その5 買い物2
メイシンとグードは横に並んで賑やかな市場を歩く。
「ね、手繋いでいい?」
メイシンは一回り小さいグードを見ながら言った。
「どうしたの?急に」
「いやー、こんな人混みがすごいと私が迷子になりそうだし・・・ダメ?」
「いや・・・」
この見た目だとどう考えても迷子になるのはオレの方だし、こんな背中に大きい風船あったら目立つから大丈夫でしょ。そう思いつつグードは彼女の手をとった。
すると余程嬉しかったのか、彼女の顔は抑えているようだが、輝くような笑顔が溢れていた。
もちろん、グードが目立って注目されるといけないため、メイシンはさりげなく手を繋ぎ、2人は市場を歩いた。
「お前、それ本当に買うのか?」
パワードは無駄遣いをさせまいとバスターを説得する。バスターはすっかり剣と斧のハーフアンドハーフの武器に心を奪われていた。
「だってよ、こんな夢の武器あるかよ。なぁ、これなんて言う武器なんだ?」
彼の問いかけに店員は眼鏡を再度上げる。
「その武器に名はありません。適当につくったやつだし。あなたに名をつけていただきたい」
「おい、今適当につくったって言ったぞ」
しかし、バスターには聞こえていない。
「俺が名付け親に・・・!よし、こいつはソード斧だ!」
「じゃあ、俺は先に戻っておくぞ」
止めるのは諦めよう、そう思いパワードは1人先に武器屋を出ていった。
「しかもお客様、これにはすごい機能があるんです」
店員はまた眼鏡を上げる。
「なに!?」
「この武器の斧の部分、取り外せるんですよ」
「ホントか!」
早速彼は武器の刃の斧の部分を引っ張る。するとスポッと斧の部分だけが取れた。
「す、すげぇ・・・」
バスターは彼の中で驚きと興奮に包まれた。
「戦闘中にこれをとって敵に投げるもよし、武器を振ってその勢いで飛ばしてもよし、素晴らしい品です。」
「おぉ・・・」
しかし、バスターはとあることに気づいた。
「でもこれ、投げたら回収しないといけないんでしょ?」
店員はその言葉を待ってましたと言わんばかりにまたメガネをあげる。もうメガネは彼の額にまで昇っていた。
「そう思うじゃないですか?しかしこれすごいんです。なんと、投げた斧が戻ってきちゃうんです!」
「え、どういうこと!?」
店員はさらにメガネを上げる。
「この武器実は特殊でして、投げた斧が使用者の魔力を使うことで所定の位置にまで戻ってきちゃうんです!だから、回収する必要も予備の斧の刃も必要無いんです!」
「えー、じゃこれ1つで投げ放題ってこと!?中距離や空を飛んでいる魔物にも対応できるじゃないか!」
店員はさらにメガネを上げる。もうレンズは頭頂部まできていた。
「こちら現品限りなので早い者勝ちですよ、いかがですか?」
「・・・・・・」
何を考えていたのか少しバスターはソード斧を見つめていた。
「パワード、俺これ買うわ!」
バスターは振り返ったがそこにパワードの姿は無かった。
「あっ、そうだ」
グードは膨らんだカバン・・・ではなく腰につけた魔法の収納袋をあさり出した。
「どうしたの?」
メイシンは振り返り、急に立ち止まったグードを見る。
「あった!・・・はい、これあげる」
「えっ、これって・・・」
グードが差し出したその手には金色の腕輪があった。
「買うもの特になかったからこれ買っちゃった・・・ほら、お揃い!」
小さく目立たなかったため今まで気づかなかったが、グードの腕にも同様の金色の腕輪があった。
お、お揃い・・・!
メイシンはグードの優しさと、お揃いということの嬉しさからついに最高の笑みが顔から出てきた。
「ありがとうーグードー!」
小声だが、メイシンは感極まって涙目になっていた。しかし、本当は彼女は抱きついて「大好き!」と言いたかったが、外でやるとグードが目立ちそこからパーティー離脱につながりかねないため気持ちをぐっと抑えた。早速彼女は自身の腕に腕輪をつけた。
しかし、嬉しさが抑えられなかったのか口角が上がりっぱなしだ。
「お礼に、なんか買ったげようか?」
「えっ、じゃあ・・・あれ!」
グードの指差す先にはプリンのお店があった。プリンザードマンを使っていると書いてある。
「オーケー、あれね!」
嬉しくて舞い上がっていたのかメイシンはグードの手をとり引っ張るように店に向かった。
「いらっしゃい!当店はプリンザードマンを使ったプリンだよ!」
店のカウンターから少しぽっちゃりしたおじさんらしき人が呼びかける。
「へぇー、プリンザードマンの卵を使ったプリン・・・えっ!」
メイシンは思わず目を見開いた。所詮プリンなどと思っていたが予想より値段が高い。2個買うと彼女の今月のお財布が寂しくなるほどだった。
だが彼女の隣ではグードの目が輝いている。
「す、すごい・・・これ養殖じゃないんですか?!」
「もちろん、うちは天然のプリンザードマンしか使ってないよ!まあ、そもそもあいつらは人を襲うこともあるくらい凶暴だから育てられないけどね・・・だから強い人に依頼してとってきて貰っているんだよ」
「美味しいそう・・・」
グードの心から欲しているような横顔を見て決心したのか彼女はとある作戦にでた。
「このプリンとっっても美味しそうですね・・・あの、おねがいがあるんですけど、プリン1つ買うからもう1つおまけして欲しいな〜」
そう、おまけしてもらう作戦である。彼女は自身のルックスに多少自信があるらしく、普段はほとんどやらないがここぞという時(大体グード絡み)にこのおねだり声によるこの作戦を使うのだ。これにより大体おまけや値切り交渉がうまくいく。
しかし、今回の店主は顔色ひとつ変えなかった。
「ダメだよ。ちゃんとお代はもらうからね」
だが彼女は退かない。カウンターに両肘を立て、顔を手に乗せて全力の上目遣いをする。
「お願ーい、お・じ・さ・ま」
彼女の目からキラキラと視線が飛ぶ。
店主は顔を変えずに言った。
「あたしゃ女だよ」
「・・・・・・」
メイシンは静かに体制を直立に戻した。
「すみません、1つ下さい・・・」
「あいよ」




