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第二十四話:三つ巴の救出作戦

アルフレッドの情報によって、

セシリアを誘拐した犯人が判明。

王都の裏社会のボスを欺くため、

やちるたちは、ついに救出作戦を開始する。


交渉と潜入。

二つの作戦が同時進行する中、

やちるは、自分の酒を巡る陰謀の

中心へと足を踏み入れる――。


王都と町を結ぶ街道を、一台の馬車が駆けていた。


馬車の中には、やちるとアルフレッドの二人が向かい合って座っている。

アルフレッドは、上質な貴族の衣装に身を包み

やちるは、店主としての清潔感のある服を着ていた。


「いいか、やちる。奴らは傲慢だ。こちらの提案を、簡単に受け入れるとは思わん。

 だが、奴らは金と権力、そして『最高の酒』に目がくらんでいる。そこを突く」


アルフレッドは、やちるに冷たい視線を向けた。


「貴様は、その酒の味を語り、奴らを惹きつけろ。その間、私は交渉を有利に進める。

 セシリアを人質にとっている奴らを、私たちがどう出るか探っているはずだ。

 こちらの要求を飲まざるを得ない、という状況を作り出す」


「はい。分かりました」


やちるは、緊張した面持ちで頷いた。

セシリアを救うため、彼は、自分の酒の魅力を最大限に伝える覚悟を決めていた。


「……それにしても、貴様はリリアーナと、一体どういう関係なのだ?」


アルフレッドは、不意にやちるに問いかけた。

その声音には、依然として冷たさが残っている。

やちるは、アルフレッドの視線から逃げることなく、まっすぐに彼の目を見つめた。


「リリアーナさんは、俺にとって、かけがえのない仲間です。そして、最高の従業員です」


やちるは、自分の正直な気持ちを伝えた。


「それだけか? リリアーナは、君のために、貴族の身分を隠し、店で給仕をしていたのだぞ?」


アルフレッドは、やちるの言葉に不満げな表情を浮かべた。


「違います、アルフレッドさん。リリアーナさんは

 自分の意思で、この店で働いてくれているんです。

 それに……アルフレッドさんのことは、ここ数日、さんざん聞かされていますから」


「……何だと?」


やちるは、アルフレッドの戸惑う顔を見て、フッと笑った。


「リリアーナさん、いつも『アルフレッドは優秀なんだ』

『アルフレッドは、私のことをいつも心配してくれている』って

 嬉しそうに話してくれているんです。

 だから、俺は、アルフレッドさんのような立派な婚約者が

 リリアーナさんのそばにいてくれて、本当に良かったと思っています」


やちるの言葉に、アルフレッドは、一瞬、絶句した。

そして、彼の顔から、これまでの冷たさが消え失せ

代わりに、戸惑いと、わずかな安堵の表情が浮かんだ。


「……そうか。彼女が、そんなことを……」


アルフレッドは、照れくさそうに呟くと、やちるから視線を外した。

彼のやちるへのあたりが、目に見えて軽くなった。


「フン……。まともな答えだ。だが、私のリリアーナに怪我でもさせたら、タダではおかないぞ」


アルフレッドは、そう言い捨てると、窓の外に視線を向けた。

彼の言葉の裏には、やちるへの敵意と、リリアーナへの深い愛情が感じられた。


やがて、馬車は王都の裏ギルドが経営する酒場の前に着いた。

表向きは、豪華絢爛な大衆酒場だが、その入り口には、明らかに柄の悪い男たちが立っている。


「アルフレッド様、お待ちしておりました」


男たちは、アルフレッドの顔を見ると、深々と頭を下げた。

アルフレッドは、やちるを伴い、堂々と酒場の中へと入っていった。


酒場の奥にあるVIPルームには、一人の男が座っていた

その男こそ、王都の裏社会のボス、ゼルドだった。


彼は、豪奢な衣装を身にまとい、下卑た笑みを浮かべていた。


「これはこれは、アルフレッド様。まさか、このような場所においでになるとは。

 それに、そちらの若者は……?」


ゼルドは、やちるを品定めするような目で見た。


「ゼルド殿。この男が、私が以前お話しした、最高の酒を造る料理人だ。

 彼の酒を、我々の酒場で独占的に扱うための交渉に来た」


アルフレッドは、冷たい口調で告げた

ゼルドの顔に、下品な笑みが浮かんだ。


「ほう。それが、あの噂の酒を造る男か。

 いやはや、ご丁寧に。では、さっそく交渉に入ろうか」


アルフレッドとゼルドが交渉を始める中

やちるは、VIPルームの豪華な装飾品に目を奪われていた。

彼は、アルフレッドの言葉通り、奴らを惹きつけるため

自分の酒の魅力を語り始めようと、深く息を吸い込んだ。


---


その頃、町の外れの廃墟では、リリアーナたちが潜入作戦を開始していた。


リリアーナは、キッドの父親である町の裏社会のボスから

提供された地下のルートから、廃墟へと足を踏み入れた。

キッドの父親は、昔気質の正義のヤクザということもあり、

王都の裏社会が町の平穏を脅かすことを許さず、協力を申し出たのだ。


「リリアーナさん! こっちですニャ!」


キッドは、見た目こそ猫の獣人であるが

その実は犬と猫の獣人のハーフである。

その優れた嗅覚を活かし、セシリアの残り香を追跡していた。

彼は、地面に鼻をつけ、正確な方向を指し示していく。


「すごいわね、キッド君。助かるわ」


リリアーナは、キッドを褒めると、彼の後を追った。

ミルドも、ゴーレムを使い、地下に仕掛けられた罠や、魔力の痕跡を解析していく。

そして、ガルムとリーファは、リリアーナたちの護衛として、周囲を警戒していた。


「しかし、キッドの奴、父親が裏社会のボスだとは知らねぇんだろ?」


ガルムが、リーファに小声で囁いた。


「そうみたいだね。でも、お父さんの気持ちも分かる気がするな。

 子供には、知られたくないことって、あるもんね」


リーファは、優しく微笑んだ。


地下は、迷路のように入り組んでおり、所々に裏ギルドの見張りが立っていた。

しかし、リリアーナの剣術は、S級冒険者としての圧倒的な力で、見張りを次々と打ち倒していく。

ガルムとリーファも、彼女をサポートし、スムーズに地下の奥へと進んでいった。


「リリアーナさん! この先に、セシリアさんの匂いが強く残っていますニャ!」


キッドが、ある扉の前で立ち止まり、興奮した様子で叫んだ。


「分かったわ! みんな、準備はいい!?」


リリアーナは、剣を構え、扉を見つめた。

その瞳には、セシリアを救い出すという、強い決意の光が宿っていた。


「リリアーナさん! この先に、セシリアさんの匂いが強く残っていますニャ!」


キッドが、ある扉の前で立ち止まり、興奮した様子で叫んだ。

リリアーナは、剣を構え、扉を見つめた。

その瞳には、セシリアを救い出すという、強い決意の光が宿っていた。


「みんな、準備はいいな!」


リリアーナが声をかけると、ガルム、リーファ、キッドが頷いた。

ミルドは、ゴーレムを操り、扉の鍵を解析する。


「この扉、魔法で厳重にロックされています……。

 でも、大丈夫です! 私の魔法で、すぐに解除できます!」


ミルドが、魔法の術式を展開し、扉に触れると、カチャ、と小さな音を立てて鍵が開いた。


「よし! 入るぞ!」


リリアーナが、扉を勢いよく開けると、その先には、薄暗い部屋が広がっていた。

カビ臭く、湿った空気が一行の顔を叩く。

部屋の中央には、粗末な木製のベッドがあり、そこに一人の女性が横たわっていた。


「セシリア!」


リリアーナが叫ぶと、女性がわずかに身じろぎした。


「セシリア! 私よ、リリアーナよ!」


リリアーナが駆け寄ると、セシリアはゆっくりと顔を上げた。

その瞳は虚ろで、焦点が定まらず、リリアーナの姿を捉えられていないようだった。


「キッド! 見ちゃダメ!」


リーファの悲痛な叫び声が響いた。

キッドが、セシリアの元へと駆け寄ろうとしたその瞬間、リーファが彼の目を覆い隠した。

キッドは、何が起こったのか分からず、ただただ戸惑うばかりだった。


「……これは、ひどい」


ガルムが、その場で言葉を失った。


そこに横たわっていたのは、たしかにセシリアではあったが

その瞳には、かつて見た情熱的な光は宿っておらず、虚ろで、焦点が定まっていなかった。


彼女の体は、薬漬けにされたのだろうか。

わずかに震え、かすかに呼吸を繰り返すだけで、意識は朦朧とし、まるで廃人のようだった。

リリアーナが声をかけても、セシリアは反応せず、ただ虚空を見つめるばかりだった。




一方、VIPルームでは、アルフレッドとゼルドの交渉が続いていた。


「この酒の独占権を、我々に譲っていただけるのなら

 アルフレッド様のご要望を、全て叶えましょう」


ゼルドが、下卑た笑みを浮かべながら言った。

アルフレッドは、冷たい目でゼルドを見つめた。


「ゼルド殿。この酒は、単なる酒ではない。

 この酒には、この世界の常識を覆す、奇跡の力が宿っている。

 その力を、貴殿のような男に独占させてなるものか」


アルフレッドが、そう言い放った瞬間、VIPルームの扉が勢いよく開いた。


そこに立っていたのは、アルフレッドの私兵を率いた男だった。

男は、ゼルドに深々と頭を下げると、アルフレッドに声をかけた。


「アルフレッド様、準備が整いました」


「うむ。ご苦労」


アルフレッドは、そう答えると、ゼルドに向き直った。

ゼルドの顔から、下品な笑みが消え失せた。


「な、なんだ、これは……?」


ゼルドは、恐怖に震えながら、アルフレッドを見た。


「聞け、下郎。私は、王都の三大貴族、グレンデール公爵家の嫡男、アルフレッドだ。

 そして、この酒場の裏社会のボス、貴様を、リリアーナの友人を傷つけ

 悲しい顔をさせた罪で確保しに来た」」


アルフレッドは、そう言い放つと、私兵たちに指示を飛ばした。

私兵たちが、一斉にゼルドに向かって剣を向けた。


「ま、待て! 貴様、私を誰だと……!」


ゼルドが叫んだが、私兵たちは、彼の言葉を聞く耳を持たない。

ゼルドは、抵抗することなく、私兵たちに捕らえられた。



セシリア救出作戦が開始され、

リリアーナたちは、ついに

セシリアの監禁場所へと辿り着く。

次回、衝撃の真実が明らかに!

そして、セシリアの運命は!?

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