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Star Dust-Drop-  作者: 鳥海水瀬
.8-枯れない花の言い伝い-
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-枯れない花の言い伝い-18

深くて暗い。

海のように冷たい。

身体が重くて沈んでいる気がする。

動かそうとしても動きはしない。

これが動いているのかも分からない。

ここにいるのは俺なのか?

今の俺は何処にいる?

頭が動かない。

何も分からない。

『やぁ、もう一人の俺よ。こんな所に来てどうしたんだ?』

何かが聞こえる。

俺と同じ声に同じ話し方。

『お前は…誰なんだ?俺自身…なのか?』

『そうさ。俺はお前。そしてお前は俺。お前の中にいる紅の眼を持つ者。こうやって話すのは初めてだろう』

『そう…だな。自分と話し合うのも変な気分だ。一体、此処は何処なんだ…?』

『此処はお前の心の奥深く。誰も干渉できない。俺とお前だけの心の世界』

『心の世界?今、俺はどうなってるんだ?』

『今のお前はただ眠り続けてる。待つ者の呼ぶ声が聞こえるだろう?』

『……聞こえる。行かないと……。でも、身体が動きそうにない』

『焦るなよ。時間が経てば時期に目が覚めるさ。お前は死んではいないんだからな……』

俺に囁いていた声が急に途切れた。

俺は何処に行った?

別の声が聞こえる。

俺の名前を呼ぶ声が。

これはアオイとゼロか?

ナルとナツキの声も聞こえる。

何だか急に身体が軽くなったようだ。

薄ら光も見える。

もう時間だ。

行かなくちゃ。

『もう時間のようだな。元の世界に戻るのか?』

『うん。戻るよ。あまり話せなくてごめんな。また俺達は逢えるか?』

『多分もう無理だろう。これが最初で最後の会話だ。俺がお前の傍にいる証としてこの枷を外そう。お前が無意識に制限していた俺の紅の眼だ。忘れるな。俺達はいつでも一緒だ。お前が生きている限り、俺はお前の中に生き続ける。永遠にな』

『ありがとう。……またな』

『おう。またな。元気でな…俺』

鏡合わせに向き合った。

紅の眼と青黄緑の眼。

交わした握手は最初で最後

握った手を離すと俺は消えた。

呼ばれる声に引き寄せられて光に向かって泳ぎ出す。

「おい、ジュン!目を開けろ!こんな所でお前はくたばる気かよ!」

これはハルトだろうか。

名前でなんて一度も呼んだ事なかったのにな。

光に近づくと泣いてる声が聞こえる。

身体を揺らされてるのか光が揺らぐ。

思いっきり手を伸ばすと心の世界は晴れたように一瞬にして明るくなった。


重たい瞼を開けると直ぐ近くにアオイの泣き顔があった。

力の入らない手を頑張って動かしてアオイの頬を触る。

驚いた顔をしていたけど、俺の手を掴むと嬉しそうな顔になって大粒の涙が溢れ出していた。

「やっと目を覚ましたよ……ジュンのばか…」

「もう……心配したんだからね!」

「動けそうか?」

「あはは…。ごめん、無理そうだ。身体が上手く動きそうにない」

力無く動かす指を見て『そうか』とナルは呟いていた。

『人の子達よ。私の願いを叶えてくれてありがとう。約束通りに綺麗に咲き直した虹陽花を持って行きなさい。そして悲しい思いをさせてすまなかった。お詫びに人の子達の船まで私が送り届けよう』

「ありがとうございます、タオニス。……とても助かります」

ナツキが一輪の虹陽花を摘み取り、ナルが俺を背負うとタオニスの背中に乗って地上へと向かって降りて行った。

『それでは人の子よ。さらばだ。また逢おうぞ』

別れの挨拶を終えると、タオニスは塔の最上階まで飛んで行ってしまった。

みんなは疲れきった身体を引きずるようにナルの船に乗り込んだ。


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