前途多難過ぎる恋 24
やたらレジィが熱意たっぷりに訴えてくるので、ロットーは『まさか』と思いながら一応レジィに聞いてみる。
「レジィ、まさかフィニア王女の事好きになった?」
「ほぅえっ!」
ロットーのいきなりな発言に、レジィはまたわかりやすい反応をする。急速に顔を赤くさせて、「そそそ、そんな僕、そんなつもりじゃわああぁぁぁ!」と激しく混乱し始めた。そのレジィの様子に、ロットーは驚きながらも確信する。
「うわぁ……マジですか……」
「駄目ですロットーさん! ご、誤解です! 確かにフィニア王女って可愛くてちょっと僕に似てうっかりなとこもあって、親近感湧くっていうか……あと僕みたいなクズにも気を使ってくれるほど凄い優しいし、なんか天使さまみたな方ですけど、でもだから僕なんかが好きになってもどうこう出来るって方じゃないですし……」
「ホントに好きなんだ、フィニア王女の事が……アレがいいのか……へぇ……」
「うわあああぁぁぁあぁぁああぁぁっ! ロットーさん、そんなはっきりと言わないでくださいぃ! は、恥かしいですから!」
また一段と面倒なことになったと頭を抱えそうになるロットーを尻目に、レジィはひたすらあたふたしながら「だって、でも、王女様ですし! ぼ、僕なんかにはそもそも雲の上の上の上の人で……はわわわわわっ!」とか言っている。ロットーは深い深ーい溜息を吐き、イシュタルに恋したフィニアと似たような恋症状の出ているレジィにこう言った。
「そうだよね。そもそも王女はイシュタル王子とほとんど結婚決まってるようなお見合いの真っ最中だしね」
「はぐっ……! ……勿論それはわかってます。僕なんかが、所詮……はぁ」
ロットーが現実を呟くと、レジィは途端に意気消沈して肩を落す。がっくりと頭を垂れて落ち込むレジィがちょっと気の毒に思えたロットーは、つい彼にこんな事を言ってしまった。
「えーっと……レジィ、フィニア王女って実は寂しがりやなんだよね。それでいてちょっと人見知りでさ、本当は色んな人と話をしたいけどなかなかそれが出来ないみたいなんだ。でも今日見てたら、王女ってレジィには結構緊張しないで話してるように見えたんだよね。そういう緊張しないで話が出来る話し相手がいると彼女も喜ぶと思うから、是非ここにいる間暇な時でいいから王女の話し相手になってあげてよ」
色んな意味でレジィの恋は応援もオススメも出来ないロットーなので、『話し相手くらいだったら大丈夫かな』と思ってそう言ってみる。そんな言葉程度で彼が元気になるとは当然思っていなかった、が……
「え、いいんですか!? それはもう、王女様とお話ししていいって許可があるなら、あの、是非!」
なんだか予想以上にレジィが元気になったので、ロットーはちょっと驚きながら「話し相手くらいなら」と念を押すように言って頷く。レジィはやはり嬉しそうな笑顔で、「わーい、ありがとうございます!」と言って無邪気に喜んだ。
「あれ、別に話し相手なら問題無いよな……?」
誰に言ってるのか不明だが、ロットーは予想以上に喜ぶレジィの反応に不安になってそう呟く。フィニアもどうせイシュタル一筋だから、レジィに浮気なんてしないだろうし。
「そもそも王女はアレだしなぁ……」
「ロットーさん?」
「あ、いや何でもないよ! あっはは!」
◇◆◇
今日も珍しくフィニアは早起きだった。早起きなのは、ゆっくり寝ていられるほど心に余裕がなかったからだ。
まだ朝の空気がひんやりと心地よい時間、彼女は城の庭をうんうん唸りながら散歩する。彼女を難しい顔で悩ます原因は、やはりイシュタルだった。
「イシュの好きな異性のタイプかー……聞くのなんか怖いなぁ」
どう考えても自分は当てはまらないだろうと、そんな考えが常に頭の中を占領してフィニアを悩ます。そういうのは聞いてみないとわからないということもわかっていたが、しかし自分に自信が無さ過ぎるフィニアはそれを聞いたらトドメを刺されるような気がして、聞く前から怯えていた。
「はぁ……でもロットーからのアドバイスだし、聞かなきゃなぁ……」
フィニアがそんなこんなでうだうだ悩んでいると、少し遠くからなにやら話し声が聞こえてくる。『召使さんがお話ししてるのかな?』と思ったフィニアは、何となく好奇心で話し声のする方へと向かった。
フィニアが声のする方へ向かうと、そこで予想外の光景を目の当たりにする事となる。