086.爺、熊同士が争って…え、違う?
奥地へと進むとのぅ、何かが争っておるような…いや、戦うておるのかや?
うむ、これは誰かが魔獣か魔物を討伐しておる現場に遭遇しらしいわえ。
「某の獲物を掻っ攫った輩のお目見えであるか?」
獰猛な笑みを湛えて言わんでいただきたいわえ、っと言うかじゃ、別にダリル様のために住もうておるのではないと思うぞい。
狩られる方としては、討伐されるために住んでおると言われては堪らんであろうてのぅ。
討伐現場へと辿り着くとじゃ、鎧熊と戦うておる大男がのぅ。
体躯に合わせた巨大な槍刀…あれは青龍刀であろうかえ?
それを振り回しておる禿頭の髭面な大男がのぅ。
ありゃ、どちらが熊か分らぬ体躯じゃて。
「ぬぅぅん」っと気合一閃にて放たれた斬撃が鎧熊の腕を切り裂きよったぞい。
鎧熊とはのぅ、鎧のような甲殻を纏う種でな、その硬い甲殻と豪毛にて身を守る狩り難い魔獣なのじゃ。
コイツの上位版には魔物のアーマード・ベアと言うヤツも存在するそうな。
鎧熊でも厄介というに、面倒な魔物を改造して生み出してくれたものじゃえ。
禿頭大男は甲殻と甲殻の間、豪毛も薄い関節部を的確に斬り裂いておるようじゃて。
そんな大男を見てダリル様が激怒するでのうて溜息をのぅ。
あらら?獲物を奪った輩と、激怒されると思っておったのじゃが…はて?
「既に来ておるとは思っておったが…大人しく待てぬのか、カンムよ」
そう、呆れたように。
あ、知り合いなんじゃの…って、ん?
ダリル様の知り合いにて槍刀術の使い手…確かね晶石産地近くの街へと逗留しておる知り合いに連絡したとか告げておったような…
そうじゃ、思い出したわえ。
聖蔵麟流のカンム・ウンタン様と言う槍刀の使い手へダリル様が文を出したとか申されておった筈。
皇国までの旅路をダリル様と共にされ、こちらで別れられたのだとか。
この近くの街に居を構えておる道場主となった友人宅へ厄介になっておるのじゃとか…
腕は確かじゃて、儂の槍刀の師として推挙いただいた方じゃて…儂に無断でのぅ、ふぅ。
しかし…180センチ程度はある儂のアバターが見上げるほどの巨躯が筋肉の鎧を纏い暴れておるのは恐ろしくもあるな。
あれでは、どちらが魔獣、魔物か分らぬわえ。
気の弱い一般人が見たら腰を抜かすは必須であろうてな。
っか、儂は、あのお方へ槍刀術を学ぶのかや?…大丈夫なのであろうか?
鎧熊を退治したカンム様が、にこやかな笑みを湛えてこちらへとのぅ。
「おう、ダリル!来たのけぇ!
おめが誘ってくれたでよぉ、こげに面白ぇ場へと来れたぜぇい」
うむ、大変御満悦なようである。
そんなカンム様をにてダリル様は苦笑いで告げる。
「ったく、おまえさんには敵わんな。
しかし、某にも獲物は残しておいて欲しいものよ」っと。
「がはははははっ、なに、心配はいらぬて。
狩っても狩っても湧くように現れよるでな。
しかも、奥へ向かえば向かうほどに、手応えのある手合いが増えて来るで、中々に楽しませて貰っておるわっ!」
やれやれ、戦闘狂が、もう1人増えてしもうたようじゃぞい。
呆れて2人を見ておるとな、カンム様がこちらに気付いたようにのぅ。
「ふむ、1人ほど面構えの良い輩が混ざっておるな。
あれが、おぬしが推挙した者か?」っと。
「おぅ、ユウというヤツでな、色々と学ばせておるのだ。
それがな、乾いた砂地が水を吸い込むが如く学び取って行くゆえ、これが中々に興味深く面白い。
コヤツ、一通りの武具を使いこなすがのだが、特に刀と槍刀に適正があってな。
いや…こやつが気に入ったと言い換えた方が良いであろうか?」
あ、バレておったのじゃな…
「刀は某が仕込んでおるゆえ、多少は使えるようにはなったが…アンリやカルナ、トームルゼスなんぞの域にはな。
まぁ、それでも迫るていどには鍛えられてはおるぞ」
いや、非常に楽しそうじゃのぅ…でもですじゃ!剣聖様、紅武者殿、剣神様と比べるのは止めていただきたいものじゃわい!
「ほぉう、アンリ達と比べるに値するか…」
いや、底光りするような目で値踏みせんでいただけぬかえ?
「で、当然、俺にも?」
「うむ、槍刀の使い方が拙いゆえ、おぬしに鍛えて欲しい思うてな。
某では槍刀の扱いを教えるには限度があるゆえ」
「ほうほう、それは、それは」っと顎鬚を扱きつつ呟くカンム様。
儂を上から下へ、下から上へと舐るように値踏みしてくださるわえ。
居心地最悪じゃっ!
「そんなことよりですじゃ!
既に地晶石を数個、さらに、この地では珍しい風晶石も得ましたでな、そろそろ帰ましょうぞえ」
儂が告げるとじゃ、キョトンとした顔でダリル様が儂を見る。
いや、そがぁに「なに言ってやがる?こやつ?」っといった顔をされぬとものぅ。
「ダリル、もしや、この小僧…術師か?」
「ああ、特上のな」
「ほっほぉ~、いやな、細かいヤツが時々な。
知っての通り、槍刀では懐へと入られると少々厳しゅうてな。
その点は、ぬしが居れば十分だが、術師が居ればなお良い。
しかも槍刀使いが増えれば殲滅力が増すと言うものよ」
「実に楽しそうに話しておられますがのぅ、もしや奥地へと向かうのは決定事項で?」
恐る恐る尋ねるとじゃ?
何を言っておるっと言った顔で見られてしもうたわえ。
いや、決定事項なんじゃな、騎士達も苦笑いしておるわい。
危険な地へピクニックへ向かうように浮かれて向かうのは違うとおもうのじゃが…どうじゃろ?




