063.爺、気分はドナドナじゃっ!
深夜、辺りの騒がしさに目が覚める。
寝室コンテナは儂専用にて儂だけが寝ておるわけなのじゃがの、外の音を完全にカットするのは危険ゆえ、ある程度は聞こえるようにおっておるのじゃ。
じゃが、安眠のために防音性は高めておるでな、少々の音では聞こえぬようにしておるぞえ。
むろん、獣や魔獣ていどの襲撃ではビクともせぬ強度を誇っておるでな。
野営などでテント代わりに使用可能かの実験も含めて使用しておるわけなのじゃが…
魔獣っと言っても魔力を得た獣ゆえ、多くの者が寝泊りする宿営地を襲うことなんぞ稀じゃて、あまり実験にはのぅ。
しかし…何かが壁にぶつかる音なども混じっておるようじゃが、何が起こっておるのじゃ?
儂は身支度を整えてから覗き窓から外の様子を伺ったのじゃが…
「ぬぅ、魔獣の襲撃かえっ!?」
そう、数体の魔熊が宿営地を襲っておったのじゃ。
ダリル様と騎士達が迎撃しておるのぅ。
儂らとは別に宿営地にて野営しておった者達の護衛も迎撃に加わっておるぞい。
襲撃して来た魔熊の内2頭がコンテナを執拗に弄っておるようじゃな、いや、コンテナは食い物じゃないんじゃよ?
ううむぅ…夜食としてコンテナ内にて夜食を作った残り香が悪かったのじゃろか?
いやの、甘いカラメルコーティングケーキなんぞを夜食ついでに作って食したりのぅ。
その、なんじゃ、これは調理研究という崇高たる修練の一環でな、決して皆に作るのが面倒と言うわけでは…
しかし…夜食の残り香に惹かれて、こちらへと来ておると言うことは…美食家なのかえ?
しかし、これではコンテナより出れぬではないかえ。
邪魔ゆえ魔術を発動して2頭へと電撃をのぅ。
いや、火達磨にして差し上げようかとも思うたのじゃがのぅ、それを行うと周りに迷惑と思うてな。
ううむぅ、火達磨になった魔熊が宿営地を狂ったように走りまわる…うむ、後で説教まっしぐらじゃな。
電撃にて魔熊が硬直しておる隙にコンテナより出るぞえ。
魔術だけで迎撃しても良いが、戦える者が安全な場所に篭って戦わぬのはいただけぬでな。
「ユウ!ようやく起きおったかっ!」っとダリル様。
いや、安眠しておったでのぅ…
「済みませんじゃっ!」っと、返しておいたわえ。
っと言ってもじゃのぅ…魔熊の毛皮は厚いでなぁ…刀での1撃では致命傷にはならぬのじゃよ。
コンテなにご執心であった魔熊の内の1頭が儂の方へとのぅ。
もう1頭はコンテナにご執心のようじゃな、グルメさんかえ?
まぁ、こちらからしたら2頭こられるよりはありがたい話じゃがな。
ダリル様達が相手をしておるのが5頭ほどじゃな。
ダリル様がフォローしつつ迎撃を試みておるようじゃ。
こちらへ2頭きておるで多少は楽になっておるとみえるわえ。
っと言うかじゃ、獣の熊というのはタフで厄介であるのに、それが魔獣化した代物じゃぞい。
魔力を帯びた毛皮は頑丈になり刃がなかなか通らぬでなぁ。
まぁ、こちらも刃へ魔力を纏い斬れば良いだけなのじゃがな。
儂は、ついでに氣も纏らせておるで、他の面々に比べれば容易く斬れてはおるぞい。
じゃがな、地の魔力を纏った毛皮は中々に面倒な代物じゃてのぅ。
しかも刀ゆえに間合いが近いでな、ヤツの攻撃を避けつつ斬り付けねばならぬ。
これは中々に面倒じゃのぅ。
うぉっ!ブッ太い熊の腕が頭上を掠めるようになっ!
事前に察して避けたゆえ大丈夫じゃが、当たれば一溜まりもなかろうてな。
大刀と小刀の二刀流にて斬り付けておるのじゃが、なかなかに斃れてくれぬわい。
うや?お主も来るのかえ?コンテナは、もう良いのかのぅ、もう少しコンテナと戯れてくれてても良いんじゃよ。
別に遠慮は要らんてのぅ…むぅ、駄目?やはり、こちらへと来るのかえ…
ふぅ、1頭でも面倒なのに、さらに増えよるか。
儂はチラリとダリル様を見るとのぅ、仕方ないと言う感じで頷かれたわえ。
それを見て、儂は隙を見て2頭へ再び電撃の魔術を放つ。
避けつつの詠唱じゃったゆえ、少々手間取ったがのぅ、なんとか硬直させることに成功したわえ。
こやつらは魔獣ゆえに魔術の効きが悪いでな、手早く行わねばなるまいて。
ぬっ?何をするかじゃと?それはのぅ、手首、足首へと巻いた錘と防御と言うよりは重しとして纏った防具を外す作業じゃよ。
ゲームならば一瞬で脱着できぬものかえ。
っかのぅ、龍珠の修行ではあるまいに、なんともベタな修行を強いて下さるものじゃてのぅ。
うむ、儂、ワクワクすっぞぃ、などと思いつつ、身軽になった身で迎撃再開じゃて。
しかしのぅ、身体強化は解禁してくださらぬようじゃのぅ。
刀身へ魔力や氣を巡らせるのは許可いただけるのに許していただきたいものじゃて。
むっ?
【ぐぉぉぉぉっ!】っと魔熊の1頭が立ち上がりつつ雄叫びをな。
いや、不用意に大口を開けてはならぬぞい。
虫入るぞい。
そんなお主にはのぅ、魔導銃の弾丸をプレゼントじゃて。
なに、遠慮は要らぬぞえ。
口内へと爆散する炎の銃弾をぶち込むとな、見事に頭が弾けたわえ。
これが話しに聞く『汚い花火』と言うヤツじゃろか?
1頭斃したのじゃがな、コンテナ弄って遅参した魔熊が相方を殺られて激怒したようじゃわえ。
怒りの雄叫びを【がぁぉぉぉぉっ!】っとな。
じゃからぁ、それは悪手じゃて。
そう思い銃弾をプレゼントしたのじゃがな、首を振って避けよったわえ。
まぁ、至近距離にて弾が爆散したゆえ、無傷とはいかなかったようじゃがの。
しかし…やはり魔導銃で放つ弾の威力が低過ぎると思うぞえ。
これは改良が必要じゃのぅ。
残った1頭とダンスを踊っておる間にな、あちらにて方が付いたようじゃな。
セルフィス様の放った魔術が決め手となったようじゃ。
ゼルダ婆様が魔熊へと施した状態異常系の魔術も手助けとなっておったようじゃよ。
儂も扱えるのじゃがのぅ「修練にならぬゆえ、禁止である」っとのぅ。
いやいやダリル様?禁則事項が多過ぎではないですかえ?
こちらも苦労したのじゃが、なんとかのぅ…
っか、空が白み始めておるではないかえ、なんとも迷惑な森の熊さん達じゃてのぅ。
安眠妨害甚だしいぞぇ。
さて、迎撃討伐も終えたでな、もう一休み…
「ユウ?何処へ行くつもりなのですか?」っと、ラセヨツラ様に肩をガシッと掴まれたのじゃが、まさか…
うむ、そのまさかじゃったわぇ。
続いて朝餉の準備と言う名の戦場へとのぅ…気分はドナドナじゃったわぇ、グスン。




