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第十七話:最高のビール、そして極上の酒肴!

セシリアとの対決を前に、

『転生亭』では「最高のビール」が完成!

だが、勝負には「最高の料理」も不可欠。

やちるが選んだのは、前世の記憶を呼び覚ます「焼き鳥」!

常連客との協力で、異世界に「炭」が生まれる――!



『転生亭』の地下醸造所には、芳醇な香りが満ちていた。


数日に及ぶミルドの厳密な指導と、「発酵魔法」を駆使した緻密な温度管理、

そしてやちるたちの根気強い試行錯誤の末、ついに「最高のビール」が完成したのだ。

ダンジョン3層で手に入れたスターの実の豊かな風味と、マナの湧水の清らかな口当たり、

そしてウンディーネの微生物がもたらす低温での安定した発酵が、

これまでの常識を覆す、冷たくて、コクとキレのある、まさに奇跡の一杯を生み出していた。


「やちるさん! 見てください! この泡立ち、この色合い!

  そしてこの香り! 私の計算通りです! いや、計算以上かもしれません!」


ミルドは興奮のあまり、眼鏡をずらしながらビールの入ったグラスを掲げた。

リリアーナも、一口飲むと静かに目を見開き、満足げに頷いた。


「……美味い。これなら、エルドリック様も唸るだろうな」


やちるもグラスを傾け、その冷たさと喉越しに感動する。


「ああ……これだ。これだよ、俺が求めていたビールは!」


最高の酒が完成し、やちるは安堵のため息をついた。

しかし、すぐに別の課題が頭をよぎる。

収穫祭での対決には、「最高の料理」も不可欠なのだ。


「酒はなんとかなった。あとは料理だけど……」


やちるが呟くと、リリアーナが腕を組みながら言った。


「料理なら、これまでの『モグトカゲのサクサク揚げ』や

 『苔きのこの朴葉味噌焼き』で十分勝負できるだろう。

 町の人々にも好評だし、領主様も気に入っておられる」


確かに、これまでの『転生亭』の料理は、どれもこの世界の人々を驚かせ、魅了してきた。

しかし、やちるには、最高のビールに合わせたい、もう一つ特別な料理があった。

それは、前世の居酒屋では定番だった、あの香ばしい「焼き鳥」だ。


「いや、リリアーナさん。最高のビールには、最高の相棒が必要なんだ。

 俺には、どうしても作りたい料理がある」


やちるは、熱い眼差しで二人に告げた。


「……焼き鳥だ」


「焼き鳥、ですか?」


ミルドが首を傾げる。

この世界にも鳥肉は存在するし、焼いて食べることもある。

だが、やちるが言う「焼き鳥」のイメージとは、どこか違うようだった。


「この世界の焼き鳥は、魔法で起こした火で焼くことが多いから、

 どうしても香りや、香ばしさも足りないんだ。俺が作りたいのは、

 『炭』の熱でじっくりと火が通り、独特の香りがつく焼き鳥なんだ!」


やちるは力説する。

しかし、この世界では、魔法で簡単に火が出せるため、

「炭」という概念がほとんど普及していなかった。


「炭、ですか……。木を不完全燃焼させることで作れる、

 という理論的な知識はありますが、実際に大規模に、

 安定した品質の炭を作る経験は、私にもありませんね……」


ミルドも眉をひそめた。


その時、店の奥から、ガルムの豪快な笑い声が聞こえてきた。


「なんだ、マスター! また面白いこと考えてるのか!

  炭だと? 俺たちに何か手伝えることはねぇか?」


ガルムの隣には、優雅なエルフのリーファと、元気いっぱいの獣人の少年キッドがいた。

彼らは、やちるの話に興味津々といった様子で、カウンターに身を乗り出していた。


「ガルムさん! リーファさん、キッドくんも!

 実は、最高の焼き鳥を焼くには、どうしても『炭』が必要で……」


やちるが事情を説明すると、ガルムは腕を組み、リーファは顎に手を当てて考え込んだ。

キッドは目を輝かせている。


「炭か……。そういや、昔、森の奥で、雷が落ちた木が、

 妙に黒くなって、いい匂いがしたことがあったな!」


ガルムが記憶を辿る。リーファも口を開いた。


「木材の種類によっては、燃やし方で性質が変わる、という古文書を読んだことがありますわ。

 もしかしたら、マスターの言う『炭』に繋がるかもしれません」


「僕、木登り得意だよ! どんな木でも見つけてくる!」


キッドが元気よく手を挙げた。


常連客たちの意外な知識と協力の申し出に、やちるの顔に希望の光が灯る。

ガルムの経験と、リーファの知識、そしてキッドの行動力が合わされば、

不可能ではないかもしれない。


やちるたちは早速、町の外れに小さな炭焼きの釜を試作し、

常連客たちと共に適切な木材を探し始めた。

街の門番で、毎日のように『転生亭』に顔を出している常連客のマルコも、

良質な木材の場所を案内してくれるなど、町の人々の協力も得られた。


そして数日後。

試行錯誤の末、ついに『転生亭』の裏庭に、火にくべられた良質な「炭」が完成した。

パチパチと音を立てながら燃える炭からは、

懐かしく、そして食欲をそそる香ばしい香りが立ち上る。


「できた……! これで、最高の焼き鳥が焼ける!」


やちるは感動に打ち震えながら、完成した炭を見つめた。


早速、やちるは鶏肉を串に刺し、完成したばかりの炭火で焼き始めた。


ジュー、という音と共に、肉から滴り落ちる脂が炭に落ち、香ばしい煙が立ち上る。

遠赤外線効果でじっくりと火が通り、肉の旨味が凝縮されていく。


「う、美味そう……!」


リリアーナも、ミルドも、そして協力してくれた常連客たちも、その香りに目を輝かせた。

やちるが焼き上げたばかりの焼き鳥を差し出すと、皆、熱がるのも構わずかぶりつく。


「んんんんっ! なんだこれ!? 外はパリッと、中はジューシーで、香りが……!」


ガルムが唸る。

リーファも優雅な仕草を忘れ、目を閉じてその味を噛み締めた。


「この香ばしさ……!

 そして、肉の旨味が最大限に引き出されていますわ! これが、炭火焼き……!」


キッドは、言葉も出ない様子で、しっぽをぶんぶん振りながら、次々と串に手を伸ばしていた。


最高のビールと、それに合う最高の焼き鳥。

やちるは、完成した料理と酒を前に、収穫祭での対決に向けて、確固たる自信を深めた。


「最高のビール」が完成し、

次なるは「最高の料理」!

やちるが選んだのは、前世の味「焼き鳥」!

しかし、この世界には「炭」がない!?


常連客たちの協力で、

異世界に奇跡の「炭」が誕生し、

極上の焼き鳥が完成!


収穫祭でのセシリアとの対決、

『転生亭』の準備は万端!

どうぞお楽しみに!

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