その8 盗賊退治2
「たっだいまー・・・あれ?」
汗をかいて戻ってきたバスターはとある変化に気づいた。
バスターたちは今一軒家を借りている。ここでは中に入ってすぐ靴を脱ぐ玄関がある。彼が気づいた違和感は靴の数だ。彼が早朝出かける前にはなかった靴がひとつ増えている。
「見た感じ女の子っぽいな・・・まさか、グードに彼女が?!」
バスターは靴を脱ぐとダッシュでリビングへと向かう。
「ちょっとグード!誰よその女!」
バスターの修羅場声がリビングに響く。
しかし、エルフィーヌの顔を見た瞬間一気に冷めた。
「なんだ、お前か」
「ちょっと、なんだとは何よ!」
エルフィーヌが怒る。しかしパワードの時とはちがい、声は大きいが少し震えており、またその顔はさっきより熟れたリンゴように赤くなっていた。
「何しにきたんだよ」
「依頼よ、依頼!」
エルフィーヌはバスターにも説明をした。
「・・・なるほど、その男とその彼女を助けるんだな?」
理解したバスターは紅茶を飲む。
「なぁパワード、なんかこの紅茶薄くね?」
「お前のは9番搾りだ」
「マジかよ・・・」
「それでどうするの?助けるといっても2人は別々の場所にいるんでしょ」
メイシンはバスターを無視して話を進める。
「いいえ、ジャスミンは早く助けないといけないわ。でもグレボも早く助けないと明後日ぐらいに公開処刑されちゃうわ。」
「罰が重すぎない・・・?」
グードの疑問を流しつつエルフィーヌは続ける。
「彼今装備なしだから自分を証明するものが無いわ。このままだと彼は人に化けた魔物と認識されちゃうのよ。だから私たちが彼の身分を証明しに行かないといけないわ。あんた達勇者パーティーが来てくれたら信用してくれると思うし。そしたら、罰も軽くなるはずよ」
「じゃあ、ジャスミンを助けるチームとグレボを助けるチームで行くってことね」
「どう分ける?やはり盗賊退治が3人か?じゃあ、俺とグードで退治に行くか」
パワードが身を乗り出す。
「はぁ?私とグードが一緒に決まってるでしょ?」
メイシンが睨みつける。
しかしここでエルフィーヌが割って入る。
「いいえ、それぞれ3人ずつで行ってもらうわ。私が盗賊のところまで行って、牢獄にはグレボの生き別れの妹を証人として行かせるわ」
「生き別れの妹を証人って・・・」
「だからあとはあんた達4人が2人ずつにわかれてもらうわよ」
エルフィーヌは上の面に手を入れる穴のある四角い箱を取り出した。
「公平にクジで決めなさい」
そう言うと彼女は真っ先にメイシン、その次にパワード、そしてバスターとグードというような順番でクジを引かせた。
その結果、メイシンとパワードがグレボを迎えに、バスターとグードがエルフィーヌと共に盗賊からジャスミンを救い出すということになった。
「よっしゃー!グードと一緒じゃん!」
「がんばろうね。バスター、エルフィーヌ」
「グードよろしくー!」
エルフィーヌはまたグードに抱きついた。
「足引っ張んなよ」
バスターがエルフィーヌに向かって言う。
「フ、フン!あんたこそ足引っ張んないでよね!」
エルフィーヌの顔はまた赤くなり、恥ずかしそうに目をバスターからそらしてグードさらに強く抱きしめた。
「く、苦しい」
「ちょっと、そろそろグードから離れなさいよ」
メイシンはエルフィーヌをグードから再度引き剥がした。
全く、バレバレなんだから・・・
メイシンとパワードとグードは彼女がバスターが好きなことに気づいていた。彼の前でだけ明らかに照れているからである。
このことをバスターは気づいてない様子だった。今もグードと一緒になったことに喜んでいる。彼女のことは眼中にないらしい。
「おいバスター、グードとエルフィーヌのことちゃんと守ってやれよ。特にグードに怪我させたらお前の飯だけ辛さ100倍にするぞ」
パワードがエルフィーヌに聞こえないようにそっと言う。
「エルフィーヌは大丈夫だろ。グードのことは任せておけ!新しく買った武器で守るからよ!」
バスターは先日買ったソード剣を指差す。
「お前、あれ使うのか?」
「おうよ、デビュー戦だぜ!」
少し心配するパワードだった。
ふふ、やったわ・・・
計画通りね・・・
エルフィーヌは4人に背を向けてめちゃくちゃゲスい顔している。
実はさっきのクジでいかさま・・・はしてないがこの組み合わせになるよう強い念を込めていた。
メイシンたちはエルフィーヌがバスターのことが好きで彼とくっつきたいと思っていると考えていた。しかしながら、実際は少し異なっていた。
彼女はグードはもちろんバスターにも恋している。だが、グードやバスターと彼女自身がくっつきたいというのは少し違っていた。
エルフィーヌはグードとバスターは自分のことが好きだと思い込んでおり、彼女の理想は2人が彼女を奪い合いながらバスターとグードがくっつくというものである。そう、彼女は欲張りなのだ。
こうして3人になればグードとバスターが自分を取り合ってくれる。後は2人をくっつけるだけだ。彼女はそう考えていた。
「でも、盗賊なんてどこにいるかわからないんじゃない?」
グードの質問に答えるべくエルフィーヌはヨダレを拭って4人の方を向いた。
「大丈夫よ。あの依頼者には最後にこう書いてあったわ。」
俺は襲われた瞬間、自分の服に位置情報発信道具を包んだハナクソをつけておいた。そこを辿れば多分場所が分かるはずだ。俺の装備品も彼女とともにとりかえしてくれたらその値段分を報酬として渡すよ。
「そこの位置はわたしが分かるから案内するわ」
「よし、じゃあお前らヘマすんなよ!」
「おう!」
「もちろんよ」
「オッケー」
こうして勇者一行は二手に分かれてそれぞれ目的地へと向かった。
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