20.結:試練は越えるためにある
ラビィ「……ハッ!」
目を開けるラビィ。周りを見渡し、近くにいた二人に息があることに気づき安堵。
ラビィ「……二人とも、よかった…!」
二人に覆い被さるように抱きしめる。その後二人も目覚ます。
レミリ「……ん、んぅ…ラビィ?…無事、だったのね?……アリスちゃんも…」
アリス「うん、アリス、平気だよ?」
ラビィとレミリはダメージを肩代わりした衣服がボロボロになっているが、アリスは土埃程度。
ラビィ「ポーションを使いましょう、レミリ」
レミリ「うん…。アリスちゃんは、運がよかったわね。…それとも女神様の加護かしら?」
ラビィ(アリスが女神から託された私の眷属、普段は忘れがちですが、私が無事な限り、アリスは平気のようですね。…高い検証費用になりました)
数本のポーションを身体に振りかける二人。服が修復していく。
そして、立てるまでに回復した二人。
レミリ「……そう言えば、私達が落ちてきた穴がないわね?…いや、まって、出入り口もない…?」
ラビィ「これは『転移』に近いみたいです。なんせ、落ちたはずなのに『試練の迷宮』を登っていたみたいですから…。最後の部屋まで」
レミリ「じゃあ、ここは…」
ラビィ「迷宮最奥、次の層に繋がる最終試練の場所です」
ラビィ(ボス部屋と言った方が、私にとっては、分かりやすいですけど…)
荘厳な部屋。部屋の最奥には巨大な扉があり、その前には騎士甲冑のような意匠のゴーレムが鎮座している。
【ガーディアンゴーレム
第一階層『春微』、試練の迷宮守護者。ボスモンスター。
挑む者に試練を与える者。五つのコアを持ち、それを連動させ冒険者達と戦う。その両腕は弱きを砕く】
ラビィ「どうやら、向こうにとっても、これはイレギュラー。
ダメージを与えない……挑まない限り、襲ってこないのでしょう。
ただし、この部屋を突破しないかがり移動不可な所は残念ながら、そのまま…と考えます」
ラビィ(『ゲーム』のグリッチのようなものでしょうか。あるいは、『ゲーム』ではフレーバーに過ぎなかった『挑む者に試練を与える者』という性質が…?)
レミリ「…出れないの、ね。……アタシが…行くって言わなかったら…」
ラビィ「違いますレミリ。全員で決めました。
私も、自身の迂闊な行動を謝りたいのですが、今は止めておきます。
この後の祝勝会で、存分に弄ってください」
アリス「レミリちゃん、みんな一緒だよ?だから大丈夫だよね?」
俯くレミリの肩に手を置くラビィと、二人に近づくアリス。
レミリ「ごめん。弱音が出た。でも、もう大丈夫。
ラビィ、作戦あるんでしょう?」
二人の手を握るレミリ。頷きを返すラビィ。にっこり笑うアリス。
ラビィ「えぇ、今度こそお任せあれ。
私が案内するのは、不思議な国ではなく、次の階層になるでしょう。
そのために力を合わせましょう、二人とも」
レミリ「えぇ!」
アリス「うんっ!」
笑顔の三人。そして、顔を寄せ合う。
ラビィ「―――という作戦です」
無言で頷く二人。そして、ガーディアンゴーレムに向き直る三人。
ラビィ「待っていただき、ありがとうございました。
我ら新進気鋭の美少女冒険者パーティ『ワンダーシーカー』試練に挑みます」
優雅な一礼をするラビィ。顔を上げると、杵を構える。後ろの二人も同様。
【『ワンダーシーカー』
エイプリルの町にて結成一週間の冒険者パーティ。
何かと規格外な余所者、ラビィを筆頭としたお騒がせパーティ。
その実力もまた、規格外。
メンバー(登録時LV→現在LV)
ラビィ・バニッシュ LV:15→20
レミリ・アンヴィル LV:10→20】
起動するガーディアンゴーレム。
立ち上がると、異常に大きな両手に燐光を纏わせて、ラビィ達に迫る。
ラビィ(今まで、散々『ゲーム』にない仕様に困らせました。
なので、レミリの盾ももう一段階強化して、レベルもあと5つ程あげて挑むつもりでした。
しかし、まさか、推奨レベルで挑むことになろうとは…!)
ラビィ「これは突進ではありません!直前に止まって、『ビックコアゴーレム』同じタイミングのパンチ!」
レミリ「分かったわ!」
前列を入れ替わり、レミリが前へ。ガーディアンゴーレムが予言通りにパンチ。
レミリ「アリスちゃん!」
アリス「『レミリちゃんやっつけて!』」
【レミリ、攻撃上昇】
レミリ「『パリィ』!」
大きく体勢を崩すゴーレム。瞬間、ラビィも前へ。
ラビィ「同時に行きます!」
レミリ「分かったわ!」
ゴーレムのコア2つにラビィとレミリの一撃が同時に加わる。5つの内、2つが砕かれる。
倒れる事無く、両腕を打ち合わせるゴーレム。衝撃音が一帯に広がる。
ラビィ「攻撃が上がりました!無理な『パリィ』より回避優先で!」
レミリ「あと3回決めれば勝てるんでしょ!?こっちは絶好調よ!」
とは言いつつも、腰を落とし、ゴーレムを真っ直ぐ見据えるレミリ。
ラビィ(…一瞬、『パリィ』ハイになってるかと思いました。
中毒性ありますからね、『パリィ』)
一瞬、レミリに視線を移したが、すぐにゴーレムに戻すラビィ。
ラビィ(『ガーディアンゴーレム』はゲーム時代の師匠でもありました。
大振りなれど、低耐久ならほぼ一撃なパワーの緊張感。そして、コアという分かりやすい回数の提示。彼は『パリィ』の習得練習のパートナーとも言えるでしょう。
……第一段階は)
その後も、ラビィによる指令、レミリの『パリィ』、アリスの支援により、3つめのコアを砕かれた。
4つ目のコアも砕かれた時、ガーディアンゴーレムの目が赤く染まる。
辺り一帯の床に拳を振り下ろす。
ラビィ「第二段階!レミリはアリスの前へ!」
レミリ「了解!万が一の時は任せて!」
アリス「『お姉ちゃん負けないで!』」
【レミリ、敏捷上昇】
ラビィ「さぁ、追いかけっこですよ?」
ラビィ、暴れ終わったゴーレムに一撃。
ゴーレムは身じろぎはするが、すぐさま反撃開始。拳を構えるが、途中でなぎ払いへ変化。
ラビィはバックステップで回避。
ラビィ(第二段階、バーサーク。通称、『先生ご乱心』。
この状態の対応に求められるのは、決まった動作ではなく、アドリブ力。
今の私なら、一撃食らってもミリ残りは出来ます。すでにそのように『ステータスを割り振った』ので。
火力を盛ることより、一旦耐久を伸ばして正解でした)
【ラビィ固有スキル①『ステータス割り振り』
成長する項目を選べる。通常この世界に暮らす人々は、己の成長するステータスを選べない】
ラビィ(アリスの支援。食らっても、残りありったけのポーションを預けたレミリの『アイテムパサー』で回復もある…)
ラビィ「…だから、死ぬかもとか考えるなよ、私!」
【『ゲーム中の死』:ゲームオーバー。直前に祈りを捧げた女神像の前へ戻る。
『この世界の死』:????】




