047.爺、勘弁してくれぬかのぅ…
退治した魔獣は森林地帯では一番多く現れる狼の魔獣じゃったわえ。
ゆえに、その価値は高くはなくてな、討伐したら森へと捨て去るのが恒例となっておるそうな。
じゃがのぅ、殺生して捨て去るなんぞ看過できぬわえ。
そんな扱いの森狼の屍であってもな、色々な生産素材となるゆえにな。
そう言うことで、全て儂が貰い受けることにのぅ。
血抜きは必要なので魔術と魔術陣と錬金の術を複合し行使して血を短時間にて抜き去り空間拡張した樽へとな。
この血も色々と使えるゆえ、後で色々とのぅ。
ゼルダ婆様が頷いて、にんまりとされておられるのじゃが、他の方々は眉を顰めておるわい。
まぁ利用価値を知らねば仕方あるまいて。
とりあえず血抜きを済ませると、屍を空間拡張済みの袋へと仕舞い背嚢へとな。
今夜の宿営地で色々と行うことができたわえ。
それを見守っていたダリル様がのぅ。
「ううむぅ、ユウは多才なことよ、しかし先程の戦いは些か雑過ぎような。
力任せと言っても過言ではあるまい。
しばらくは身体強化などを行わず、技にて戦うように」
そう告げられてしもうたわえ。
それを聞いていた騎士が呆れたようにダリル様を見ておるぞい。
そうそう、襲われておった馬車は礼を告げた後、既に旅立っておる。
こう言う場合はお互い様と言うことで謝礼などは受け取らぬ場合が多いそうな。
特に皇国騎士団に属する騎士などは治安維持も職務ゆえに謝礼はのぅ。
だが、儂とダリルどのは民間の者ゆえに、多少の心付けを渡して来たわえ。
特に武神と名高いダリル様へはのぅ…ペーペーな若造たる儂とは扱いが違っても致し方あるまいて。
そんなことを思っておるとじゃ、騎士隊長が苦笑いしつつのぅ。
「流石は武神様は厳しいですな、この歳でアレだけの動きができれば上等だと思われますが?」
そう告げる彼へダリル様がな首を左右に振りつつ…
「まだまだだ、アレではアンリやカルナ、トームルゼスなどの足元にも及ばぬ。
拙者はコヤツをな、あれら以上に鍛え上げるつもりでござってな、この程度で満足しておっては、とてもとても」っと苦々しげに…
っと、誰じゃ?それ?
名を上げられた者達が誰か分からず首を捻っておるとじゃ。
「いやいや、剣聖アンリ様、紅武者カルナ殿、剣神トームルゼス様などと言う名立たる方々とユウ殿を比較されてもですなぁ。
確かに彼らは武神ダリル様の弟子でありましょうが、些か厳し過ぎでは?」
そう呆れて告げておるの。
っか、そんな方々と、いきなり比較されても困るわえっ!
「いや、拙者の弟子となったゆえには、多少の無理は覚悟して貰わねばなるまいて」
そんな不穏なことをな。
って!
「儂はダリル様の弟子になっておったのですかいのぅっ!」初耳なのですがぁっ!
「何を今更、悟ったように告げておる?
昨日も儂が稽古を付けたではないか」っと当たり前のようにのぅ。
いや、今、悟ったっと言うか、弟子入りした記憶がないのじゃがっ!
っと言うかじゃ、昨日のアレは、明らかに強制じゃったよねっ!
「なっ、なんと!武神様のお弟子とは羨ましいですなぁ。
武神様へ弟子入りを願う剣士は多いと聞き及んでおりますぞっ!
名立たる剣士が弟子入りを断られておるのだとか。
最近では剣豪と名高いサコン・シマ殿の弟子入りを断られたのだとか。
ユウ殿は恵まれておられますなぁ」
そう沁み沁みとのぅ。
いや、恵まれておるのかえ?
まぁ何やら凄い方の弟子となってしもうたことは確かなようなのじゃがの、これは拒否はできまいのぅ。
名立たる剣士達が叶わぬ弟子入りを断りでもしたら、角が立つ所では…参ったわえ。
「しかし…扱う者が少ない魔導銃の使い手でもあるユウ殿が武神様に鍛えられて近接能力もとなりますと、手が負えませぬなぁ」
そんなことをのぅ。
魔導銃は皇国が開発した品で他国には出回っておらぬ品じゃ。
しかも晶石適応のある者にしか扱えぬピーキーさゆえに普及は難しいじゃろう。
リアルにて銃など扱うたことなどない儂じゃからのぅ、最初は命中など全くじゃったわえ。
的に当たらぬのは当然として、遥か手前の地面やら上空や左右へ大幅に…
これは命中するのかえ?などと遠い目になったりのぅ。
それが撃つ度に的へと着弾が近付くのを気付いたゆえ面白くなってのぅ、夢中で撃っておったら当たるようにな。
なにせ魔力をマナ変換して弾を得るゆえに弾は無尽蔵。
さらに儂も魔力と氣を練って魔導銃へ装填して放っておったゆえ、尽きる筈がないわのぅ。
そんな感じで鍛練しておろったゆえか、今では数百メートル先を走っておる野鼠を打ち抜くこともな。
まぁ、儂が目視した物体を追ってゆくゆえ当然ではあるかえ、っと言うかじゃ、儂が感じ取った魔力や氣を元に放たれた弾が飛んで行くでな、意図して外さぬ限りは外れぬと言って良かろうて。
これでも苦労して鍛練したんじゃよ?
「いや、魔導銃なる者は門外漢ゆえに分らぬが、槍刀は駄目であろうの。
流石に拙者では正しく導くことができぬゆえ、サコン殿にユウが扱うと聞き聖蔵麟流のカンム・ウンタン殿へ文を送っておる。
カンム殿とは皇国まで共に旅して来たゆえ、こちらでの逗留先も心得ておったゆえにな。
向かう晶石産地近くの街に構えていると言う知り合いの道場にしばらく厄介になるのだとか。
ゆえに晶石産地にて落ち合えると思うておるのじゃ」
ちょっと待ってくれぬかや!?また押し掛け師匠が増えるのけぇっ!
もうお腹一杯じゃて、勘弁してくれぬかのぅ




