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その44

 その幽霊、アンナはグードとアレックスを一瞬見ると、背中を向けてゆっくりと進み出した。

 

「ついてこいってことかな?」


「みたいだね」


 アンナが何かしてくるのではないかと不安はあったが、他にどうすることもなかったため、2人は彼女の後をついて行くことにした。


 少し疲れた様子のグードを見かねてアレックスは彼をお姫様抱っこした。びっくりしたグードは慌てて大丈夫と言い降りる。するとアレックスは「はぐれると危ないから」と今度はグードの手をとる。これにはグードも素直に従った。


 3人は黒い空間を無言のまましばらく歩き続けた。すると突然、アンナの歩いている周囲の空間がはがれ落ちる。


「おお・・・」


 やがてアレックスたちを通り越して全ての空間が剥がれた。

 眩しい光に思わず腕で目を覆う2人。しばらくして光に慣れると、2人の目の前に領地が広がっているのが見え出した。しかしそこは荒れ果ててはおらず、多くの家が並んでおり、人々が行き交っており賑やかだ。


「これは、私が生きていた時の領地の雰囲気と似ている」

 アレックスはどこか懐かしそうな顔になる。

「こんなに賑やかだったんだ」

 グードも息を呑む。

 前方から子どもが走ってくる。見えてないのか、このままだとアレックスにぶつかる勢いだ。

「だが・・・」

 しかし、子どもはアレックスにぶつかることはなく、すり抜けて何事もなかったかのように走り去った。

「これはアンナの記憶、それもおそらく怪物に襲撃される前の記憶を見せられているんだろう」


 しばらくすると空間は歪み、場面は地主の館の中へと変わった。

 館の地下へと続く階段を大男が降りていくのが見える。

「待ってお父様」

 男の後ろを一人の少女がついてくる。

「転ぶなよ、アンナ」


「あれは・・・」

 グードは男の方の顔を見て、この館に来た時に見た肖像画の男だと気づく。

「あれはアレキサンダー、それとアンナか」

 アレックスとグードは二人についていくように階段を降りる。


 地下の部屋へと着くと、そこにはたくさんの宝や金貨などが溢れていた。


「わぁー、すごい」

 アンナは光る財宝を前に目を輝かせる。アレキサンダーは言った。

「これはな、先祖代々蓄えてきたものだ。これは我が家の、そしてこの領地のみんなの誇りだ。もしもの時のためにとってある」

「へぇー・・・あれは?」

 アンナは部屋の奥にある鏡を指差した。

「これは封印の鏡だったかな。魔力を使うことで悪い者を封じ込めることができるらしい。私は魔法が苦手だから使えないが、お前ならもしかしたらできるかもな」


 アレキサンダーがしゃがんでアンナに目を合わせる。

「ここにある財宝はこの家にとって大切なものだ。アンナも一緒に守っていってほしい」

 アンナの目を見つめる父。

「うん、わかった」

 アンナは頷いた。

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