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星屑シネマの七番スクリーン  作者: パラレルワールドの住人


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8/12

星屑のシネマ ― 晴れのち、雨

今回は初めて晴れの日に当館が現れました。

そんな幸運な皆様のための1本です。

まもなく上映開始です。

星がよく見える夜だけ、その映画館は現れる。


空を見上げれば、雲ひとつない夜。


その下に、ぽつんと灯る看板。


「星屑のシネマ」


日向晴人ひなた はるとは、昔から“晴れ男”だった。


遠足も、旅行も、デートも。


大事な日は、だいたい晴れる。


「お前がいると安心するわ」


友達にそう言われて、笑っていた。


社会人になってからも同じだった。


プレゼンの日も、イベントの日も。


なぜか天気は味方してくれる。


「運だけはいいよな、お前」


同僚に言われても、どこか他人事みたいだった。


そんなある日。


仕事帰りの夜。


ふと見上げた空に、星があふれていた。


その下に、見慣れない建物。


「星屑のシネマ」


なんとなく、中へ入る。


館内は静かで、天井には無数の小さな光。


まるで夜空の中にいるようだった。


支配人が、チケットを差し出す。


『あなたが、雨を連れてきた人生』


「……なんだそれ」


晴人は少し笑う。


席に座る。


上映が始まる。


最初に映ったのは、同じ朝。


同じ部屋。


同じ自分。


違うのは——窓の外。


雨。


「は?」


その日、大事なプレゼン。


外は土砂降り。


電車は遅れる。


スーツは濡れる。


“向こうの自分”は、焦りながら会社へ向かう。


結果は——失敗。


「最悪じゃん」


思わず呟く。


だが、映像は続く。


次の日。


また雨。


その次の日も。


外に出るたびに、天気が崩れる。


「……嘘だろ」


友達との約束も、雨。


デートも、雨。


イベントも、中止。


「お前さ、ほんとタイミング悪いな」


笑いながら言われる。


その顔が、少しだけ引きつる。


“晴れ男”だった自分が、“雨を呼ぶ存在”になる。


少しずつ、人の反応が変わる。


「またお前かよ」

「今回も雨?」

「運ないなあ」


冗談のはずなのに、どこか刺さる。


さらに時間が進む。


“向こうの自分”は、少しずつ変わっていく。


天気を気にしなくなる。


どうせ雨だから、と最初から思う。


傘を常に持つ。


濡れることに慣れる。


そして——


誰かのために、予定を調整するようになる。


「どうせ俺のとき雨だから、日程変えとく?」


自分が外れることで、誰かの予定が晴れる。


そのとき、“向こうの自分”は少しだけ笑う。


その笑顔は——


前とは違う種類のものだった。


あるシーン。


後輩が大事なプレゼンの日。


“向こうの自分”は、あえて別の現場に行く。


その日、空は晴れている。


後輩が、成功する。


「ありがとうございます!」


その言葉に、“向こうの自分”は軽く手を振るだけ。


帰り道。


ひとりで歩く。


空からは、やっぱり雨。


でも——


少しだけ、穏やかな顔をしている。


上映が終わる。


晴人は、黙ったままだった。


「……地味だな」


小さく言う。


でも、どこか引っかかる。


支配人が言う。


「あなたは、晴れの日に助けられてきました」


「……まあな」


「彼は、雨の日で誰かを助けています」


言葉が止まる。


晴れは、自分にとって都合がよかった。


雨は、不運だと思っていた。


でも——


それを“使っている”自分が、そこにいた。


外に出ると、空には星。


晴人は、少しだけ見上げる。


「……どっちがいいんだろうな」


そのとき、風が吹く。


遠くで、雲が流れる。


雨になるかもしれないし、ならないかもしれない。


晴人は、ポケットに手を入れて歩き出す。


傘を持つかどうかも決めないまま。


その夜、空がどう変わったのかは——


誰にも分からなかった。


星屑のシネマは、またどこかで現れる。


運がいい人生と、

運を使う人生。


その違いを、静かに映すために。

いかがでしたでしょうか。

晴れるかどうかの小さいことにも幸運であったり雨が降っていようが人に感謝される不思議なことですが

自分にしかできない能力だと思うと少し鼻が高くなりますよね

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