-風に吹かれて-4
三十分くらい経った頃、ルキさんはゆっくり歩いて戻って来た。
「お待たせしてごめんなさいね。症状的には薬草のハレスとチョウカで大丈夫だと思うのだけれど魔法拒否、マギエートも混ざっていますね。あと一つ…混ざっているモノがあるのですが…。私の思っているモノであっているのでしたら打ち消すモノを手に入れるのは難しいですね…」
「どんなに難しいモノでも治る可能性があるのならそれにかけますよ。俺の仲間も苦しみと闘ってるので、俺達にできる事なら何でもやります」
「そう言ってもらえると助かります。それでは薬草の生えているメイディシアの奥の森へと急ぎましょう」
ルキさんはカウンター後ろの壁に立てかけていた短剣を手に取り、腰に巻いてベルトで止めていた。
「メイディシアの奥の森ってさっき通って来た所はメイディシアの森じゃないの?」
「そこもメイディシアの森ですよ。このタンザリーファもメイディシアの森の中にありますから。住人のみなさんは来るまでの道を手前、ここより向こうの森を奥と言い分けているんです」
「へぇ…。でも、何で手前にも薬草はあったのに奥なの?」
「手前はディアントに食べ荒らされていますので思ったより集める事はできません。それに、奥の森の方が薬草は豊富なのですよ」
建物から出ると鍵を閉めて立て札を裏返す。
梯子を下り、入って来た手前から見て右側にある奥の森へと続く道に向かって歩き始めた。
「帝都の人数に合わせて薬草を集める事になりますと相当な量ですよね。私一人では集められそうにありませんので葉を集めるのを手伝っていただけますか?ハレスは葉の裏が赤くなっているので直ぐに分かると思います。チョウカは葉の表と裏が違う向きに波打っています。これも分かりやすいと思います。けれど、マギエートを打ち消す為の薬草、メホイラは毒草と瓜二つなのでそれだけは私が採りますね」
「はーい。頑張りまっす!」
「あ、ボクも負けないからね!」
薬草を入れる為の瓶を渡されて何故か勝負になってしまう二人。
その二人を見てルキさんは何かを押さえているような気もしたけれど優しく微笑んでいた。
ゼロが迷子にならないように見ながら薬草を探す。
多くの薬草は樹の根付近に生えていた。
毒草と間違えないように一つ一つ確認しながら葉っぱを採り続ける。
近くにある葉っぱを採りながら歩いているとY字になる二つの分かれ道に辿り着いた。
だけどルキさんは迷わずに左側へと向かって行った。
右側は高い岩山が見えていた。
位置的にはリジェモーレのグレスタン鉱山の裏側なのだろう。
見上げたグレスタン鉱山にも薬草らしきモノが生えているようだった。
他にも薬草とは違い太陽の光に反射して輝く粉が微かに飛び散って見えた。
ただの花粉が飛び散っているのかと思いながら先に歩く三人について歩き進める。
たまにクルティスと遭遇するだけでディアントとは遭遇する事は無かった。
メイディシアの森の一番奥に着いたのか道は途切れて少し開けた場所に出た。
そこには来るまでの道より多くの薬草があちこちに生えていた。
光が当たっているからでもあるのか大きく育っている。
瓶いっぱいに採り続けているとその場に生えている分は全部無くなってしまった。
「大分採れましたね。ハレスとチョウカはそれだけあれば充分ですね。あとはもう少しメホイラが必要ですね…。さっきの分かれ道まで戻りましょうか」
「ねぇ、ルキさん?さっきの分かれ道の右側ってこっちと何か違うの?」
「いえ、特に変わりはないですよ。あのグレスタン鉱山の付近は影になっている所が多いので思ったほど薬草が生えてなかったりしますね」
「それだったら影の所は薬草が生えて来ないの?」
「陽の当たる所とは成長速度が変わりますけれど、ちゃんと生えますよ」
「生命力って凄いんだね~」
質問攻めをしていた二人は納得したようで頷いていた。




