39
お待たせいたしました。
いつも評価やブクマ等ありがとうございます!
無事にログインしてきたアカネと合流する。
依頼を見るために冒険者ギルドへ向かいながら疑問に思ったことを尋ねる。
「アカネ。3倍加速の計算とゲーム内時間が合ってないのだけど、どういうことかしら」
「ん?それはねー、基本は3倍速なんだけど、深夜1時から朝6時までは等速なんだよ!」
なるほど...だったら計算は合うわ。
次の連続ログイン限界時間はゲーム内で午前5時ということね。
「だけど、金曜日と土曜日は3倍!普段働いてる人とか、深夜に時間が取れない人が不公平だ!って理由で深夜帯は等速なんだけど、金曜日と土曜日は翌日が休みの人が多いからそうなったんだって」
「色々考えてあるのね」
「まぁ私も調べてわかったんだけど、昔からMMORPGっていうのは時間を掛けられる人が強い世界なんだって」
「...そうなのね」
「でも働いてる人は日中プレイ出来ないんだから、日中も等速にしないとダメだよね」
「1日に何回も思考加速度を変えると危険なんじゃないかしら?」
「やっぱりそうなのかなー」
そんなことを話しながら冒険者ギルドへ入る。
もしもここが現実ならば、仕事始まりの朝と仕事終わりの夕方が最も忙しいのだろうけど、ゲームだからどの時間帯にも人が大勢いるわね。
人混みをすり抜けて依頼が張ってある掲示板のような大きな板の前へ。するとウィンドウが出てきて依頼の一覧が出てくる。
色々な依頼があるが、北の森でこなせる依頼を選ぶ。その選定途中にこんな依頼を見つけた。
『雷龍の討伐:推奨ランクS』
『依頼人:冒険者ギルド・国立モンスター研究所』
『達成条件:我が国に渡ってきた雷龍の討伐。もしくは捕獲』
『対象予想生息域:ノード山山頂』
『報酬:1000000ルピス』
『補足:依頼は討伐だが、捕獲できた際は別途追加報酬有り』
ノード山っていうのは北の山のことよね。...中々面白そうじゃない。何といっても雷龍、つまりドラゴンよ。
現実では絶対に出会えない空想上の生き物がこの世界には居る、という確かな事実に何時になく胸が高鳴る。
是非受けたい所なのだけど...失敗した時は支援分の代金を払わないといけないのよね...。
...閃いたわ。依頼を受けなければいいじゃない。偶然北の山の頂上に行く手段があって、偶然北の山の頂上に辿り着いて、偶然雷龍に出会って、偶然戦える手段があって、偶然戦うことになった。完璧ね。
でもまずはアカネの修行を見なければ...あんなに真剣なのに、1人だけ雷龍に会うなんて楽しそうなことを独占したら罪悪感で顔も見れなくなってしまうわ。
ということで、アカネが見つけて来た『北の森に生息する狼を5匹討伐する』という依頼を受ける。希望の依頼を選択するとアイテム欄に紙が入り、その紙を適当な受付嬢のところへ持っていけば受注完了だ。実にお手軽ね。
そのままアカネと共に北の森へ。未だにポーション等の消費アイテムは供給が追い付いていないらしく品切れ状態だ。何時になったら安定するのかしら。
私にとっては馴染みの空地まで飛んで、瞑想を始めようとしたアカネを呼び止める。
「今日は大事なことを覚えてもらうわ」
「え?何々?」
剣を取り出し、アカネの顔面へ真っすぐ突き込む。アカネはギュッと目を瞑って後ろへ尻餅を着いてしまった。そして、恐る恐る目を開く。
「い、いきなり何するの!?」
「アカネ。これはゲームよ。例えさっき顔面を割られていたとしても、傷つくのはゲーム内のアカネであって現実のアカネではないわ」
「だからって!」
「いい?これはゲームで仮想空間なのよ。つまり、何が起きても不思議じゃない。その時に一々現実と照らし合わせて竦み上がっていては何も出来ないのよ。ここは現実とは違う。だから何が起きても現実で死ぬことは無いわ」
「...つまり?」
「ここは現実ではなくゲームだ、という1歩引いた思考を持ちなさい。アカネは少し現実と混同している部分があるわ」
現実と混同してしまうということは、容易にパニックを起こしてしまう可能性があるということ。
五感がリアルに再現され、痛覚も軽減されているとはいえ機能している。つまり、かなり現実の再現性が高い。それが最近のVRというものの売りであることはわかるし、その感覚を楽しむのもいいだろう。
けれど、未知や戦闘と向き合う冒険という分野において、現実と認識することは仇となる。リアルな感覚を楽しみつつも、これはゲームだという冷静な思考が大切なのだ。
「五感を磨いて、第六感を身に着ければ、これまで以上にこの世界をリアルに感じられるわ。だけど、それに呑み込まれてはダメよ」
「...わかった」
そういって瞑想に入るアカネ。これだけ言っておけば大丈夫でしょう。アカネは言動がちょっとアレな時はあるけど、本質的には賢いもの。
アカネを諭して、今日は何をしようかと思っていたところでメッセージが届く。これは...ステラからね。
『時間できた。魔法見せあいっこ...しよ?』
...そういえばそんなことを言った記憶があるわね。
つい先日全魔法使いの天敵であることを自覚した身としては、正直会うことが少し怖い。
先ほどアカネにVRなのだから動じるなと言ったけど、これはVRの中で唯一と言ってもいい人間関係の部分なのよね。しかし、約束してしまったという事実は事実。それを反故にする理由にはならない。
...決めたわ。全てを打ち明けて嫌われるか嫌われないかの賭けをしましょう。勝率50%の賭けなら悪くないはずよ。
『迎えに行くわ。北の門で待っててくれるかしら』
『了解』
問題は、瞑想中で無防備なアカネを置いておくということ。そうだ、アレを試してみましょう。
「サンクチュアリ」
聖魔法の1つであり、正六角形の箱型の結界のようね。魔力を多めに籠めて...これで行き帰りの間ぐらいは大丈夫...だといいわね。初めて使ったしイマイチよくわからないわ。
そのままいつもの手順で北の門へ。既にステラが門を出て待ち構えていた。
「...久しぶり?」
「現実ではそうでもないけれど、こっちではそんな感覚ね」
「...どこでする?」
「私とアカネが使っている空地があるわ」
「...じゃあそこで」
ステラを連れて森の中へ。ある程度進んでから向き直る。
「ステラ...私はあなたに言わなければいけないことがあるわ」
「...何?」
「実は私は...天使族なのよ」
「...?」
そんな『えっ?急にどうしたのこの人』みたいな顔しなくてもいいじゃない...。
仕方ないので、ちょっとだけ大袈裟に翼を呼び出す。
「...本物?」
「本物よ」
「...触っていい?」
「空地へ行ってからね。ここだとまだ見られるかもしれないわ」
そう言ってステラを抱えて森を飛ぶ。そして例の空地上空へ。
私のサンクチュアリは未だに輝きを放っていた。それを消して地面へ降りる。
「...凄い。感動した」
「ありがとう?」
「...サービス開始の時に天使がいるって噂があったけど、まさかミオンだとは思わなかった」
「そんな噂が?」
「...ん」
ステラに見せられたのは当時の掲示板。...確かに噂になってるわね。あの時は加減がわからなくて派手に翼を出しちゃったし仕方ないといえばそうなのかしら。
そんなことを思っていると、
「...触る」
そう言って翼に抱き着いてくるステラ。サービスで操翼をフルに使い、翼で揉みくちゃにしてあげる。
-スキル:操翼 のレベルが上がりました-
こんなことばかりに使ってごめんなさいね。
しばらく揉みくちゃにして解放する。いつもはほぼ無表情、雰囲気で察しろという感じなのに、今は実にご満悦な表情だ。これもふわふわの魔力ね。
「んふー...満足」
「それはどうも。翼も喜んでるわ」
そうして一息ついた後、本題に入る。
「...それじゃ、魔法のお披露目と情報交換」
何時の間にか要件が増えていた。
「えぇ。それじゃあ私からね」
そういって、基礎全属性の魔法を一通り使う。勿論純魔法は含めていない。
「...ミオンも全属性使えるんだ...自慢しようと思ってたのに」
そう言ってステラも全属性の魔法を使う。ステラも魔法に適正がある種族なのかしら?
「ステラは何の種族なの?」
「...普通の人族」
普通の人族で全属性を使えるって凄いんじゃないかしら?
「...じゃあこれは?」
そう言ってステラが作り出したのは氷の玉。他にも氷の槍や氷の礫などの氷魔法を披露する。
確か氷魔法は取得可能スキル一覧に無かった筈だけど...。
「氷魔法があるの?」
「...水魔法の...発展系?頑張って氷を作ろうとしてたら覚えた」
成程。そういう風に取得するのね。
「...発展系の魔法は基礎属性よりも適正が厳しめ。私以外に氷は見たことが無い」
「他の属性の発展系はいるのかしら?」
「...情報によると、炎、雷、岩石、邪があるらしい」
それぞれ、火魔法、風魔法、土魔法、闇魔法かしらね。邪魔法って何だかゴロが悪いわ。
すると、ステラが声を潜める。
「...これはとっておき、ミオンだから教える。...実は魔法は他属性を同時に発動できる」
申し訳ないのだけど、それは昨日検証したわ...。
「...ここまでは結構知ってる人もいる。でも、違う属性を多重発動出来ることはほとんど知らない」
...ちょっとやられた気分ね。
「多重?同時とは違うの?」
「...似て非なるもの。多重発動は混ざったものが出る」
そういってステラは杖を構える。
「...これが風魔法のトルネード」
小規模の風の竜巻が起こる。それを消して、もう1度構える。
「...これが、火魔法のファイアと多重発動させたトルネード」
先ほどと同じように竜巻が起ころうとする。その瞬間、風の中心から炎が生まれた。見る見るうちに炎が広がり、炎の竜巻となる。
周りに延焼しだした炎を水魔法で消しつつ、ステラがどや顔をする。
「...名付けてファイアトルネード」
「よくこんなの見つけたわね」
「...実は魔法の師匠に教えてもらった」
ちょっと恥ずかしそうにするステラ。
「...多重発動はコントロールが難しいし、消費魔力が大きい。しかも、魔法同士に相性がある」
「それはそうでしょうね」
単純に水と火は相いれないし、光と闇も同時には存在できない。でも、その特性ならどうかしらね?後でやってみましょうか。
ステラはとっておきを出してくれた。であるならばこちらも言わなければならないだろう、私の能力を。
ちょっと緊張するわね...。
「ステラ...あなたに言わなければならないことがあるわ」
「...その言葉は2回目」
「翼なんて目じゃない程大事なことよ」
私の真剣さを感じ取ったのかステラも雰囲気を引き締める。
さて...どう説明しようかしら...そうだ、ステータスを見せればいいのよ。ステラならそれで分かるわ。
「私のステータスを見せるわ」
「...それは、口では説明できないということ?」
「そんなことはないけれど、見た方が早いわ」
「...ん」
そして、私は少し緊張しながらステータスウィンドウを見せた
修行パートは珍しくササっと終わらせる予定です。じゃないといつまで経っても話が進まない...。
次はイベント日まで進める予定です。




