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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3618手間

 辺境伯になるという現実を、実利で飲み込んだ男爵であったが、何かに気付いたのかハッとした様子で顔を青くさせる。


「その、大変お恥ずかしい話なのですが、今の私では神都まで行く貯えが」


「それならば問題ない、伯爵までの陞爵であれば陛下の承認と私とセルカの立ち合いがあれば問題ないので、私の街で行う」


「かしこまりました」


 陞爵して身分が上がるとなると、様々な物が入用となり、さらにそこに神都までの道のりとなれば、いくら発展している町を治めているとはいえ、男爵程度の貯えではかなりきついであろう。

 非常に恐縮した様子でそんなことを口にする男爵に、クリスは鷹揚に街までで大丈夫だと言えば彼はほっと息をつく。

 クリスが言っていたように、伯爵までの陞爵であれば王の承認と領主、もしくはそれに該当する身分の者と基本的に領に必ず一人か二人居る高位の聖職者の立ち合いがあれば出来るのだ。

 これは領土が非常に広い神国では、わざわざ神都まで行くのが大変であり、そんな長距離を移動している間に万が一に巻き込まれないための措置である。

 とはいえこんな制度を知っているのは一部の者だけであろうし、男爵が知らなかったのも致し方ない。

 何せ陞爵など誰かが生きている内に何度も行われるようなモノではなく、同じ領地の貴族でもない限り、他所の領で陞爵された貴族の情報など、わざわざ調べたりしない限り男爵などの下っ端にまで回ってくることがない。

 それに陞爵されるのは、基本的に男爵や騎士爵などの身分の低い者たちであり、それであればますます他所の領はろかつながりが無ければ同じ領であっても話が回ることは少ないであろう。


「しかし、陞爵の儀式を神都で行う事は知っているのか」


「知っていると申しますか、昔話の一つとして、神都で賜ったお話を聞いたことが御座いまして」


「なるほど、侯爵以上への陞爵となれば大体的に告示するであろうしな」


 であれば男爵の言う通りに神都で陞爵の儀式を行う高位貴族の話だけが広まり残り、陞爵とは即ち神都で行うものと勘違いするのも致し方のないことか。


「とはいえすぐに行う訳ではない、詳しいことが決まれば追って正式に沙汰を下す」


「かしこまりました。では、騎士団の駐在所や新たなお屋敷の建築などの指示を」


「いや、それも正式な話の後で良い。告示もなしに勝手にやれば色々と問題になるからな」


 屋敷はともかく騎士団の駐在所を、告示より先んじて建てるのは問題になる。

 陞爵するので騎士団を招くべく、予め駐屯地を建てるのが分かるのは内々だけで、対外的には勝手に軍事拠点を建てているようにしか見えず、当然そんなことをすれば陞爵どころではなく、間違いなく処刑の沙汰が下ることになる。

 

「き、気をつけます」


「とはいえ決定した後にせわしなくというのも品がない、用途を明確にする必要はないが、用地の確保程度に留めておくように」


「かしこまりました」


「では、後の質問は私が」


 良い土地というのは誰しも欲しがるもの、後々困らない為にも用地の確保だけはしておくようにと言えば、そこからは同行していた文官が男爵からの質問などを引き継ぐのだった……

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