57 茜視点13
おまたせしました。
いつも評価やブクマ等ありがとうございます。
他の街へ行こうというミオンを取り敢えず宥める。
「流石に無理があると思うな〜?次の街への道はワイバーンで塞がれてるみたいだし」
「なら倒せばいいわ」
「えぇ…」
決意は固そうだね...。でも、ミオンも自分の能力を評価される事に慣れるべきじゃないかな?
相談している私達にギガさんが声を掛けてくる。
「何でそんなに逃げたがるんだ?堂々としてりゃあいいじゃねぇか。オメェはこの街の英雄様なんだからよ、誰も悪いようにはしねぇって」
そうなんだよねー。悪い事したならともかく、寧ろ良い事をしたんだからギガさんの言う通りもっと堂々としてればいいんだよ!
ミオンが一瞬渋い顔をして答える。
「極めて人間的な感情故よ」
「褒められ慣れてないから恥ずかしいんだよね〜?」
恥ずかしがるミオンは可愛いから、もうちょっと見たいという邪な思いがある事も否めない...。
「そうとも言うわ」
「なんだ〜?オメェにもちったぁ可愛らしいところがあんだな!ガッハッハッハ」
その煽りはダメだよギガさん...。ミオンの目が冷たい光を宿してるよ!
「おっと、冗談冗談!師弟ジョークって奴だ!」
睨みをやめないミオン。...ホントに斬ったりしないよね?
一触即発の雰囲気...宥めようとした時、丁度良くドアが開く。入ってきたのはこのお店の店主であるパーリットさんだった。
どうやら、ミオンはこのお店に剣を卸していて、その売り上げの一部を貰う約束をしていたらしい。斜め後ろから見た感じ10万ルピスくらいあったように見えた。確かに性能は凄まじかったけど、一体どの位で売れたんだろ...。
どうやら15万ルピスで売れたらしい。他の剣の5倍位の値段だったよ...これだけの価値の物をポンポン作っておいて本人に凄い事をしてるっていう自覚が薄いんだから困りものだね。
話が進み、上手いこと口車に乗せられたミオンがほとぼり冷ましに剣を打つというので、私は街の様子を見ることにした。パーリットさん曰く私達...というよりはミオンが探し回られてるらしいし、お忍び有名人みたいだね!
パーリットさんに裏口に案内してもらう。出来る人だね。
隣の建物の壁をスイスイと登って屋上へ。
見つからない位置から北の通りを見てみる。うわー、結構分かりやすいね...。
明らかにプレイヤーであろう人達が住人に対して聞き込みをしている姿が見える。数自体はそんなに多くないかもしれないけど、流動的な通りの流れに対して立ち止まっているからよく目立つんだよね...。
黒ずくめに双剣の妙な人達だったり、白と何かのツートンカラーの装備の女の人達だったり、全体的に装備が揃っているプレイヤーが聞き込みを行なっているようだ。俗に言う攻略組って人達かな?
ん?あれは天翼の人達かな?茶髪ショートカットちゃんと大盾を背負ってる巨体に見覚えがある。先頭に立つ剣士の青年が熱心に聞き込みをしている。うわぁ、相当熱が入ってるね...好きなグループにハードな追っかけやってる人みたい。
聞き込みを終えて青年がこっちに振り返る。一瞬ゾワリとした感覚がして反射的に隠れる。...これはダメだね。ミオンを慣れさせようとか考えてたけど、落ち着くまで街から出た方がいい気がする。アカネちゃんセンサーがヤバいって伝えてきてる。
ミオンが北通りに逃げた事が漏れていただけかもしれないし、他の方角の通りも見に行ってみる。もしかしたら北だけが騒がしいのかもしれないしね!
...結論から言うと余り変わらなかった。どの方角でも数に差はあれど搜索されてるし、門には張り込みをしてるっぽいプレイヤーまで居た。これは想像以上に注目されてるね...。
あの戦闘自体は隠し通せる物でもないし、ミオンの戦闘能力が世間に知れるのは仕方ない。問題はそれに対してどんな反応をされているのかってことなんだけど...。
手っ取り早く調べる為に掲示板を覗いてみる。因みに、ゲーム内からはゲームのホームページと各種スレッド、それに運営が用意した攻略サイトと動画サイトしか見れない。
ざっと見た所、謎の巨乳美人は凄まじいPSの所持者であり、最近現れたトンデモ武器と関係がある可能性も極めて高い。そして、初日に現れた天使に似ている...攻略組に類似する人物はいない為フリーであり、絶対に確保するべし、といった感じだった。
要するに、大体バレてる。しかも、余りにミオンが目立ったから隠れてたけど、私の弓の腕も評価されていて、徐々に私もフォーカスされてきてる。これは疑う余地無く逃走案件だね!パンダの赤ちゃん並みの人気だよ!
見つからないように慎重に屋上を伝ってミオンの元へ帰還する。
「ただいま戻りましたー!いやー、街中でミオンの話がされてるってのは本当だったよ!」
「おかえりなさい。…やっぱり捜しまわられてるのかしら?」
さっきの色々を思い出して微妙な顔になる。
「んー、多分探し回ってるのはプレイヤーだね。掲示板とかもざっと見たけど、どうにもミオンの剣の事がバレかけてるみたい。だから、戦闘力もあって超性能の剣との繋がりもあるミオン逃すわけにはいかん!って感じかな」
「…迷惑な話ね。そっとしておいて欲しいのだけど」
「ちょっと目立ち過ぎたねー…襲い来る火の粉を払うか、火の粉が届かない所まで逃げるかの2択だよ!」
遂1時間半くらい前までは払う派だったんだけど、今は逃げる派のアカネちゃんです!
「次の街に行くしか無いわね」
「やっぱり?ミオンならそういうと思ってたよ」
「…乗り気じゃ無いんじゃなかったの?」
「ちょっとね…天翼の人たちだと思うんだけど、ちょっと鬼気迫ってる感じでさ。普通にキャーキャー言われるならいいんだけどアレはちょっと違う感じがしたんだよね」
あれは軽く恐怖を感じるレベルだよ!
キャーキャー言われたかったのかという視線を感じたので弁明しておく。
「別に私が言われたいんじゃなくてね?キャーキャー言われて恥ずかしがるミオンを見るのが楽しみだったんだけど…」
「アカネってそんなにSっ気あったかしら」
「さっきの赤面してるミオンが可愛すぎたんだよ!」
普段無表情でクールな人が稀に見せる可愛い一面。もっと見たいと思うのは自然な事だよね?
鍛冶場の片付けをして、ミオンが店員さんやパーリットさんとやり取りをしている間に裏口から出て目深のフードがあるローブを買いに行く。まだ私の方が自由に動けるからね。
そそくさと買い物を済ませて外に出る。見つからないように細い路地に入って壁を登り、屋上伝いに帰宅する。気分は犯罪者とか脱獄犯だね!
無事に帰り着き、ミオンと共にパーリットさんに挨拶して裏口を出て人混みに紛れながら北の門を目指す。普通に屋上を伝って行けばいいんじゃないかなって思ったけど、門周辺には建物が無いし、いきなり目深ローブが2人も現れたら怪しい。それよりは最初から風景の一部として抜けようってことかな?幸いパーリットさんお店から門までは近いから何とかなりそうだね。
無事に門を抜ける事に成功した。この後は北の森でステラにプレゼントを渡すらしい...私には無いの⁉︎...とは思わない。いつになるかわからないけど、作ってくれるって言ってたからね!
無事にステラと合流してモニュモニュする。この感触ともしばらくお別れかと思うと名残惜しいなぁ。
ミオンに引き剥がされ、プレゼントの受け渡しが行われる。あのブレスレットは鑑定してないんだけど、表も裏も飾りも光ってるし絶対ヤバい物だよね。
鑑定したであろうステラの顔が微妙に引き攣ってるし、私の予想は間違ってないね!
何だかんだステラには受け取って貰えたみたいで良かった良かった。
ステラと別れてミオンと共にある程度森の中へ向かい、そこからミオンに抱えられて西へ飛ぶ。バレないように低空飛行で飛んでるから、街道からは死角になってて見えない...はず!
何回かミオンに抱えられて飛んで、地に足が着いてない状態にも慣れてきた。最初はすっごい怖かったんだよねー...。
「ようやく飛ぶことにも慣れてきたよー…」
その瞬間、ミオンの目がキラリと光った気がした。うっ、マズったかな...。
そして、徐々に高度を下げていくミオン。このまま行くと森の中を飛ぶことになるけど、流石にそれはしないよね?
私の微かな希望をじわりじわりと裏切っていくミオン。これは...マジの奴ですね。
...覚悟完了。ミオンと訓練を始めてからこういう状況が多いんだよね。覚悟を決める速度は相当上がったよ!
徐々に下がっていく高度...この分ならあと5秒後くらいかな?と思ったその瞬間、いきなり森の中に飛び込んだ。
「え?嘘でしょ?…当たる当たる当たる!今尻尾掠った!絶対掠った!やめて!許して!」
木々の間を高速で縫うように飛ぶミオン。私は余りの恐怖に許しを乞う。何が怖いって自分ではコントロール出来ないところが怖い。しかも、ミオンが私を抱えている以上私が前になる。このエクストリームなジェットコースターの最前列...なんだよぉぉぉおおおおお⁉︎
余りにもダメだった私を見兼ねたミオンは空へ上がってくれた。身体はコントロール出来てると思うんだけど、何か震えている感覚があるんだよね...。
「よくそんなに尻尾を使いこなせるわね。もしかしてリアルでも持ってたりするのかしら?」
「持ってないよ⁉︎…あんまり意識的に動かしてるつもりは無いんだけど、感情に引っ張られてるのかな?」
ミオンに言われて気づいたんだけど、尻尾がミオンをビシバシ叩いてる。そういえば意識的に動かしたことって無いなぁ...。
そんな事を思っていると、不意にミオンに頭を撫でられる。ん?どうしたんだろ。
「悪かったわ。だから尻尾を外してもらえないかしら」
「え⁉︎あ、ごめん…あれ?外れない…」
いつの間にか尻尾がミオンの腰に巻き付いていて離れない。自分のものなのに自分のものじゃないかのように微動だにしない。うーん...参ったなぁ。
手で引っ張ったりして何とか外そうとしていると、でっかい殺気というかヤバイ感じが近づいてきているのを感じた。アカネちゃん史上断トツでビンビンだよ!
少し焦りながら尻尾を外しにかかるも、全く動かない。もー!私の一部でしょ⁉︎何で動かないのー‼︎
そして、尻尾は外れないまま目の前に2本足の真っ赤なドラゴンが現れた。レッドワイバーンというらしい。もしかして、これって相当マズい...?
「ゴアアアアアアア‼︎」
ゲームだけど...ゲームだからこそ誇張されているのかもしれない純粋で巨大な気迫に身体が反応する。思えばガツンと真正面からかち合うのは初めてだね...。
戦慄している私にミオンが声を掛けてくる
「アカネ、背中に回れる?」
「う、うん、ミオンに引っ付いてる分には大丈夫っぽい…」
背中の翼が横にズレてスペースが生まれる。そこに潜り込む私。
「お邪魔しまーす…」
「落ちないようにしっかりしがみつくのよ?」
「了解です…」
また隣に立てなかった事をショックに思いながらミオンの背中に張り付く。
そして、ミオンとワイバーンの戦いが始まった。
あと2話程で本編を再開できると思います。もう少しだけお待ちください。




