その43
大きな影の正体、そのうちの1つはバスターの体を借りているアレックスはよく知っていた。
「やはりお前だったか、オーガ」
鏡の世界にアレックスたちを引きずりこんだのはその昔、アレックスが倒したオーガだった。力が強く、体もアレックスが見上げるほどに大きい。そして大胆さはないものの、凶暴な性格で暴れ出せば大の大人が10人いても全く歯が立たない、危険な怪物だ。昔一度、アレックスはこのオーガを吸血鬼であるローデラ共々倒した。
しかし、アレックスの前に現れたのはオーガのみだけではなかった。
「なんだこいつは・・・」
それは体の大きいオーガよりもさらにひと回り大きい怪物だった。その色は薄暗い部屋の中で光っているかのように見えるくらい綺麗な白色をしており、大きな翼と鉤爪をまたその姿はドラゴンのようだった。
怪物2体は暴れながら争い合っている。というより、白いドラゴンがオーガにまたがり、一方的に襲っているのをなんとかオーガが凌いでいるようだった。すでにオーガの方には多くの傷がついている。
「じゃれているわけではなさそうだな」
アレックスはソード斧を構える。
しばらく痛めつけると、ドラゴンはオーガを大きな口で持ち上げてアレックスの方へとぶん投げた。
オーガはボロボロになった顔を口を開けながらアレックスの方へと猛スピードで飛んでくる。
アレックスは一般横にずれると、持っていた武器をオーガの頬へと刺した。そして飛んできた勢いによってオーガの体には全身にわたって大きな一本の傷が新たにできてしまった。
よろめきながら立ち上がると、オーガは吹っ切れたように怒り狂った叫び声を上げると、今度はアレックスへと襲いかかってきた。
「懲りないやつだ」
アレックスはため息をついた。
オーガの激しく振り回す腕をアレックスは次々と避けていく。そして最後に彼女はオーガの頭上高く跳ぶと、見上げるオーガの顔に剣を突き刺した。
弱々しい唸り声を上げると意識を失い、轟音とともにその場に倒れた。
「ふぅ・・・、この体結構疲れるな。さてと・・・」
アレックスは汗を拭うと今度はドラゴンの方を向いた。しかし、ドラゴンはアレックスの方を見たまま微動だにしない。
「なんだ・・・?」
突如、ドラゴンが白い光を放った。あまりの眩しさにアレックスは腕で目を覆う。しばらくすると光が消え、ドラゴンの姿がなくなり、そこにはグードの姿があった。彼はゆっくりと落ちてくる。その姿に気づいたアレックスは彼の真下へと駆け寄ると、その小さな体を両手で受け止めた。
「どういうことだ・・・⁈」
意識を失ったグードの姿にアレックスは驚きを隠せなかった。
「う・・・ん・・・」
目を覚まし、グードはゆっくりと瞼を開ける。すると目の前にバスターの姿が映る。
「あれ、バスター・・・目を覚ましたんだ」
「いや、姿はそうだが中身はアレックスだ」
アレックスはゆっくりとグードを起こした。
「え、どういうこと?」
「まぁ、お互い聞きたいことがあるだろうが、今はこっちが先だ」
グードはアレックスが親指でさした方向を見る。そこにはドレスを着た足のない美しい女性が立っている。
「彼女は・・・?」
「おそらくここの最後の領主であるアレキサンダーの娘、アンナだ」
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