表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明けの陰陽師〜安倍晴明の子孫と伝説の妖怪がタッグを組んだら〜  作者: 太星
第二章〜新たな決意と共に〜
47/194

第四十六話 〜恵慈さんの仕事〜

おはようございます!!

前回はキョンちゃんと真琴、未来の3人の仲睦まじい光景をご覧いただきました!

今回も3人とも登場しますが、支部長の恵慈さんにフォーカスしていきます。

どんな仕事をしているのか、どんなことが起こるのか!?

お楽しみください!!

開口一番は真琴だった。


「未来ー!!大丈夫だった!?何もなかった!?」


 血相を変えた真琴が私を迎えてくれた。大臣室に呼ばれた私が無事なのか確認しているよだった。


「いやいや、大丈夫でしょう!別に何も悪いことしてないし、午前中はどうだったか?って確認だけだったよ。」


そこまで血相変えるほどのことなのか!?


「……ほ。そっかそっか!ならよかった!長老ってばすぐ人のこと叩くから未来も大丈夫か心配だったよー!」


ん?もしかして…。


「…?……それって真琴だけなんじゃないかな?」

「……え?」


 真琴は何もわかっていないようにキョトンとした顔でこちらを見ている。

 すると、後ろから声がかかった。


「そうですよ。皆さん長老から叱責を受けたことなんてほぼありませんよ。」


 私たちの会話にキョンちゃんが入ってきた。キョンちゃんによると、長老が叱るのは真琴くらいなものらしい。むしろ、長老が他の職員からぐちぐち言われるくらいにフランクな間柄のようだ。


 「ええ!?そんなの知らないよ!?みんな叩かれたことないの!?意外と痛いんだよ!?」


真琴はそんなこと知らないよ!?と言いながら自分の体験を言い放つ。


「真琴さんがいつもバカみたいなことしているからじゃないですか?もう少し自重した方がいいですよ。私も秘書として大臣の側にいますが、叱っているのを見るのは真琴さんだけですよ?」


キョンちゃんはすごい呆れた表情に見える。


「な!?なんてこった……。そんなバカな……。」


真琴は分かりやすく項垂(うなだ)れている。


「真琴って普段からこんな感じなんだね。もうなんとなく想像はついてたけど。」

「本当に困ったものですよ。ただ、仕事はしっかりやってくれるから周りもあんまり叱れずに長老自ら叱るという感じです。余計に困ります。」


 私とキョンちゃんは呆れながらうなだれている真琴を見るのであった。


「あ!そうだ!これから今日はここの仕事を見学していきなっていうことになったんだけど、どうすればいいかな?真琴の仕事見ててもいいの?」


 真琴に少しは元気出せ!との思いも込めて話を振ってみた。


「んー…。いや、午後はできれば恵慈さんの仕事を見学した方がいいかと思うな。ちょっと待ってねー。あ、いたいた!…恵慈さーん!!」


 みんながせっせと仕事している中で大声で恵慈さんを呼ぶ。その声にビクッとし、声のした方に顔を向ける恵慈さん。目を閉じているから音には敏感なんだろう。パソコンいじっているけど、どうやって仕事しているんだろう。そんな恵慈さんが立ち上がってこちらにきてくれた。


「どうしたの?真琴さん?」

「未来、午後はみんなの仕事の見学らしいんだって!恵慈さんのお仕事見学させてあげてくれませんか!?」


真琴は恵慈さんに対してもすごいフレンドリーに話しかけている。妖怪ってそう言う感じなのかな?


「ああ、そういうことね!いいよ。じゃあ、とりあえずこっちにきてくれるかな?」


恵慈さんは了承して、私に仕事の見学をしてもらうことにした。


「はい!」

「それじゃ、恵慈さん!よろしくでーす!」


 そう言って、それぞれの仕事に移っていった。

 

「恵慈さんって普段は群馬支部なんですよね?今日は報告で来たって聞いたんですけど、他にもここでできる仕事があるんですか?」


ちょうどいいので、午前中に聞けなかったことも聞いておこう、と思って話しかける。


「そうだねー。自分なんかはほとんどパソコン仕事だから、パソコンさえあれば大体の仕事はできるんだよね。基本的にシステム上で申請とかできるようになっているからね。」

「そうなんですね!私、ずっとパン屋で働いていたので、そう言った仕事って全然想像できないです!すごいですね!」

「いやいや、慣れちゃえばなんて事ないよ。むしろ、僕はパン屋の方が大変だと思うよ。接客業は基本的につらそうだし、パン作るのだって職人技って感じで大変そうだよね。手先も器用じゃないから、僕にはできないよ。」


 正直仕事を変えるってことは本当に大変なんだなーって思う。今までにやっていた仕事と全く違う職種で、真逆の仕事内容だからそれもそうだろう。どうしたら、慣れていけるだろう。やっぱり経験して慣れていくしかないのだろう。特に陰陽師の仕事と言っても、実際に現役の陰陽師はあったことがない。


「そうですよね。関わったこともない仕事ですもんね。そう言えば、恵慈さんは陰陽師なんですか?妖怪と契約しているみたいですし。」


妖怪と契約をしている人は少ない。それゆえに気になっていたので聞いてみた。


「ああ。僕は陰陽師ではないんだ。妖怪と契約しているのも生まれつきなんだ。親が陰陽師で、胎児のときに契約が成立していたみたいで、生まれた時から一緒なんだよ。僕は親が陰陽師だったし、ご先祖様も陰陽師としてはすごい人だけど、僕はその才能を受け継げなかったんだ。きっとそのかわりに契約ができたのかな。理由はよくわからないんだ。それでも、陰陽師達の適正とか、成長方法とかの助言はできるような人材として買われてここにいるって感じかな。」


 恵慈さんは少し寂しそうに話をしてくれた。きっと親の期待とかそういったものがあったんだろう。私は両親やご先祖がすごい人で、自分も才能があると言われて期待にも応えることが今後の頑張り次第ではできる。だけど、恵慈さんはいくら頑張ろうが足掻こうが陰陽師として成功することはないみたいだ。きっと自分の中での葛藤も自責の念も押し潰されそうになる思いをしたに違いない。今、自分が陰陽師になれる才能がかけらもないと言われたらきっとそうなる。それでも、自分にできることを見つけて、ここまで大きな存在になっているのは恵慈さんの努力があってこそだろう。そんな恵慈さんの助言を聞けるのは光栄なことで、一緒に働けるのも嬉しいし、頼もしい。

 すごい経歴を持っている人ってそれなりに経験の密度が濃いんだなと感じた。私は正直濃い日常を送っていたわけではない。こんな私でも強くなれるのだろうか。少し不安になってきた。


―『未来は今のままでいいんだぞ。』―


 私の心のうちを感じ取ったのか、空亡が念話で話をしてきた。


―『経験が大切なのは間違いないだろう。だが、濃いだの薄いだのは関係ない。要は未来がどう感じているかが大切なんだ。特に陰陽師に関して言えば、思いの力や考える力が大切になってくる。経験なんてものはこれからいくらでも積んでいけばいい。まあ、未来が強くなりたいと思う気持ちが大切という事だな。』―


空亡が慰めてくれた。


 ―「ありがとう。…うん!そうだね!まだ、始まったばかりだもんね!」―

 ―なにやら、わらわは蚊帳の外って感じですね。―


いい話を空亡にとっていかれて、ちょっと不満そうなソラだった。


 ―「そんな事ないよ!ソラもすごく助けになってるよ!」―

 ―まあ、そういうことにしておいてあげましょう。―


 少しの間、黙っていた私が気になったらしい恵慈さんが心配して声をかけてきてくれた。


「……?大丈夫ですか?気分が悪いですか?少し変な話をしてしまったかな?」

「あ!?ごめんなさい!ちょっとぼーっとしちゃいました!流石に情報多かったかな!?あははは!」


 恵慈さんの話を聞いて勝手に昔を想像して勝手に感傷的になっていたなんて言えるはずもない!


「そう?まあ、大丈夫ならいいけど。気分とか悪くなったら早いうちに言ってね。」

「はい!ありがとうございます!」


 ふう、なんとか誤魔化せたのかな?それとも気を遣っているのだろうか。まあ、後者だろうけど、深掘りされないのはありがたい。


「あ!それで、これから何をするんですか?!」


 とりあえず、今日の仕事の話に入ろうと質問をした。


「ん?ああ!そうだったね!今日はせっかく本部に来たからみんなの状態を見て回ろうと思うんだ。」

「みんなの状態を見て回る?ですか?」


純粋にその言葉の意味が気になり、きょとんとしてしまった。


「そう。知っての通り、僕は人よりよく物事が見えるんだけど、定期的に本部に来て、ここの妖怪メンバーの力の流れを見て何か異常がないかを確認しているんだ。妖怪達は妖力の塊だからその様子で不調とかも見抜けたりするんだよね。そういった健康診断みたいなものかな!?」


恵慈さんは要約して説明してくれた。


「なるほど。確かにそれは大切な仕事ですね!」

「ちなみにここの妖怪の子達は基本的に実体化して仕事をしているけど、実体化の省エネ化は僕が考案した術式で誰でも小妖力で実体化しているんだよ。」

『なんだと!?それは本当か!?』


 とても驚いたようでつい食い気味に叫んでしまった空亡であった。


「ええ、本当ですよ。私は陰陽師としての力はないですが、術式の構築なんかは得意な方で、よく長老にお願いして術式を作ったりしてたよ。隊長とか副隊長にも手伝ってもらったな!実際の術式の発動は僕じゃできないからね。」


なんということだ!?お父さんお母さんも関わったことがあるのか!?


「そうなんですね!?すごいです!」

『これは本当にすごいことだぞ。実体化についてもそうだが、術式を行使できないにもかかわらず、術式を正常なもので構築するなんて常軌を逸している!』


空亡は恵慈さんの能力に関して本気で称賛している。


「はは。ありがとう。これも契約している妖怪の百目(ひゃくめ)のおかげだよ。力の流れが見えるからどう言った流れを作ってあげれば術式として発動できるかを考えるんだ。まあ、いろんな術式を見てきたからこそできるものだね。これに関しては僕も誇りを持っているよ。」


「すごいですね。そんなことができるんですね!色々学ばせてもらいます!」

「ありがとう!じゃあ、見て回ろうか?」


 そう言って、オフィス内を周り始めた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!!

恵慈さんはその契約能力を活かして妖怪たちの健康管理をしているようです。

普通の人間と同じ健康診断では見られないので、ある意味とても便利な能力です。

まあ、ルーチンの仕事ではないですけど…!

次回は9/20朝にアップします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ