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蘇生勇者と悠久の魔法使い  作者: 杏子餡
リア族の地下帝国と嗜好の食材
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 時は少し遡り、イサムがユキの転移魔法でジヴァ山に移動したのを確認したロロルーシェ達は、場所を変えリビングで話をしていた。

 ノルがロロルーシェに紅茶を差し出しながら、リア族の事を尋ねる。


「ロロ様、イサム様の言っていた主食を変えると言う事は、本当に可能なのでしょうか?」

「いや、難しいだろう。何を食べるかは女王が決める事だ。あいつの子らは、無意識に女王が好む食べ物を受け入れる性質も持っているからな」

「そうですか…では女王が変わらない以上は、人を食べる事は止めるのが出来ないのですね…」

「そうだな…それに女王自身が次世代の女王を産んでいなければ意味が無い。千年前に確認した時は、まだ次世代が産まれた様子は無かった…」


 ロロルーシェは紅茶を飲み一息つくと、話を続ける。


「だがそれも千年前の話だ、もしかしたら次世代の女王を産み落としている可能性だってある。今の女王が駄目でも、次の女王に頼むという手もあるな。まぁあくまでも次世代が生まれていればの話だがな」


その話にメルが肩を落とし呟く。


「では、イサム様のしている事は無駄に終わる可能性もあるのですね……」

「そうね…今回は駄目かもしれないわ。でも次がある、目的を履き違えては駄目よメル」

「そうですね、今回はあくまでもイシュナ救出が目的ですものね……」

「この世界に慣れるのは時間が掛かるだろう、本当は私もイサムには好きな事をさせたい。だが、闇の王を完全に倒すまでは無理を承知で動いて貰うしかない。イシュナはかなりの戦力になる、夢を見たイサムが連れ戻せると私は考えている」


 メルが空いたカップに紅茶を注ぎ、椅子に腰掛けたノルにも差し出す。


「ありがとうメル、どのみち私達は今動く事が出来ません」

「そうだ、その闇の王の復活も近い…そろそろ私達も準備に取り掛からねばなるまい。ルイナはどうした?自国へ帰らせた方が良いと思うが、まだ姉と一緒に居るのか?」

「そうです、外でべったりですね。会えたのが余程嬉しいのでしょう」


 エルフの森から一緒に来たルイナは、エルフの国の王女のような存在で、その姉は今から二十年前にリリィと共にロロの大迷宮に挑んだ冒険者【ルクット・レィ・ファ・タラヌス】である。闇の魔物に襲われ命を失い、リリィが七日間死体を守り魔素の海に還ったはずだった。


「ふふっリリィも怒ってたな、早く教えて欲しかったと」

「それは仕方が無いです。こちらにも都合と言うものがありますので」


 ロロの大迷宮で死んだ者は、魔素の海へ還らない。一旦、中心の壁の中に存在する擬似魔素の海へと保管され、オートマトンとして新に生きるか選択を与えられる。そこで拒否した者のみ迷宮の外へと排出されて、本当の魔素の海へと還るようになっている。


「ラルの変わりに九十層をリリィと守らせていたが、自分ばかり年を取ったと嘆いていた」

「ですが、リリルカを産めたのはあの時生き残れたからだ、とも言っておりました」

「そうだな、ディアナの予知ですら完全に未来が見えるわけではない。私らはその時の最善を選択し、行動しているだけだからな。正しかったのかどうかはその時に分かるはずがない」

「それが普通だと思います。ロロ様も人なのですから」

「ふふ……ありがとうノル」


 二杯目の紅茶を飲み干したロロルーシェは立ち上がり、次の行動に移る。


「そろそろイサム達が戻ってくるかもしれない、外のリリルカの様子も見に行こうか」

「そうですね、ルルルもこちらに来ると言っていました」

「ああ、イサムに対応したコアの作成に成功したと言っていたからな。その試作品を持ってくるようだ」

「それは良いですね! この時期に完成出来るなんて流石はルルルです」


 外に出た場合、転移魔法で室内に戻る事は出来ない。それを見越してロロルーシェ達は家の外に出る。

 澄んだ青空と心地の良い柔らかな風が吹いている。外ではマノイとテテルそしてディアナが洗濯物を干している所だった。マコチーに作って貰った白い【割烹着】を二人はそれぞれ着用している。

 テテルとディアナは背が低く干し紐まで届かない為、背中の四枚の羽を器用に羽ばたかせて、楽しそうに飛び回りながら干している。


「あの割烹着と呼ばれる装備は全員分マコチーに作って貰ったようですね」

「そうなんです……どうしても作らせてくれとマコチーが言うものですから…」

「良いじゃないか、それとあの二人は歳が同じだったな、日は浅いがまるで姉妹の様だな」

「ええ、とても仲が良いです。ディアナは両親に女王をさせられていただけでしたので、まだ深く染まる事無くて済みました。あのまま日が経っていれば、人を見下す最低のフェアリーになっていたでしょう」

「心が腐れば闇に狙われやすくなります」

「メルを狙ったあの皇太子もそうだったな」


 タダルカス王国の事を言われて言葉を詰まらせるメルを見て乗るが苦言を呈する。


「メルは考えも無く行動しすぎです。タダルカスでは貴方がリーダーとして行動を指示し仲間を守るべきだったはずなのに、イサム様にご迷惑を掛けて助けて貰うなんて」

「そっそんな事を言ってもですね……お姉様もあそこに居れば私と同じ行動をとると思います!」

「それはどうかしら? イサム様が考えより行動を優先すると分かっているのでしたら、そのサポートに回るのが最善だと私は考えますよ」


 メルは頬を膨らましノルの意地悪な言葉に少し腹を立てている様だ。それを見かねてロロルーシェがフォローに入る。


「ノルそう言ってやるな。お前だって全裸でしかも解剖されてる時に助けられたんだろ? メルが胸を見られたと言っていたが、お前は体の隅々まで見られたんだぞ? イサムは何も言わないが、もう一度ちゃんと見せてやったらどうだ?」

「なっ! ロロ様! あれは不意を喰らい仕方なくです! 好きで裸を見せたわけではありません! それにイサム様だって、しっかりと見たわけでは無いはずです! 見せても良いですが……」


 ノルも頬を膨らましロロルーシェに不満を漏らす。それをみてメルが笑い、そしてノルも笑う。


「でもお前らどうするつもりだ? この先更にイサムの周りに増える女性はいるだろう。その都度取り合いしていたら誰にも興味を示さなくなるんじゃないか? まだ肌を重ねていないんだろ? 待っていてもイサムは来ないぞ」

「なっ何を急に言うのですか! じゅ順序と言うものがあります! そうでしょう? お姉様!」

「そうかしら? メル……私はいつでもイサム様と肌を重ねる覚悟は出来ていますよ」


 その言葉を聞いてメルの方が赤面し、両手で顔を押さえフルフルと左右に振る。


「そっそんな……お姉様…ずっずるいです! 私だって心のじゅっ準備は出来て下ります!」

「…冗談はさておき、リリルカの魔素の許容量を上げる特訓は上手くいったのでしょうか?」

「……ずるいお姉様……」

「はっはっはっ大丈夫だ、私の孫だからな。あと数体の精霊の契約も可能だろう」


 目線の先には地面から少し浮いた状態でリリルカが胡坐を組み目を瞑っている。その下には大きな魔法陣が文字を変えながら絶えず動いている。

 魔法陣の傍に立ち、ロロルーシェはリリルカに手を伸ばす。まるで何かを量る様に真剣な目がリリルカを見つめる。


「おばあちゃん……体の魔素がどんどん増えていくの……まだまだ止まらない……私どうなるの?」

「大丈夫だリリルカ、それでもまだ私の半分程だぞ。それに危険だと感じたら、お前の中に居る精霊二体が止めるだろうさ」

「そっか……なら大丈夫だね……」

「もう少ししたらイサムが戻ってくる、その時に少し休憩しよう」

「うん、わかった……」


 目を瞑りながら会話を終えたリリルカは、再び集中し始めた。それを見てロロルーシェは家の方へ向かおうとした時に、突然入り口に現れたイサム達とルルルがぶつかるのが見える。倒れたルルルの大きな胸にイサムが倒れ掛かる様に埋もれている。そしてそれに驚いたルルルがイサムを掴み上空へ思いっきり投げ飛ばしていた。


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