080.爺、戦闘狂なのかえ?
儂の前にてダリル様が疾走してオーグへと。
オーグもダリル様に気付いたようじゃてな。
まぁ、堂々と姿を晒して向かって来るのじゃから気付かぬ筈もないじゃろうてのぅ。
【ガァァァァッ】っとオーグが雄叫びを上げダリル様を向かい受けるぞい。
ダリル様が疾駆しておる方へと体勢を整えつつ、右手に持ちし倒木棍棒を振りかざしておるわ。
それを見たダリル様がニヤリと。
いや、何故に、そこで笑いなさる?
オーグが振りかぶった倒木棍棒を上から叩き付けるように振り下ろしおった!
危ないっ!
じゃが…その振り下ろされた棍棒の場所にはダリル様の姿はなかったぞい。
もしや!叩き潰されたのかや!?
いや、あの刹那にて避けつつオーグへと。
はぁっ!?避けた瞬間が分らなかったぞいっ!一瞬ブレたように見えたのじゃが、どのようにして避けたのじゃ?
オーグもダリル様の姿を見失うたようでな、キョトキョトと辺りを見回しておるわい。
いや、おぬしの足元じゃからのっ!
ダリル様は疾走したまま勢いを殺さずに、オーグの足元を身を低くしつつ走り抜けておるのじゃが…
ギィィィンッと鋼と鋼を打ち合わせたごとし音がのぅ。
ダリル様にて抜き打ちで放たれた斬撃がオーグの足に当たった刹那の音じゃわい。
あの斬撃を弾くのかや!?
「ふっ、某が愛刀、備那永虎を弾くか…
うむ、面白きかな」
いや、面白きかなってアータァ…その愛刀を後で面倒見させられるのじゃろうのぅ…はぁっ。
しかし、オーグの皮膚は下手な竜種をも追随を許さぬほどとは聞いてはおったがな、こりゃ相当なものじゃて。
儂は呪文を唱えてダリル様の刀へと切れ味増加の魔術付与をな。
「むっ、ユウか…ちっ、要らぬことを」
いやいや、素では刃が通りませぬからなっ!まったく、困ったお方じゃてのぅ。
儂も愛刀である2刀へと付与を行いつつ参戦をのぅ。
棍棒は既にダリル様に切捨てられて短くなってしもうておるわい。
あれでは棍棒としての役割を果さぬであろうよ。
役に立たぬ元棍棒を投げ捨てたオーグはな、棍棒にも劣らぬブッ太い腕を振り回して暴れておるわい。
それを見切りつつ紙一重にて避けつつ斬り付けるダリル様と儂。
むぅ、何時のまにやらオーグは片腕になってしもうとるわい。
ダリル様が切り撥ねたのであろうの。
儂は皮を裂き肉を斬ることはできておるのじゃがな、骨までは断つことができておらぬ。
やはり、まだまだダリル様の域には遠く及ばぬでなぁ。
あっ、足首を斬り飛ばしてしもうておられるぞい。
片足の足首先を失のうたオーグはのぅ、振り回しておった腕のせいもありバランスを崩して倒れるのじゃがな。
倒れる途中で刃が届くようになったダリル様に首を刎ねられてしもうたわい。
「ぬぅっ、ぬるいっ!ぬるいぞぉっ!
付与なんぞ寄越すゆえに、安易な討伐へと成り下がってしもうたではないかっ!」
「いや、そうは申されてもですのぅ、普通は無理ですじゃ」
ほんに困ったお方じゃて。
「むぅ、久々に体を動かしたゆえに、かえって足りぬわっ!
替わりを所望じゃっ!」
いや、所望と申されましてものぅ…えっ?探せ?今からですかえ?はぁ、仕方ないですのぅ…
でな、辺りを再び索敵することになったのじゃがな、そうそうオーグのような輩が現れては堪らんわい。
流石に見付けることはできなんだのじゃがな、草食の魔獣を数種ほど見付けたりはしたぞい。
まぁ、危険種ではないゆえに放置して探索優先じゃな。
「ぬぅ、見付からぬか…この滾り、どうしてくれようか?」
いやいや、先程遭遇したサイ型魔獣を仕留めなすったばかりであろうに…
準危険種ではあるのじゃがの、無闇に近付いたり刺激せねば危ないヤツではないのじゃ。
じがの、見付けたのをダリル様に告げるとのぅ。
「足りぬが…無いよりはマシで、あるか…」っと。
疾駆、再びじゃっ!
いや、無為に狩りなさらぬでも…滾りを散らすため?さいですか、ふぅ。
そのようなことがのぅ。
もう夕闇が迫り始めておる時刻じゃてな、村へと戻りたいのじゃが…
「致し方なし!」っと、ようやく諦めなすったわい。
そして儂らは村の結界を越えて村の敷地内へとのぅ。
ここは村の北東方面でな、裏門に近い場所とも言えるのじゃが裏門は視認できておらぬわえ。
歩いて宿まで帰るには遠い場所ゆえにのぅ、途中で見付けた民家にて馬を借り受けて帰ることにのぅ。
1頭しか居らなんだゆえに2人で騎乗しての帰ることになってしもうたわえ。
乗馬用の馬ではなかったのじゃがな、借り受け賃を払うと貸して貰えたわい。
馬も宿へ預ければ、明日受け取りに宿へと赴いてくれるとな。
まぁ、その分、支払った借り受け賃は割り増しとなったが、致し方ないであろうよ。
宿へし辿り着いた頃には、とっぷりと日が暮れておったわい。
皆は夕餉を平らげ寛いでおるのぅ。
ダリル様と儂の夕餉は残されておったでな、美味しくいただいて今日は終わりとな。
流石に、これからの修練は勘弁じゃわい。




