56 茜視点12
おまたせしました。
熊退治までとなります。
ミオンの過去話を聞き終えた。
予想以上にハードな人生を送ってきてたんだね...。
「んー...つまり、魅音は強化人間ってこと?」
「強化人間...まぁ、端的に言うとそうね」
正直に言うと、ミオンの能力に関する部分以外の個人的な話も多かった。それを話してくれたっていうことが嬉しいかなー。
顔はキリッと、心は不謹慎ながらニマニマとしつつ強引に話を切り替えてUFOにログインする。とっくにイベント当日になってるし、少し重い空気だしね。
ログインした後、中央広場にあるカフェのような場所で時間を潰す。もうイベント始まってるんじゃないかと思ってたんだけど、まだ始まってないみたいで一安心。訓練は一応イベントを目標にやってきたものだし、お釈迦になったら敵わないよ!
ミオンとイベントについて話していると、突然鐘が鳴り響く。
「東でマッドグリズリーが出たぞぉおおおお!!戦えないヤツは避難しろぉおおおお!!!」
マッドグリズリーっていうのがイベントのモンスターで間違いなさそうだね。
ミオンと共に東へ向かう。特訓の成果を見せるとしますか!
という気合いで望んだものの、まずは様子見という事で後ろからマッドグリズリーとやらを観察する。
見た目はでっかい熊なんだけど、意外と素早くてプレイヤー達が蹴散らされている。
熊の侵攻を止めるために、頭に闇魔法が使われた。あれは...視界を奪うやつかな?
「ミオン、剣通りそう?」
「斬り飛ばすことはできないかもしれないわね」
ミオンでも難しいのかぁ...あの首とか相当太いもんね。
「だったらどこを狙うの?」
「そうね...口の中が有力候補かしら」
口から頭に通すのかな?相変わらず最短で倒そうとするよね。ミオンの戦い方は急所一点狙いが多い。効率はいいんだけど、ゲームっぽさは無いよね。
「取り合えず斬ってみるわ」
そう言ってミオンが出ようとした瞬間に声が上がる。
「天翼だ!」
ん?どこかで聞いたことあるなー...。あっ、思い出した!掲示板で最強PTって言われてたとこだ!
門が閉まってるから上から飛び降りてくる天翼の面々。飛び降りながら魔法?を掛けてるし、前衛の2人もしっかり受け身を取ってるし、ゲームっぽくカッコいいね。
マッドグリズリーに駆け寄って戦闘を始める天翼を眺める私達。
前衛2人と魔法使いの連携で危なげなく戦ってるように見える。初めて上手に戦ってるPTを見たけど、負担の分散が上手くて見てて惚れ惚れしちゃうね。
「あれが天翼かぁ」
「アカネは知っているの?」
「掲示板で出てたんだけど、昔から色んなゲームでトップを走ってる少数精鋭の凄腕チームなんだって」
「そんなのがいるのね」
「で、どうしようミオン。何だか出番無い感じだよ?」
「そんなこと無いわ。直に限界が来るわよ」
「...何で?危なげない感じに見えるよ?」
「あの人たちはね。でも、武器はそうじゃないわ」
...?武器が壊れるって事かな?でも、見た感じ凹んでたりはするけどそんなに消耗してる様には見えないけどなぁ。
マッドグリズリーと天翼が打ち合うこと数分。
その間にミオンと作戦会議をした。ちょっと冗談みたいな作戦になったけど、ミオンなら何とかなるって思えちゃうよね。
ミオンがそろそろと言った瞬間、強烈な攻撃を受け続けていた大盾の人の盾が壊れた。それをカバーした結果、剣士の人の剣も折れてしまった。
「うわ...ホントにミオンの言う通りになったよ」
「アカネ、そろそろ行くわよ。手筈通りにね」
「オッケー!全力で3発。それで仕留めてね!」
「わかってるわ」
私がやるのは所定の位置に矢を射つ事。
その為にポジションを取りに行く。人混みを掻き分けて門の横に行って壁を登る。
ほいっほいっほいっと...。
「え?」
「ん?」
壁の上には1人の女の子?が座っていた。さっきマッドグリズリーに矢を射ってた人だね。
ミオンより少し低いくらいの背丈でクール系の茶髪ショートカットちゃん。スレンダーな感じも相まってパーカーとか似合いそう。
「今何処から登ってきた?」
「壁だよー」
答えながら弓を構える。ミオンは...うわ、人の頭を踏んで走ってる。天翼の大盾の人...ジギルさん?の頭も容赦無しに踏んでったよ...背が高いから最後の1踏みに使われてるし。
茶髪ショートカットちゃんは上から壁を見下ろしている。そんな事してると落ちるぞー。
しっかりと構えて風洞を所定の位置に繋げる。
タイミングを計って、マッドグリズリーの左、右、正面に3連射...圧縮した風を先端に集中させた暴風の矢を放つ。
ミオンが私の矢の軌道上に剣を刺す。柄に当たった矢から起きる風に乗ってマッドグリズリーの両手を斬り飛ばす。自分でやっといて何だけど凄い風だなぁ...それを浴びて身体を制御しきってるミオンは相変わらずだね。
往復した後、自分の剣を踏み台にして背中を下にして後ろに跳ぶミオン。その背中に下から私の起こした暴風が叩きつけられる。別に太ってる訳では無いミオンは軽々と空に打ち上げられた。...よく飛んだなー、15mくらい飛んでるんじゃないかな?
空中で更に剣を上に放り投げて、でっかい敵用に用意した大剣を取り出すミオン。そのまま下に落ちながら振り下ろす!綺麗に首が飛ばされた。振り下ろした姿勢のまま上から降ってくる剣をキャッチして...くぅー、決まった!最高にカッコいいよミオン!惚れ直しちゃったね!
「凄いね...あんな事出来る人がいるんだ」
「でしょー⁉︎」
茶髪ショートカットちゃんも感心している。名前は知らないけどいい子だね!
私をジーっと見つめてるのが少し気になるけど、今はミオンの元へ急ごうかな。
『緊急クエスト:マッドグリズリーの討伐 が達成されました』
『PT名:Two Girls』
『貢献度ランク:1位』
【条件を満たしたので、称号:救街の英雄 を取得しました】
うんうん。大体ミオンのお陰だけど、目標も達成!報酬もゲットだね!
壁を飛び降りてミオンの元へ向かう。
「ミオン凄い!かっこいい!凄い!凄い!!」
「ちょっと落ち着きなさい...」
「だってアレはかっこよすぎるよ!右に左に動いて最後は空中からの流星剣!皆ミオンに夢中だよ!!」
流星剣っていうのは私が適当に付けた名前だけど、意外と的を射ていると思うんだよね!
私がにゃんにゃんしていると、周りの歓声が耳に入ってくる。ミオンは恥ずかしかったのか私を抱えて街に逃げ込んでしまった。
これは...多分持てる技術を総動員してるよ。爆走してるのに殆ど誰にも見られてないんだもん。よっぽど恥ずかしかったんだね...無表情の中に薄っすらと赤みが差しているのをアカネちゃんは見逃さないよ!
恥ずかしがるミオンを見てニマニマしていると、爆走したミオンが辿り着いたのは例の武器屋さん。パーリットさんだっけ?その人がやっているお店だ。
ノンストップで1番奥の鍛冶場まで入ると、ミオンはようやく止まった。珍しく息が乱れてるね。
そんな私達に声を掛けて来たのはこの鍛冶場の本来の主であるギガさん。おつむはちょっとアレだけど、親方肌の良いドワーフだ。
「おっ、街の救世主様じゃねぇか!」
ミオンがギギギっと音を立てそうな動きで振り返る。ヤバっ、笑いそう...堪えるんだ私!Be cool...。
笑いを堪え切った私にギガさんは説明を始めた。どうやら、中央広場の上空にマッドグリズリーと戦うプレイヤー達の様子が生中継されてて、バッチリ私達も映っていたとのこと。
ミオンが私の方を振り返って真剣な顔で見つめてくる。気迫が凄い。な、何かな?笑いそうだったのがバレたかな?
告げられたのは、意外な一言。虚をつかれた私はすっぽ抜けた返事をしてしまった。
「アカネ、次の街に行くわよ」
「えっ?」
最近急に暑くなってきましたね。
皆さんお身体に気を付けてお過ごしください。




