眼です。」


「禁忌の本を読んだのか...!?」


「楽園に行くしか方法はないんです。 別次元の私に 『運命の書』 で書いてもらったんです。 『自分に運命の書の効力が発揮される』 と」


『・・・その前に私のお願いも聞いてもらえますか?』


『何かしら?』


『私にあなたの運命の書で自分自身に運命の書が使えるようにして欲しいんです。』


『・・・分かったわ。 頑張ってね...別次元の私。』


『ええ。 ありがとう...別次元の私。』


「このっ...愚か者がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


ミカエルがカスピエルに超スピードで殴りかかる


しかし、カスピエルの身を包む青白い透明な球体は無傷だ


「何故だ!? 俺の拳で壊せないものなど...!」


「『運命の翼・守護の陣』は私が攻撃を行えない代わりにあらゆる攻撃から守り抜く完全な防御形態...。 たとえ熾天使の力でも例外はない!!」


「!?」


「そして!! 次元の天眼による時の加速は攻撃ではない!! もう誰にも楽園は止められない!! 神でさえも!!」


「神様さえ侮辱するのか!!」


「事実を言ったまでです。」


「貴様ぁ!!」


時の加速は段々と早まる


街にある建物や家は風化していく 木々は枯れていき、やがて空間が所々ひび割れる


そしてカスピエルとミカエルは強い頭痛を起こして気絶した






































カスピエルは天界にある牢獄へと入れられていた


世界の再編成は完了した 楽園にすることは出来た


出来たはずなのに...!


紫苑君と蒲公英ちゃんがちゃんと存在するのか知りたい... ただそれだけが私の今の望みです


金髪の長い髪の男の天使がカスピエルの牢屋の前へと来た


「・・・あなたは熾天使の階級まであと少しと聞きました。 なのに何故あんなことをされたのですか?」


「・・・・・・聞きたいですか?」


「まぁ...興味はありますね。」


カスピエルは少し考えた後、笑って自分の翼を前に少し引っ張る 翼から金色の文字が浮かび上がる


『記憶を映像で映す』


翼はカスピエルがウリエルの膝の上で寝ている映像を映し出した


「愛称あいしょうは『カスピ―』 『カスカス』 『ピエル』 色々と呼ばれてきましたけど・・・やっぱり私的には~『エル』が良いかなって思います! 呼んでくださる方も呼びやすい方ほうが良いですもんね!ね!ね!?


いやまぁ~ぁ?欲を言っちゃえば『エル』から更に派生させちゃって『エルちゃん』って呼んで欲しいんですけどね!


まぁそんな話はさておき、私、恋しちゃったんですぅ!もー!恥ずかしいー!でもでもでも~やっぱり女の子だから恋くらいしちゃいますよね!?当然のことですよぉ!そこに天使も人間も関係ありません!


でも、他の方々からすると・・・やっぱりよくないらしくてぇ・・・これって不公平じゃないですかぁ・・・?


そこで!あなたに私の恋物語を観て頂いて判断していただきたいんです! あっ!私の恋物語をあなたに観ていただくってことは・・・あんな恥ずかしいことも観られちゃったりするってことですよね・・・?


・・・・・・いえ!やはりお願いします!そういうのも含めて判断していただきたいです!というかもう開き直っちゃいます!さあ!私の恋物語を存分に楽しんじゃってください!」


























そしてカスピエルと金髪天使はカスピエルのこれまでを観終わった


「・・・どうでしたか?」


「・・・非常に愚かだと思います。」


「ははは...これは手厳しいですね...。」


「ですが...。」


「?」


「個人的には...私も同じ状況だったなら同じ過ちをしていたと思います。」


「優しいんですね...。」


「・・・・・・。」


「あなたのお名前をお聞きしてもいいですか?」


「・・・サリエルです。」


「ありがとう、サリエル。」


「あなたの審判は明日に決まりました。 明日また私が伺います。」


「はい。 ゆっくり休んでくださいね。
































審判の日が訪れた


サリエルがカスピエルの牢屋を訪れた そして、カスピエルの牢屋の鍵を開けた


「時間です。 カスピエル様。」


「・・・反逆をした天使に対して様付けはしない方がいいですよ。」


「いえ...。 カスピエル様は私の姉弟子ですので、私は敬意を払っているだけです。」


カスピエルはかつてウリエルと話をしていたウリエルの新しい弟子の後ろ姿を思い出した


「・・・成る程...そういうことだったんですね...。 あなたが...そうだったんですね...。」


「?」


「いえ、こちらの話です。 気にしないで下さい。」


「カスピエル様、こちらです。」


サリエルが案内しようとした しかし、カスピエルは首を横に振った


「大丈夫ですよ。 私1人で行きます。 安心してください、逃げようなんて思いませんから。」


「・・・分かりました。」


カスピエルが歩き出す


「・・・あ、そうだ。」


カスピエルは振り返り、サリエルを見た


「?」


「サリエル。 あなたがもし今の天界や神に疑問や不信感を抱くのなら、その時は天界の書庫にある本を読みなさい。 まぁ推奨はしませんが...。」


「推奨しない? それは何故ですか?」


「その本を読んで行動した私が今こうなっているんですから。 それでも構わないならしなさい。」


「はい...。」


「後...あなたの師匠に 『ごめんなさい』 とだけ伝えてくれますか...?」


「・・・分かりました...。」


カスピエルは微笑んで続ける


「弟弟子が出来て私は嬉しいです...ありがとう。」


カスピエルは前へ進んだ


そして神の居る部屋の前まで来て、ドアを開けた


部屋の中は一面真っ白な空間だった そしてそこには神だけが待っていた


「・・・よく来たな、カスピエル。」


「・・・あなたが神様ですか?」


「ああ、そうだ。」


「それで私はどう裁かれるのですか?」


「それは後で言う。 それより少し話をしないか? ほれ、外してやろう。」


神が右手の人差し指でカスピエルの手錠を指差した すると、手錠が光って消えた


「!?」


カスピエルは手錠がされていた自分の両手を見て驚く


「・・・さすが神様ですね...全知全能だからこれ位出来るってことですか? 悪魔達が攻め込んで来た時は戦いの場所にすら来なかったのに。」


「私は全知全能ではない。」


「神様なのにですかぁ?」


「神にも色々居るのだ。」


「神様が複数存在すると?」


「そうだ。 そして悪魔達が攻め込んで来た時はすまなかった。 私には戦う力などもうないのだ...私は力を天使達に与えることしか出来ない。 そんな神だよ。」


「では他の神様はいったいどこに居るんですか?」


「カスピエル...察しがついているんじゃないのか?」


「私が?」


「他の神は別次元の世界に居る。 この次元の神はもう私しか居ないのだ。」


「・・・・・・。」


「悪魔達を封印する為に犠牲になったのだ。 お前の母親も悪魔の力によって亡くなった。」


「!? ちょっと待ってください!! 私に親が居る!? 私は天使ですよ!? そんなことがあるわけない!!」


「そういう風に記憶を書き換えたのだ。 運命の書でな。」


「いったい何の為に!?」


「お前を悲しませない為だ。 自分達の子供に悲しい思いをさせたくないというのは誰だってそうだろう...私もフォルトゥナもそう考えたから娘のお前の記憶を書き換えた。」


「悲しい思いをさせない為...? だったら運命の書で私の感情を失くせばよかったじゃないですか!!」


カスピエルは涙を溢れさせながら訴える


「感情なんて...! こんなものがなければっ...こんなに苦しまずに済んだのに...!!」


カスピエルの脳裏に紫苑と過ごした日々が浮かび上がる


「・・・・・・いっそのこと...出会わなければよかったんだっ...。」


「・・・カスピエル。 心にも思ってないことを言うもんじゃないぞ。 ・・・私はお前のこれまでを全て観ていた。」


「全て観ていた...? だったらなんで今更なのですか? だってずっと観ていたんですよね? もっと前に止めるなり断罪するなり出来たはずです!! 何故そうしなかったのですか!?」


「フォルトゥナと約束したのだ...どんな結末に向かおうとカスピエルの思うままにさせようと。 やがては女神になる為に強く優しく育つことを祈って...そして困難を切り開く為にフォルトゥナの力も与えた。」


「力...? ・・・!!」


「そう。 お前に与えた天罰の 『運命の書』 『運命の剣』 『運命の翼』 は 『運命の女神・フォルトゥナ』 の力だ。」


「・・・・・・。」


「いつかは変わってくれると...考えを改めてくれると祈っていたんだ...。 しかし...まさか禁忌の本の楽園を実行するとは...本当にすまなかった...。」


「謝るならせめて私の望みを叶えて下さい。 紫苑君と蒲公英ちゃんはどうなりましたか?」


「勿論存在する。 再編成された世界でだがな。 妹も原因不明の不治の病になることもないだろう。」


「そうですか。 ならもう安心です。」


カスピエルの眼が強く決意を示した


「後はあなたを倒して私が神になります!! 『運命の剣』 !!」


しかし運命の剣は出現しない


「な、なんで!? 『運命の翼』 !!」


翼も反応しない


「無駄だ。 お前にはもう天罰を使うことは出来ない。 既に力は返してもらった...手錠を消した時と同時にな。」


「・・・っ!」


「カスピエル。 いくらお前が神と女神の子供でも決まりは決まりだ...例外はない。」


「いいでしょう。 おとなしく罰を受けます。」


神は左手をカスピエルの頭の上に置いた


「・・・さらばだ。 私達の可愛い娘よ...頑張るのだぞ。」


カスピエルは金色の光に包まれて消えた























ガブリエルとラファエルがミカエルに話しかけた


「そういえばミカエル。 断罪の間に来るようおっしゃられていたぞ。」


「私がか?」


「ええ。 恐らく今回の件でカスピエルを連れ帰ったあなたに話があるのでしょう。」


「そうか。 すぐに行く。」


ミカエルはその場を後にした


「・・・行ったな。」


「ええ。 行かれましたね。」


「本当にこれで良かったんだろうか?」


「恐らく駄目でしょうね。 これは私と彼女の私怨ですから。」


「ラファエルも関係あるのか?」


「あの子は私の姉...フォルトゥナ姉さんの子供ですから...いくら罪を犯したとはいえ...。」


ラファエルは涙を流した


「すまない。」
















ミカエルは断罪の間にたどり着いた ドアを開けて部屋に入る


そこにはウリエルが立っていた


「ウリエル? お前が何故断罪の間に居る?」


「・・・断罪する為よ。」


「断罪? しかし今日は予定など無かったはずだが?」


ミカエルは歩いてウリエルに近付く


「それに俺は神様に呼ばれたから確かなはずだ。 日を間違えてないか?」


「別に間違えていないし、神様もここには来ないわ。」


「? それはいったいどういう・・・」


その瞬間、ミカエルの右腕が斬り落とされた ウリエルの剣によって


「ぐわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


ウリエルの瞳は怒りの炎を宿している


「な、な、なにをするんだああ貴様っ...はぁ...!!」


「あんたをここに呼んだのは神様ではなく私。 よくも私のかわいいかわいい弟子を神様に差し出したわね。」


「あいつは! 禁忌を犯したんだぞ!? 当然だろうがああ!!」


「確かにエルちゃんは禁忌を犯したわ。 でもその元凶を作ったのはミカエル、あんたよ。」


「何を・・・」


「調査の結果あんたが狭山強に悪魔の封印の解き方と契約の仕方を教えたと判明した。」


「!?」


「どうせルシファーを復活させて神様と私達天使を消して自分が神になるつもりだったんでしょう?」


「俺がそんなことを考えるわけないだろう!!」


「心を読める熾天使を忘れてないかしら?」


「!? ラファエルかっ...!!」


「もうその反応で確定ね。 ラファエルが私達天使の心を読まないとでも思ったの? ラファエルは誰よりも用心深い天使よ。 定期的に私達の心を読んでいたわ。」


「くそがああああ!!」


ウリエルは指を鳴らして光の槍を無数に放ってミカエルを串刺しにした


そして業火でミカエルを断罪した


「・・・謝るのは私の方よ...エルちゃん...ごめんなさい...!」


ウリエルは涙を流しながら呟いた
















































目が覚めるとカスピエルは空を見た 雲ひとつないきれいな青空だ


カスピエルは草原に寝転んでいた


「ここは? 私は確か罰を受けたはずじゃ...?」


「あのー大丈夫ですか?」


カスピエルは右に向く そこにはカスピエルをオルニアスから守った女子高生が居た


「あ、あなた...は!」


「え?」


「・・・い、いえ...大丈夫です...すみません。」


「いえ、大丈夫ならよかったです。 それじゃあ私はこれで。」


女子高生は去って行った


「・・・よかった。 ・・・あれ?」


カスピエルは草原を少し離れた すると商店街が見えた


「まさかここは...! あの子が女子高生なら...そして辺りを見る限り今は下校の時間...。」


カスピエルは走り出した


途中何度も態勢を崩しかけたり、転びそうになったが必死に走り続けた






















そして高校にたどり着いた


「はぁ...はぁ...!」


校内から帰る高校生達の中を目で見て捜す


「・・・・・・・・・!!」


カスピエルは1人で歩く紫苑を見つけた


カスピエルは歩いて紫苑に近付く 紫苑は自分に近付いてくるカスピエルを見た


『世界を一度再編成すれば下界の者達に再編成前の記憶は原則としてない。』


「・・・ぃっ! ぉ...。」


カスピエルは紫苑の名前を呼ぼうとしたが声が上手く発せれない 体が震える


カスピエルと紫苑は歩きを止めてお互い近くの距離で見つめ合っていた


「えと...。」


紫苑が困惑した


カスピエルは紫苑の名前を呼ぼうと再び考えたが堪えた


「・・・すみません...知り合いかと...思ったんですが...人違い...でした...。」


カスピエルは泣くのを堪えてそう言った


「すみません...さようなら...幸せに...なって下さいね...。」


カスピエルは紫苑に背を向けて去ろうとした


「待って!!」


紫苑がカスピエルの左腕を右手で掴んだ


カスピエルは驚き振り向く


「!?」


「約束...果たしに来てくれたんですね...エルさん。」


「!!」


『楽園では妹と幸せに暮らす』


「紫苑君!!!!」


カスピエルは泣いて紫苑に抱き着いた 紫苑も泣いて抱きとめた



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