その28 偵察5
「フンッ!」
パワードが力を入れると彼の体はボンッと元のガタイの良い体に戻った。
「結構吹っ飛んだな」
目の前の道は木片で荒れている。どうやら先程飛ばしたドラゴンはパワードが思っていたよりも頑丈だったようだ。ドラゴンの姿が捉え切れないくらい遠くに行ってしまっている。
「あぁ、やっちまったな」
パワードは遠くまで飛ばしたのを少し後悔していた。彼は突如現れた喋るドラゴンに色々質問するつもりだったのだ。だからこちらから話を聞きにい行かないといけない。
「面倒だな、上に飛ばせばよかったかな」
そうブツブツ言いながら突如森にできた道をモーセの如く歩いて行った。
「ぐっ・・・、いてぇ・・・」
森の奥深くでドラゴンの男は腹を押さえながら最後にぶつかった木にもたれかかっていた。攻撃を受けたお腹の方に大きな外傷は見当たらない。だが全く身動きが取れないほど彼のダメージは大きかった。
「くそっ、おいレイス!」
振り絞って出した声が森に響いた。しかし、彼の周囲には誰も見当たらない。
「おいレイス! 聞こえているだろ!? 撤退するぞ!」
「良かった、まだ元気そうだな」
倒れた木々の方向から足音が聞こえる。ドラゴンは顔を上げるとパワードが立っていた。
「ちっ、てめぇ・・・」
ドラゴンはパワードを睨みつけた。
「お前すごいな、こんなに木を倒すなんて。俺と一緒に木こりでもやるか?」
「くそっ、なめやがって・・・!」
力無き声を発する彼の目の前でパワードはしゃがみ顔を近づける。
「お前、何者だ? こんなところに来て襲うなんて何を考えている?」
「フン、尋問か? テメェらはそうやって俺たちを化け物扱いしやがる」
「俺たち? やはり単独で動いているわけじゃないのか。何を企んでいる?」
パワードはドラゴンの首をがっしり掴んだ。
「そのうちわかるさ。人間どもは地獄を見る」
かわいた笑い声が響く。
「なんだと? どういうことだ」
ドラゴンは何も答えない。
「まあいい。お前を街へ連れて行・・・」
ドラゴンを持ち上げた瞬間、パワードは上の方から殺気と寒気を感じた。
咄嗟に手を離し振り向くと亡霊のような化け物が両手で持った大鎌を振りかざした。
「!?」
危険を察知したパワードはしゃがみ込む。鎌は後ろの木を通り抜けた。
鎌が届かない距離のまで後ろに下がるパワード。亡霊はドラゴンを守るように立ちはだかった。
改めて亡霊を見てみるとやはり不気味だった。その体は細く、生きているとは思えないほど青白い。まるで花嫁のようなレースを身に纏っているが、所々破れている上に黒ずんでいたりとボロボロだ。地に付いている足は無くゆらゆらと浮かんでいる。
「おせーよレイス!」
怒っているような安心したような声でドラゴンは叫んだ。
「フフッ、偵察に行って返り討ちに遭うとかダッサーイ」
亡霊は見た目の恐ろしさから想像できないような可愛らしい声だった。
「うっせ、てめー見てたんなら助けろよ!」
「だってー、あんた『俺1人で十分だ』なんてカッコつけてたじゃい」
バカにしたような感情豊かな表情でドラゴンの周りをくるくる動き回る。
「幽鬼か、分が悪いな」
パワードが呟いた。レイスと呼ばれた彼女が振り返る。
「あなた強いですね。人間にはあなたみたいな人がたくさんいるんですか?」
「さぁな」
「まあ、あなたのような者の強さを知れたのは収穫ね」
レイスの目の前に黒い空間か現れた。
「それじゃまた近いうちに」
「テメェ覚えてろ!次はぶっ飛ばす!」
そう言い残し2人は黒い空間へ入り姿を消した。
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