077.爺、いざ、村そとへ!
うむ、あっさぁ~じゃぇ。
昨日は日高殿と思わぬほどに盛り上がってしもうてな、少々寝る時間が遅うなってしもうたのはごさんじゃったわえ。
儂は起きて身支度を整えてから部屋からのぅ。
何時もの日課じゃて。
村の広場では既にダリル様が鍛練を行っておられたで、儂も合流じゃ。
宿に帰りて朝食をのぅ。
いやはや何とも、今朝は調理免除となっておったのじゃ。
珍しきこともあるものじゃてのぅ。
既に儂とダリル様の朝餉は用意されておってのぅ、弁当も同様にのぅ。
全てセルフィス様が自らご用意いただいたとのことじゃてな。
恐悦至極に存知まするぅ~っと言うヤツじゃてのぅ…
朝餉をいただき茶をいただく、朝のやわやわと優しき一時…うむ、至極じゃ。
じゃがな、そんな一時は光陰矢の如しとの比喩ごとしでのぅ…
「さて、行くか」っとのダリル様の1言で終わりを告げたわえ。
今日は騎士達は同行せぬゆえ、儂とダリル様の2人にて村の外を巡ることになっておる。
まぁ、村近くであるゆえに、さほど危険はないと思っておるのじゃがの、実際には分らぬでな。
村を覆う結界はな、結構な広さを誇っておる。
なにせ畑や牧場なんぞも結界内じゃからのぅ。
そんな結界外を巡るとなれば、1日で周れるか怪しいところじゃ。
まぁ、別に村の外周を辿り1周するのが目的ではないでな、途中で切り上げて村の結界内へと入りつつ戻れば良いだけじゃて。
戻る途中の民家にて馬を借り、馬を駆って帰れば夕餉には間に合おうでな。
そんなことを思いつつ村から出る。
村内には巨岩は存在しておらなんだが、村外は巨大岩石がゴロゴロと転がる草地が広がっておる。
茂みや林なんぞも点在はしておるが、規模は小さいものじゃな。
昨日、幼子達は村に隣接する林へと入って行っておったが、あそこで取れる木苺目当てじゃったようじゃて。
村の子供達が昔から遊んでおる林じゃったらしゅうてな、こたびのようなことは初めてだとのぅ。
いやいや、昔から子供達だけで結界外へと赴いておったと?
なんとも無謀なことを…困ったものじゃてな。
まぁ、それはそれとしてじゃ、村の外へ到るとのぅ、途端に視界が悪うなるで困るわえ。
乱立する巨岩が視野を狭めるでな、その影に潜まれたら普通は分らぬぞい。
点在する茂みや林も天然の障害物として索敵を妨げるであろう。
まぁ、目に頼っての索敵であればじゃがな。
「して、ユウよ。
どちら獲物を目指す?」
そうダリル様に問いかけられたわえ。
ダリル様は気配を感じとっておられるようでな、それにて判断されておられるのじゃ。
「そうですのぅ…正面の岩向こうに獣がおりまするが、あれは林に住まう獣でしょうな。
右手に数箇所…こちらも獣でしょうがのぅ、狼の群れもおるようですじゃ。
左手には魔力を秘めた存在が…ふむ、魔獣でしょうや?
魔物ではないと思いますがのぅ」
そう索敵した内容をの。
儂は気配もじゃが、氣と魔力にても察知できるでな。
流石に音と臭いでの索敵はできぬが、近場ならば多少は行えるぞい。
そして魔術を用いた索敵術も展開しておるで、気配察知なんぞよりも遥かに広範囲を賄えておるのじゃよ。
「で、あるか…なれば左にて感ぜられた獲物を狩りに向かう」っと告げられ、スタスタとのぅ。
方向は儂が指し示したとは言え、正確な場所は儂しか分らぬというに、ふぅ。
しかし…距離があり過ぎたゆえ、魔獣か魔物かを見分けることはできておらぬ。
近場なれば、もうちと詳しい内容が分るのじゃがのぅ…
儂らは無造作に歩いておるように見えるがの、キッチリ気配は絶っておるでのぅ。
騎士達の同行を断ったのはの、これができぬからじゃてな。
気配駄々漏れにて獲物へと近付くなんぞ有得んことじゃがな、気配断ちを行う騎士なんぞ、どがいな暗殺騎士じゃと言うことじゃてのぅ。
まさに騎士のスキルとは対極の御技と言えようぞい。
っとは言え、そんな者を連れて狩りなんぞは御免こうむりたいものじゃわい。
ゆえに騎士達は、ステイ、じゃっ!
儂とダリル様が向こうた先にはの、黒狼の群れが…
うむ、魔獣じゃな。
そうそう魔物が居って堪るかえ。
っと言え、魔獣としても強い部類の黒狼が、ここら辺に現れるとは聞いてはおらぬぞい。
流石に数が多いでな、どうするかとダリル様を見るとじゃ、顎を摩りつつ群れを見てなさるわえ。
「ふむ、刀だけであしらうには時間がかかるであろう。
村外周を巡るだけでも時間は掛かるゆえ、数匹を相手としたい所だな。
うむ、ユウよ。
弓と魔術の使用を許可する。
それにて数を減らした後に接近して狩るのじゃ」
おお、流石に刀での特攻は無謀と悟られたようじゃっ!
儂はてっきり、刀を抱えての神風アタックかと思うておったわえ。
一安心じゃが…なんじゃか…変な気が…
「して、ダリル様もですよな?」そう確認するとじゃ、キョトンとされてのぅ。
「あのていどの獲物、某が加勢するまでもあるまい。
それでは鍛練にもならぬからな」じゃと。
マジかぁぁぁっ!




