1334手間
ふふん、驚いている驚いている、この威力、この威容、如何に魔導具バカの帝国でも真似できまい。
それを何の予備動作も無く、今回は見た目を考え銃と尻尾から撃ったが別にどこからでも、ある程度ワシの近くであれば宙からでも撃ちだせる。
しかも何で出来ているかは知らないが、最低でも鉄か鋼か金属出来ているモノが一瞬で溶解したのだ、どれだけ無学のド阿呆でも、人に当たればどうなるかなど火を見るよりも明らかだ。
だが対群として見るなら微妙か……何せビームだ、当たった所だけに効果が出る。
どうせ何をしようとワシが直接魔手で引っ掻いた方が強いのだ、ならば完全に見た目重視でいいだろう。
ビームが着弾した地点を爆発させたり、ビーム自体に雷を纏わせたりしたら、派手になって威嚇に丁度良いのではないだろうか。
「それにしても、ゴーレムにやらせたんじゃろうが、気合いが入り過ぎであろう」
ワシは一先ずそこでビームのことを考えるのを止め、扉の先に続く坑道へと目をやる。
そこには扉の大きさに相応しい、巨大な通路が斜め下へと続き、通路の先は完全に暗闇となり、ワシの目をもってしても見えないほどに続いている。
明らかに晶石を運び出すには過分な通路だ、どう考えても大群が通ることを想定しているような通路であろう。
「ところで、この道は一直線かの? さっきのをずらりと横一列に撃ち込めば、逃げ場のない者たちはどうなるかのぉ」
「流石に、一直線では、ないです」
無抵抗に撃ち抜かれる者たちを想像でもしたのか、顔を蒼褪めさせながらつっかえつっかえにワシの疑問に副将軍が答える。
なるほど流石に一直線ではなかったか、それが一網打尽にされない為なのか、ただの偶然なのかは知らないが、どちらにせよ火攻め水攻めの前には無意味だろう。
どちらを選択するにせよ、ワシならばこの坑道を埋め尽くすほどの量の炎や水を生み出せる。
「それにしても、これだけ整備しておるのじゃ、近いうちに攻め入る腹積もりじゃったのかの」
「それは……」
知らないのかそれともしらばっくれているのか、どちらにせよ先ほどから良い度胸だ。
つい先ほど自分が言ったことすら忘れていると見える。
帝国に対する見上げた忠誠心というべきか、民の命などどうでも良いと思っている見下げた根性だとなじるべきか。
「知らぬのか、それとも国に忠義立てておるのか。どちらにせよ喋らぬのならば要らんのじゃな」
「なにを――」
副将軍が何事かを言い切る前にその声は途切れる、何故ならばワシが魔手の指を軽く振り、その首を切り裂いたからだ。
即死はしないだろうが、どくどくと流れ出る血の量からみてそう長くは無いだろう。
「帝国の者は随分とおめでたい頭を持っておるみたいじゃな。何せついさっきのことすら覚えておらん、鶏の方がもっと物覚えが良いのではないか?」
「ふ、副将軍は知らなかったのだと思います! 将軍は偉い人が来る前はふた月くらい前から私たちにうるさい位に、大人しくしてろと言うので」
「それで? 知らぬならば知らぬと一言いえば良いじゃろう。ワシが何故おぬしを、おぬしらを生かしておると思う? 情報が欲しいからじゃ。なれば情報を喋らぬモノはゴミほどの価値も無い、ワシにゴミをそこらにばら撒いておく趣味は無いからの、ゴミ以下と言うならばなおさらじゃ」
言い募る兵士に冷たく言い放つと、ワシは左手を町の方へと向けワシの体の半分ほどを覆うくらいの大きさの火球を生み出す。
「そしておぬしが全てを喋ると嘘をついた報いを、今際の際にとくと見るがよい」
だがその時、大多数の者には福音であり、一部の者には最悪の時に来たであろう大勢の人が動いているような足音が、坑道の中から聞こえワシは撃ちだす寸前だった火球を消し坑道の奥へと振り返るのだった……




