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お待たせしました。
いつも評価やブックマーク等ありがとうございます!
ステータスウィンドウをステラに見せる。
それをジーっと見つめるステラ。無表情だから何を思っているのか想像が付かないわね。
ステラが顔を上げて私を見る。目は真剣そのものだ。
「...この称号はどういうこと?」
これは詰問されているのかしら。
「書いてある通りよ」
「...だからどういうこと?他プレイヤーの称号の説明は読めない」
...それは盲点だったわ。確かに称号の説明には条件が書いてあるし、他の人が読めたら簡単に取れてしまうわね...。
仕方がないので、口で問題の称号達について説明する。
それを聞き終えると、ステラは私の目を覗き込むように見上げて来た。...何だか目が輝いてるように見えるわ。
「...確かにとんでもない。これが知られれば大変なことになる」
やっぱりそうなのね...。
「...だけど、ミオンなら仕方ない」
「どういうことかしら?」
「...あのデカウサギと戦ってる所を見て思った。ミオンは私達とは違う」
そこで言葉を区切り、私に抱き着くステラ。
「...ミオンは私の英雄。それくらいの力があっても不思議じゃない」
...これは聞く相手を間違えたわね。何というか、変なフィルターが掛かっている気がするわ。目がキラッキラだもの。
「...多少フザけたことは謝る。...けれど、私はミオンがどんな力を持っていても関係無い。むしろその称号を手に入れるための努力を尊敬する」
何というか...こういう人もいるのね。てっきり魔法職全員に嫌われると思っていたけれど...賭けには勝てたみたいね。
ステラに嫌われなくて良かったという安堵が広がり、頬が緩む。
「...けど、私以外の魔法職には見せちゃダメ。普通に考えて妬みで殺される」
...賭けには辛うじて勝てたみたいね。
「...それと、この純魔法は教えてもらう」
相変わらず目はキラキラしている。成程、この目の輝きは純魔法に対する興味の輝きだったのね。
...ステラは所謂魔法バカってやつなのかもしれないわ。
「えぇ、いいわよ」
「...それじゃ早速」
ステラに純魔法の説明を行い、練習を見る。2時間ぐらいそうしていると、ステラは無事純魔法を覚えた。
...こっちもこっちで相当な才女っぷりね。よっぽど魔法が好きと見えるわ。
魔法の練習をしているステラはとても楽しそうに見えた。だから、つい聞きたくなった。
「魔術ギルドで魔法研究とかしてみたらどうかしら?天職だと思うのだけど」
行ったことは無いが、アカネとの会話でそういう職があるということは知っている。
すると、ステラはこちらを見て逆に質問をしてきた。
「...ミオンの魔法研究職はどんなイメージ?」
「そうね...机に向かって魔法陣とか論理とかを研究している...現実の理系研究職に近い感じかしら?」
「...王都にはそういう人もいるらしい。でも、ギルドの魔法研究職は脳筋系」
「脳筋系?」
「...実地で戦闘をしながらアイデアを考える。だから研究職は全員ランクB以上の冒険者」
随分とイメージと違うのね。もっとお淑やかというか、インテリなものだとばかり思っていたのだけど...。
「...戦闘に関するアイデアは、戦闘でしか得られない...らしい」
「まぁ、道理と言えば道理ね」
「...ローブの下は皆ムキムキ。物理職より凄い人もいる」
完全にイメージが破壊されたわ。
「私は盛大な勘違いをしていたみたいね...」
「...私も最初はそう感じた。魔法研究について聞いたら、丁度研究者の人が近くに居て『そんな貧弱な身体では務まらんぞ!』って笑い飛ばされた」
よくよく考えてみれば、普通に森や山を歩くだけで体力は持っていかれる。その上で魔力を使って戦闘をしながら試行錯誤をするわけだ。
研究というぐらいだから魔力も大量に消費するだろうし、研究の進み具合によっては機密保持のためにソロで出ることもあるだろう。魔力欠乏状態でも動けたり、ソロ戦闘を成しえるための強靭な身体が必要なのかもしれないわね。...やっぱりよくわからないわ。
無理やり納得しようとしたけれど、やっぱりよくわからなかったわ。今度実際に話を聞いてみましょうか。
未来の予定を追加しつつ、いい時間になったのでアカネの進捗を確認してから兎料理を食べに戻ることにする。
剣を出してアカネの元へ。
「...アカネは何をしてるの?」
「修行よ」
わざと動作の音を消して気配を出し、ゆっくりと構える。そして、突き込む!
アカネは多少の冷や汗を出すものの動く気配は無い。かなりいい感じで習得してきてるわね。
「ふぃ~...当たってて良かった~...」
「もっと確信を持てるまで修行を積むことね」
「うん...ステラ!久しぶりー!」
そう言ってステラに駆け寄り抱きしめて頬ずりするアカネ。よっぽど気に入ったのね。
さっきの突きは、1cm届かない間合いで放った。第六感を中途半端に感じていると、届く距離であると錯覚してしまい、回避行動を取る。それが無かったということは、そこそこ正確に私の位置や間合いを感じ取っていたということだ。
時間としては1日も経っていないのにこの進捗は素晴らしいわね。
そして、2人を両脇に抱えて飛ぶ。初めての試みだったので、どうなるかはわからなかったけど更にスピードが落ちただけで問題無く運ぶことができた。しかも飛行のレベルも2上がった。これで飛行は11レベルだけど、スキルの進化などは見られない。もっとレベルを上げなければいけないのね。
街に戻ったタイミングでゲーム内は午後3時。
2人と共に兎料理を楽しんで、満腹度もMAXまで回復。そこでステラはPTの呼び出しが掛かり、そちらへ向かっていった。
「さて、次はいよいよ実戦ね」
「そういう感じで始められると緊張するなぁ!」
「適度な緊張は必要よ」
「何というか、試験を受ける時みたいな感じ?」
ある程度は緊張していないと、咄嗟の動きは出来ない。そういう意味ではアカネは良い状態ね。
再び北の森へ。
今度はギルドで受けた依頼をこなす兼アカネ実戦編。ということでアカネを先頭に北の森を探索する。
「今回私は緊急時以外手を貸さないわ。自由にやってみなさい」
「まるで何かの教官みたいだね...」
...そういう風に見ていきましょうか。
しばらく歩くと、アカネは立ち止まる。そして、目を閉じて集中し始めた。早速大減点ポイントね。
そして、目を閉じたまま歩き始める。迷いなく歩く先には3匹の狼がいる。これは加点だけど、目を瞑ったままという時点で常に減点されてるわ。
そうやって歩いていくと、狼が80mくらい先に見える場所へ着く。風下から近付いていることは加点ね。
そして、そのまま弓を構えようとするアカネ。これは減点ね。
風魔法の風洞を使って魔力の道を繋ぐ。今のアカネは1本しか風洞を出せないけれど、どうやって戦うのかしら。
弓を引き絞り、矢を放つ。複雑な軌道を描いて狼の首に突き刺さる。だが、アカネは風洞を解除せず、ずらして次の狼へと道を通し、矢を放つ。これをもう1回繰り返し、木の陰から突然飛んでくる矢に混乱する3匹の狼を仕留めた。これは加点としておきましょうか。
「よしっ」
目を瞑ったままガッツポーズをするアカネ。残り2匹の狼も同じような行程で仕留め、これで合計5匹。依頼達成だ。
ようやく目を開けたアカネが尋ねてくる。
「教官殿!どうでありましたでしょうか!」
誰が教官よ。
「そうね、結論から言えば-10000点ぐらいかしら」
「えぇー...」
私の言葉に肩を落とし、ガックリを全身で表現するアカネ。
「空地に戻って反省会よ」
「はーい...」
所変わって例の空地。ここにログハウスか何かを建てたくなってきたわね。
適当な木を剣で斬り飛ばし、切り株の上に腰掛ける。
「まずは、目を瞑ることね。これに対しての釈明は?」
「第六感が便利なので、他は要らないのではないかと!」
「...第六感はあくまで補助よ。今は比較的静かな場所でアカネもまだ感度が低いから何とかなっているわ。けれど、第六感は細かなものから大きなものまでほぼ全ての情報を届けてくる。アカネが完璧にそれを捉えられるようになると、あまりの情報の多さに脳が壊れるわよ」
「...マジ?」
「マジよ」
自然において情報は無数に存在する。それを個人の脳で処理しきるのは不可能だし、確実におかしくなるわ。
「次は弓を構える時ね。何であそこで構えたの?」
「何でって...狼が見えたから?」
「矢は基本的に落ちるものよ。なるべく高いところから撃ちなさい。あの場面なら木の上からね」
今回は風洞を使っていたけれど、毎回使えるほどの魔力量をアカネが持っているとは思えない。現に前は200mほどの距離を狙撃して魔力欠乏状態になっていた。風魔法でアシストしていない時の弓の腕も磨かないといけないわね。
「第六感の精度、狼への近づき方、風洞の使い方は良かったわ。だけど、風洞に頼らない弓術と第六感の使い方は要修行ね」
「はーい...」
アカネの修行内容が決まり、それに打ち込む期間が始まった。
ステータスを上げるため、積極的にモンスターを狩ってレベル上げを行いつつ野山を駆け抜ける。第六感の使い方や壁のぼり、矢を素早く打つ技術や気配の消し方等を教え込む。早い日数である程度マスターしてしまったので、魔素のことを教え、風洞も効率化や方式の変更により、低燃費で強力な射撃が出来るようになった。バランス感覚や身体の使い方を叩き込み、どんな態勢でも弓を扱えるようにした。
私は基礎全属性の純魔法バージョンと発展系を覚え、魔法の多重発動を全属性で成功させた。聖魔法を含む全ての魔法の修練を行い、無意識レベルで発動できるまで身体に染み込ませる。飛行や魔力制御のレベルも軒並み上げた。装気や格闘術、剣術などもしっかりレベルを上げた。新しく大型モンスター用にツヴァイヘンダーという両手持ちの大剣を打ち、双剣と大剣の2通りの武器を用意した。
黙々と修行と実戦を繰り返したお陰で、ギルドランクも上がり財布も潤った。アカネの弓も買い替え、胸当ても少し上質なものに変更。私は防具に必要性を感じなかったので初期の服のままだ。カナデが作ってくれるのを待っている。
何故か今までしていなかったお互いのステータスの確認もした。
ミオン Lv.25 ↑7
種族:天使
職業:見習い剣士
HP:1340 ↑280
MP:3330 ↑770
STR:1410 ↑280
VIT:1010 ↑210
AGI:1370 ↑350
MND:1970 ↑420
INT:2170 ↑700
DEX:1460 ↑280
LUK:640 ↑140
種族スキル:【飛行 Lv.15 ↑4】【操翼Lv.8 ↑5】【祝福Lv.5 ↑4】【聖魔法Lv.8 ↑7】
スキル:【剣術 Lv.13 ↑3】【格闘術 Lv.9 ↑4】【火魔法 Lv.8 ↑7】【純・火魔法 Lv.10 ↑6】【水魔法 Lv.8 ↑7】【純・水魔法 Lv.6 ↑6】【風魔法 Lv.8 ↑7】【純・風魔法 Lv.6 ↑6】【土魔法 Lv.8 ↑7】【純・土魔法 Lv.6 ↑6】【闇魔法 Lv.8 ↑7】【純・闇魔法 Lv.6 ↑6】【炎魔法 Lv.5 ↑5】【氷魔法 Lv.5 ↑5】【雷魔法 Lv.5 ↑5】【岩石魔法 Lv.5 ↑5】【邪魔法 Lv.5 ↑5】【鑑定 Lv.7 ↑3】【採掘 Lv.4 ↑3】【精錬 Lv.1】【鍛冶 Lv.12 ↑3】【細工 Lv.1】【錬金 Lv.1】【魔導精錬 Lv.6 ↑3】【装気 Lv.8 ↑3】【純魔法 Lv.10 ↑6】【思考詠唱Lv.10 ↑7】
スキル(クラス2):【魔力制御 Lv.12 ↑6】
ユニークスキル:【魔眼】【魔力覚醒】
称号:【歩み上手】【撫でリスト】【格上殺し】【ドワーフの一番弟子】【魔の極みを目指すもの】【魔を解する者】【魔に適合する者】【魔を支配する者】
SP:52
アカネ Lv.18 ↑11
種族:冥狼
職業:見習い弓使い
HP:1300 ↑550
MP:680 ↑330
STR:1180 ↑440
VIT:1230 ↑440
AGI:1340 ↑550
MND:610 ↑220
INT:730 ↑330
DEX:1040 ↑440
LUK:290 ↑110
種族スキル:【影渡 Lv.1】【闇魔法 Lv.1】
スキル:【弓術 Lv.12 ↑8】【鷹の目 Lv.10 ↑7】【STR+ Lv.8 ↑6】【DEX+ Lv.6 ↑4】【装填 Lv.9 ↑7】【姿勢制御 Lv.12 ↑9】【木工 Lv.5 ↑4】【隠密 Lv.12 ↑10】【気配察知 Lv.4 ↑2】【鑑定 Lv.8 ↑5】【採取 Lv.3 ↑1】【風魔法 Lv.10 ↑7】
称号:【魅惑の毛並み】【歩み上手】
SP:46
アカネは私のレベルの高さや魔法能力に驚き、私はアカネが只の狼族では無かったことと種族スキルに驚いた。もっと早くに知っていたら鍛え上げたというのに...惜しいことをしたわ。
最終試験は北の山に行ったときに見つけたあの採掘ダンジョンの踏破。
私単体では何回か踏破しており、ボスは鉄鉱石で出来たゴーレムだった。鍛えられたアカネが放つアシスト付きの矢はゴーレムの関節を砕き、コアを貫通する。見事に危なげない勝利を収めたアカネに少し感動する。
...ゲーム内で約5日間ひたすら訓練したとはいえ、ここまで成長するとは正直思っていなかったわ。元々のセンスがずば抜けているのね...。
速くなったスピードで飛びついてくるアカネ。満面の笑顔で喜びを表現している。
ご褒美に耳や尻尾を存分に撫でつくし、翼で揉みくちゃにする。
そして、いつもの空地に戻る。感慨深そうに周りを見渡してアカネが一言。
「ここも広くなったね~」
私が祝福のレベル上げをするために周りの木を片っ端から斬ったのだ。そのせいで私のアイテム欄には祝福された丸太が大量に入っている。
「ひとまず、アカネの訓練は終わりよ。よく頑張ったわね」
「うん!何でこんなことしてるのかわからなくなったりしたけど、頑張ったよ!」
私はイベントで襲来してくるモンスターを最悪ドラゴンの類だと想定した。
私達のPTは2人しかいない。そして、私の翼はまだ封印し、出来れば魔法も使わないという条件で貢献度1位を取るという目標がある。そのためには急所を狙った即死攻撃が1番だと結論付けた。そのために大剣を用意したし、アカネを鍛え上げた。つまり、かなり無茶な訓練内容にしたのだ。そのせいでアカネは何度か死に戻りもした。ゲームなのに楽しくないことばかりだったかもしれない。
「これでミオンの隣に立てるかな?」
「えぇ、アカネは私の最高のパートナーよ」
「えへへ...頑張ったかいがあるなぁー...」
それでも、私の隣に立ちたいという一心でやり遂げたアカネを私は誇りに思うわ。
そして、お決まりの手順で森を出る。時刻はPM7時前。ゲーム内7日目の限界ログイン時間1回目はPM7時なので、満腹度を回復させてログアウトする。
VRギアを外し、茜と共に軽食を食べる。現実時間はPM1時であり、ここ2日くらいの流れだ。だけど、今日は違う。
「アカネ。私の部屋に行きましょう。約束を果たすわ」
「うん...」
訓練が終わったら私の過去を話す。その時が来たのだ。
茜と共に部屋へ戻り、ソファに座る。そして、私は話し始めた...。
06/16 ミオンのステータスに雷魔法が入っていなかったので追加。
現状のゲームもプレイヤースキルを上げようとすると、BOT撃ちとか立ち回りとかバフ管理とか結構修行ですよね...。
物凄いリアルなVRになると一体どうなることやら、というのを書いてみたかったのです。
※鬼PSのミオンに着いていくための訓練であり、UFOはこのような修行をしなければいけないようなゲームという設定なわけではありません。




