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16 離宮の火事 ギルド長サイド

 16 離宮の火事 ギルド長サイド


 ギルド長は、王宮に来てからずっと眠れなかった。


 王宮から与えられた部屋は立派だった。


 柔らかな寝台に、豪華な調度品が揃っているが、落ち着かない。



 王命には従え。


 その下に、短い一文。


 ミーナを必ず守れ。


 その一文が、頭から離れないのだ。



「今夜はいつもより嫌な感じだ」


 窓を開けると、夜風が頬を撫でた。


 王宮の庭は静かだ。


 いつもこんなに静かか?


 その時だった。


 鼻をかすめる焦げ臭さに、ギルド長の表情が変わる。


「火?」


 遠くの離宮の空が明るい。


「まさか……!」


 部屋を飛び出して、廊下を走る。


 途中で近衛騎士が立ちはだかった。


「どちらへ!」


「離宮だ!」


「立ち入りは禁止されています!」


「火事ではないのか?」


「対処中です」


「確認する」


 ギルド長は立ち止まらなかった。


 肩から体当たりを食らわせる。


 若い騎士が壁へ叩きつけられた。


「悪いな!」


 そのまま庭に出た。


 騎士たちが駆け寄ってきて、取り囲まれた。


 離宮の上の空が赤くなった。



 離宮に向かおうとすると、槍が目の前へ突き出された。


「これ以上は進めません。」



 全員が槍を構えている。


「退け」


 ギルド長は低く言った。


「王命です」


「王命?」


「誰からの王命だ?」


「言葉をお控えを」


 ついに離宮から火の手が上がった。



 ギルド長は一歩前へ出る。


「退け」


 槍先が一斉に向けられた。


「そうだよな」


 次の瞬間、ギルド長が踏み込む。


 槍を左手で払い、剣で右側に切りつける。


 残りは槍を捨て、剣を抜く。


 三人とギルド長は切り結んだ。そこへ、顔を隠した黒髪の男が音もなくやってきた。


 一瞬、視線をかわした二人。ギルド長が作った間隙をついて男は離宮に向かった。


 護衛たちは、男を追った。ギルド長も続いた。


 そして、炎のなかに浮かび上がったのは黒い獣だった。


 獣は窓を破り中に入った。



「もう、救出は無理だろう」と騎士たちが言ったが、ギルド長はかまわず切り結んだ。


 ギルド長の腕が飛ぶのと、最後の騎士が倒れるのが一緒だった。


 ギルド長は、腰のポーチからミーナがくれたポーションを取り出すとゆっくりと飲んだ。


 痛みと出血が止まった。



 ギルド長は、あの獣がミーナを助けて出て来ると確信して待った。



 離宮の二階、いや三階の窓ガラスが砕け散った。


 見上げると、黒い影が飛び出した。


 誰かを抱えている。


「キーラン!」


 やってくれたなと息をついた。


 キーランはミーナを抱えたまま庭へ飛び降りた。


 地面へ激突して、転がったが、立ち上がった。


 なんてやつだ。ギルド長はそう思いながら、


「よくやったな。待ってた。逃げるぞ」と声をかけた。


 ミーナがギルド長の腕を見て、眉をひそめたがなにも言わなかった。


「こっちだ」とギルド長は隠し通路に二人を導いた。



 外に出ると「お待ちしておりました」と声をかけられた。


「あぁ、助かった」


 物陰に止まっていた馬車が近寄ってきた。


 馬車に乗り込むと深く息を吐いた。


「ちょっと、よろしいですか?」


「えっと、キーランはポーションを飲んでね。ギルド長は、ちょっとさわります」


 と言うと、ミーナはギルド長の左腕にそっとさわった。


 二の腕から先は、もうない。


 不意に左腕が暖かくなった。ミーナが腕を握っていた。


 握る力が強くなってくる。そして腕が伸びていく。


「痛みは?」


「いや、なんとも」と答えていた。


 もっと不思議がれ自分と思いながら素直に返事をしてしまった。


 やがて、腕がそこに戻ってきた。傷一つない綺麗な腕だった。


 いくつかあった古傷がなくなっているのが、妙におかしかった。


 ミーナが深い息を吐いて、キーランに寄りかかった。


「しばらく安静にして、腕を生やしたのは初めてだから、どんなのができたかわからないの」


「そうだな。ありがとう」


「どう、いたしま……」


 最後まで言えずにミーナは目を閉じた。


 ギルド長とキーランは無言で互いの目を見た。


 やがて、王都のギルド本部に馬車が着いた。


 三人は馬車を降りると素早く本部に入った。



 奥の部屋に通された。キーランはミーナをベッドに寝かせた。



 本部長が入ってきた。


「大変だったようだな」


「あぁ、参った」とギルド長が答えた。


「そちらがミーナの同居人のキーランだね」


 キーランがかすかにうなずいた。


「今回のことを王宮は公のことに出来ない。王宮の手はギルドが止める」


 ギルド長もうなずきながら、キーランを見た。


「お願いします」


「落ち着いたら、馬車で送る。それまでゆっくりとしてくれ」


 そういうと本部長とギルド長は出て行った。










いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。

よろしくおねがいします。


書籍を出すことができました。

挿絵(By みてみん)




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