その37 地下室へ
「何よこれ・・・」
互いに改めて名前を教えながら1階の食堂に入った3人。部屋に並べられた沢山の骨にメイシンは引いていた。
「あぁ、私が来たとき屋敷中に争った後があった。その屍を一応集めておいてある」
「集めていたの? 何のために?」
やっぱりこの幽霊ヤバイやつじゃないか、メイシンは気味が悪いと言わんばかりの表情になった。
「埋葬してやりたいのだが、私はこの屋敷から出ることができないんだ。それに、幽霊だから触れないんだよ」
アレックスは証明してみせるかのように置かれた骨を通り抜ける。彼女は優雅に飛び回り、並べられた骨を突き抜ける。さらに、何度も持ち上げようと手を上下に動かす。どうやら彼女の言う通り、幽霊である彼女自身が持ち運ぶのはむりのようだ。
「この家の中であれば壁も通り抜けられる。ただ、一か所だけは入れない部屋があるんだ」
「そこがお札の張られた部屋なんですね」
グードの言葉に頷くと、アレックスは先導するかのように部屋のドアへと向かっていった。
ドアの前で止まる3人。このとき、アレックスはあることに気が付いた。
「ない、お札がなくなっている・・・」
メイシンとグードもドアを覗くと、ドアの中心部になにかはがされたような跡があった。
「貴様らがここに来る前には確かにあったはずなんだが・・・」
アレックスにはどうやら心当たりが無いようだった。メイシンとグードも原因を考えたが、すぐに心当たりが思い浮かんだ。
「バスターとパワードだね」
「あの2人、見かけないと思ったら・・・」
「なるほど、貴様らの仲間か。まあどの道は入れるようになって良かった、そいつらも中にいるだろう」
アレックスはそう言うとドアを通り抜ける。2人もドアを開けて調理場へと入ったが、パワードとバスターの姿は見当たらない。
「こっちだ、ついてこい」
アレックスは床から頭を出してまたすぐ消えた。床を注意深く見渡すと、大きな穴が空いたような場所がありそこには下へと続いている階段があった。2人は階段を下り、アレックスと合流した。
「普通隠し階段をキッチンに作るかしら?」
驚いてはいたが、メイシンは隠し階段の位置に違和感を感じていた。
「一応カギはつけてあったんだが、我ながら失敗だと思ったよ」
どうやらただの設計ミスだったらしく、やっぱりアレックスは変わっているなと思うメイシンであった。
これに続いてグードも気になっていることをアレックス尋ねた。
「そういえばさっき幽霊だから触れないって言ってましたけど、どうやって屋敷の掃除をしたんですか?」
「ああ、それはアレックス2号にやってもらったんだ」
アレックス2号、よくわからないアレックスの発言に2人は首をかしげる。
「さっきの鎧だ、見ただろ?」
どうやらあの空っぽの鎧はアレックス2号と言うらしい。
「あれって生きているんですか?」
「いや、生きてはいない。ただ私が動かしているだけだ。この屋敷の生き物以外ならほとんど動かせる」
確かに、自分が触れなくても鎧やらほうきやらが操れるなら掃除はできるだろう、メイシンとグードは納得しつつもアレックスの器用さに感心した。しかし、同時にそんな彼女が通れなかったお札がどうしても気になる。
「あの札は幽霊に対する強力な結界のようなものだ。だから私は通れなかったし、物を使ってとろうすると操れなくなったから困ってたんだ。ここは宝物庫だからな、どうしても確認しておきたかった」
「へえ、宝物庫なのね・・・あれ?」
メイシンは思い出した。依頼人であるローデラの言葉を。
「確か彼は何もないって言っていたわ・・・」
3人が地下室にたどり着いたが、やはり部屋には何もなかった。しかしその代わりに倒れ込むパワードとバスター、そして鏡と壁にもたれかかった骸が松明で灯された部屋にあった。
「バスター、パワード!」
グードとメイシンは倒れている2人のもとへかけよる。2人はバスターとパワードを起こそうとするが、全く反応が無い。メイシンとグードで体の大きいパワードたちを担ぐのは難しい、それにここで何があったのか気になっていた。その一方で、アレックスは広々とした部屋を見渡している。
「そうか、盗られたか使い果たしたみたいだな」
思いの外、アレックスは落ち込んでいる様子も怒る様子でもなく、平然としていた。そして、階段の方に目をやる。
「貴様ら、気をつけろ」
アレックスの呼びかけに反応するグードとメイシン。階段の方を見ると、下りてくる足音が聞こえ、壁には人の形をした影が映っている。
「誰か来たみたいだ」
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