その13 盗賊退治7
ここは、岩場の洞穴の最深部。この少し開けた空間の壁にはたくさんの松明がかけられており、うっすらだが部屋全体が見渡せる。しかし、ここにいるのはゴブリンたちばかりだ。20体ほどのゴブリンたちがこの空間内で騒いでいる。動物の肉を食べる者、戯れているのか喧嘩をする者、不思議な踊りを踊っているものなど様々だ。
しかし、そんな中で人間が2人いた。男が1人と女が1人、ゴブリンたちに混じってこの空間に存在している。
男は部屋の奥でゴブリンたちの上に君臨するかのように岩でできた椅子に座っている。その体はバスターと同じくらいの一般的な大きさで、その鍛えた身体と数々の傷を見せたいのか黒の長いパンツを履いているのに対し上半身は裸になっている。そしてその体を照らすように彼の前には焚き火が燃えている。
その焚き火に横たわる女性がいる。その手には手枷がかけられており、傷はないものの大分疲弊している。美しかったであろう彼女の長い茶色の髪も手入れも出来なかったのか、すっかり荒れてしまっている。ジャスミンだ。
「お、お願い・・・ 帰して・・・」
力無き声で彼女は訴える。
「あぁ、帰してやるさ。獲物がやってきたらな」
そのとき松明を持ったゴブリンが慌てたように部屋に入ってきた。ゴブリンは男の方へ駆け寄る。
「シンニュウシャ キタ ツヨイ!」
ゴブリンは部屋の奥にいる男に訴えかける。
するとゴブリンがやってきた入り口から声が男のところまでがっつり聞こえてくる。
「ちょっ、なんで私を先頭にしようとすんのよ!」
「しょーがないだろ、お前が前行かないと道を照らせないし」
「私は女の子よ!」
「見ればわかる。ギリギリ」
「ギリギリって何よ!」
「あんまり大きい声出すなよ!バレる!」
男女がケンカしているようだった。そして光が揺れてあるのも見える。
「出てこい」
男はしびれをきらしたようだった。
「もうバレてるみたいだよ」
「えっ」
そういうとグード、バスター、そして光を消したエルフィーヌの3人が姿を現した。
「ふん、なるほど・・・その辺の雑魚とは違うようだな。物凄いパワーを感じる、悪くない」
男は不敵な笑みを浮かべる。
「どうやらお前の恋人は助けを呼んだみたいだな」
ジャスミンの表情は疲弊した状態のままだったが、その顔に僅かな希望が灯る。
「あっ、あの人じゃない!?」
手枷をつけられたジャスミンに気づく。
「良かった見つかって、どうするバスター?」
「もう目の前にいるんだ。突っ込む!エル、援護してくれ!」
そう言うとバスターは短剣片手に1人でゴブリンの群れに向かって走り出した。ゴブリンたちも興奮しだしてバスターに突っ込んでくる。
「エ、エルってなによっ・・・ わかったわ!グード、目瞑ってて!」
エルフィーヌは片手の指に意識を集中させ始めると指先だけが光りだした。
「グヌヌ・・・!」
彼女はさらに力を集中させる。
「フンッ!」
次の瞬間、5本の指先からポワッとそれぞれ光の球のような物が現れた。
「行くわよ!」
エルフィーヌは狙いを定めると出てきた光の球を思いっきり投げた。
投げられた球はゴブリンたちの方へと飛んで行く。そのうちの1つが棍棒を持つゴブリンの目にぶつかった。その瞬間、光の球がはじけゴブリンの視界を光に包む。
「ギャッ!?」
目の前が強い光一色になったゴブリンは倒れてのたうちまわる。
投げた5つの光の球のうち4つがゴブリンへと命中、視界を奪い、動きを止めた。
「どーだ! これが私の暗黒拒絶の持ち帰り《アンチダークワールドテイクアウト》よ!」
(だ、ダサい・・・)
グードとバスターは同じことを思ったが、今は何も言わなかった。
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