1049手間
しばらく弾着跡を呆けたように見ていた長老だが、突如ぐるんとフクロウ程ではないが、首を痛めるのではと思うほどの速度でワシの方に向き直る。
するとドスドスと地響きのような足音を出しながら、ワシへと近付いてきてワシから魔導銃を取り上げる。
「あんな威力の射撃は想定してない、フレームは無事か?! 回路は焼き切れてないか?!」
何やら長老は叫びながらノックをするように銃身を叩いたり、銃口から中を覗き込んだりして魔導銃の状態を調べ始めた。
「あぁ、大丈夫じゃろう、それの耐えられるマナの二割ほどしか注いでおらんからのぉ」
「二割? 二割であれ程の威力だと、ドノヴァンおまえらはあの威力で普段撃っているのか?」
「いやいやいや、無理無理、全力でマナを込めてやっとかどうかってところ、だと思う」
「ふぅむ、つまりここまで大きく頑丈にする必要は無かったのか、回路を衝撃から守る程度で大丈夫か……」
長老はドノヴァンに意見を求めると、そのまま魔導銃片手に何やらぶつぶつと早口で呟き始めた。
「あ〜ぁ、こうなると長老は暫く動かん、とりあえず俺らは……そういえば何しに来たんだっけ?」
「はて、何じゃったかな?」
ドノヴァン曰く、長老は早口で独り言を言い始めると梃子でも動かなくなるらしい。
だからここに来た目的を果たそうとして、はてその目的とは一体全体何だったかとワシとドノヴァン、二人して腕を組み首を傾げる。
「あぁ、そうじゃ、攻められるからワシが返り討ちにすると言う話じゃったな」
「いや、違うような気がするが。しかしなぁ、それも向こうがここを攻め滅ぼすなんて宣言してるが三十巡りほど前で、二十巡り前の親父が死んだ戦いからは小競り合い程度で、本格的な戦いにはなって無いんだよな」
「ふむ、小競り合い程度のぉ、向こうにも何ぞあったのかえ?」
「親父含めこっちの方が被害は大きかったんだが、向こうにも少なくない被害は出てるからな、それにこっちの方が倍ほど人が居るからこっちの方が被害が大きいとはいえ、全体から見れば向こうの方が被害が大きかったんだろう」
「なるほど、つまり向こうも今は戦力を回復しているといったところかの?」
「だろうな、こっちはゴーレム共のせいで武装こそ充実させたが、肝心なそれを使う者がな……」
ドノヴァンが髭がめくれる程のため息をついて項垂れる。
確かにこの数十巡りは、ここのドワーフたちにとっては突然の襲撃に誘拐と、踏んだり蹴ったりの日々だったろう。
数十巡りと聞くと長そうにも感じるが、ワシやドワーフなどの長命の者からすれば、その月日はヒューマンが感じる数か月か一巡り程度でしかない。
そう考えると長老が積極的に生き延びようとするでもなし、かといって完全に滅びを受け入れ無気力に過ごすわけでもなしと、不思議な状態になってるのも仕方のないことなのかと、未だぶつぶつ早口で言っている長老を眺めるのだった……




