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メメルメーの生息場所でロロルーシェとの念話を終えたメルが、肩を落としイサムに内容を伝える。
「イサム様を残し、全員大迷宮に戻れだそうです…」
「は!? 何よそれ? どう言う意味?」
「分からないわ…理由は言えないと言っていたから、余程の事なのかも…」
「じゃあ、俺一人でエルフの国に行けば良いのか?」
念話の内容があまりにも理解出来ない為に、仲間達にも不安が広がる。
「いえ、ロロ様がこちらに来るそうです。あとは他の仲間も連れて来ると言っていました…」
「ロロルーシェ自身が動くって、かなりの事だよな?」
「はい…大変な問題がある場合以外は、私達で処理できます。あと、連れて来る仲間はラルかルルルだと思います…大迷宮を離れる時はいつもお姉様が一緒だったので、お姉様が居ない時に代わりに動くのはあの子達です…」
明らかに元気の無いメルに仲間達も声を掛けられずにいた、イサムはメルの頭に手を乗せて答える。
「メルが闇に落ちた時も助けられたじゃないか、ロロルーシェが俺を残すって事はそういう事だろ?」
「それはそうですが……私とお姉様じゃ強さが違います。それがいとも簡単に連れ去られるなんて…」
「相手は相当強いって事ね、やっぱりノイズかしら?」
「ミケが死んだ原因もノイズにゃん…あいつは許せない…」
「ここで考えていても埒があかんだろう、イサム…まずは麓の町に戻ろう」
全員が頷き、先程と同じ様にユキが転移魔法で移動し町の手前に現れた。イサム達はそのまま駅へと向かうが、納得する事は出来ないと仲間達は不満をあらわにしている。精霊のユキはタチュラと同じ程の大きさになり、周りに気付かれない様にしている。
「理由は後で教えてくれるだろう、それで俺が納得出来なければ呼び出せば良い」
「それはそうだけど…何で保管とか待機じゃなく何で全員戻れなの? どう考えても何かあるわ」
「確かにそうですね…ノル様が居なくなった事を聞いた上でメル様を戻すのですから、余程の事情があるはずです」
テテルの話を聞きながら腕を組み駅のベンチに座るイサム、それを見てエリュオン達も椅子に座り考え込む。そこから会話も無く誰も動く事は無い、目の前を数回列車が通り過ぎて、気が付くとイサムはウトウトとしていた。
すると列車が止まり、目の前に現れる一人の女性。そして椅子に座っていたメルとテテルがすっと立ち上がった。
「ん? あぁ…ウトウトしてた、悪い…ん? どうしたんだ?」
「イサム様起きて下さい」
「まだ移動させてなかったのかメル。早く戻りなさい」
「おおぅ! ロロルーシェか! もうこっちに来たんだな…」
「イサム殿、お久しぶりで御座います」
「カル! 今回の同行はお前だったのか!」
トコトコと歩いてきた卵をみてカルだと直ぐわかったイサムに、もう一人話しかけて来る。
「私は初めましてですね、イサム様。ラルと申します、宜しくお願い致します」
「あぁ…あんたがラルかぁ……カル! この人美人過ぎないか?」
「こら! イサム殿! 失礼ですぞ!」
「カル! 美人は失礼じゃないでしょ!」
ラルの後ろからカルを怒る女性、ルルルが顔を出す。
「ルルルも来てたのか! てか凄い格好だな…全身ミリタリーかよ! ん? その後ろの子達は見た事あるぞ…」
「初めましてイサム様、私は武器開発室で働いておりますリンと申します」
「私はシャンと申します、よろしくおねがいします」
チャイナ服の女の子二人は丁寧にあいさつする。
「偉いわよ、しっかり挨拶出来たわね」
ルルルが二人の頭をなでる。しかしその手がエリュオンを見て止まる。
「そんな……まさか……エリュオンちゃん! 酷い! そんなに成長して!」
若干ルルルよりも背が高くなり、胸のサイズも変わらない程だ。膝から崩れ落ちそうになるルルルがその隣に居る青い髪の女性に気が付く。
「あれ? そちらの女性は?」
「はっ初めまして! 僕はネルタクと言います! エリュオンの幼馴染で…」
ネルタクの自己紹介も途中なのにルルルはギュッと抱きしめる。
「この子可愛いわ―! エリュオンの幼い頃に近い感じがする!」
「くっくるしいぃです!」
「ちょっとルルル! 私の幼い頃って何よ! 今の方が断然良いでしょ! ねえイサム?」
「ん? ああ、そうだな! エリュオンは美人だ! てかこの世界って美人多すぎだろ!」
赤くなりバシッとイサムと照れながら叩くエリュオン。しかし駅のホームで集まって話していた為、ルサ族の駅員が注意しにやってきた。
「お客様すみませんモン! ここでの長話はご遠慮頂きたいモン!」
「ああ! これは悪かった。ではお前達、列車に乗り戻るんだ、良いな」
「……はい…」
「イサム! 分かってるわね!」
「分かってるよ! 何もなければ呼ぶから」
「イサム世話になったな! そのうち礼させてくれ!」
「なら、こいつらも戻るわけだし皆の服を作ってくれよ。家で待ってるディオナの分もな」
「え! そんな良いですよ!」
「そうですイサム様! 勿体ないです!」
エリュオンやミケットは喜んでいるが、メルやテテルは遠慮している様だ。
「良いんだよ! マコチー頼むな!」
「そんな事で良いならお安い御用だ! 帰って来る楽しみも増えるしな!」
「ははは! そうだな!」
イサムとマコチ―は固い握手をして、列車に乗り込んでいく。勿論タチュラもイサムの肩に捕まり嫌がるのを無理やりエリュオンが引っ張り剥がし列車に乗せた。
「いや―いや―一緒に居たい―!」
「わがまま言わないで! 居たいのはみんな一緒よ!」
そんな騒ぎの中で扉が閉まる少しの間、メルはイサムを見つめていた。
「イサム様……本当にお姉様に…もしもの事があったら……」
「悪い事ばかり考えると駄目だろ、必ず連れて帰るから心配するな!」
気休めかもしれないが、メルはその言葉がとても嬉しかった。もう姉に会えないかもしれないと涙が目元に溜まるが必死に堪えている。
そんな中、ホームに発車音が鳴り響きゆっくりと扉が閉まる。ゴトンと揺れ動きだす列車の中で、顔を手で覆うメルを見たイサムは強く誓う、必ずノルを連れて帰ると。
列車を見送り、残ったイサムにロロルーシェが話しかける。
「取りあえず、駅を出て移動しよう。イサムの肩の奴の話も聞きたいしな」
『ひっ!』
ユキはロロルーシェと目が合うと、さっとイサムの頭の後ろに隠れた。ラルもルルルもその肩の人物を見てかなり驚いている様だ。
駅からでて、山の方に進みだす。夕方前で山の方へ進む人は居ないのを見計らって、ロロルーシェは振り返り話を切り出した。
「イサム、そいつは精霊ジヴァの様だが随分と様変わりしているな」
「それがな……始めはネルタクに憑いていたんだが、成り行きで契約したんだ。そして名前を……」
「付けたのか……成程な…通りで今までよりも強く成長しているわけだ、イサムの魔素の影響を受ければ当然だな」
頷きながらも真剣な目をしているロロルーシェ。イサムは怒られるのではないかと内心ビクビクしていたが、そうでもないらしい。
「契約は駄目だったのか?」
「いや、むしろ良い戦力になる。命名もこの際、仕方が無いだろう」
「そうか…よかった」
「だが、お前が暴走するとそいつも暴走するから気を付けるんだ」
「暴走? なんだそれ? めちゃくちゃ怒るって事か?」
「そうだな……自我を無くすほど怒るって事かな」
「う―ん……分からないが、怒らない様に気を付けるよ」
イサムは頭を掻きながら頷くが、分かっていない様だ。そしてこれから転移魔法をロロルーシェが使うらしい。
「まずはエルフの国に移動しようか、駅中じゃ転移魔法は使いづらいからな」
「直接乗り込むのか?」
「はっはっは! いや、上空に大昔に上げた島があるんだ、丁度エルフ共の国の真上にな」
「まじかよ……バレないのか?」
「ああ、不可視の魔法を掛けてある。まず見抜けないだろうな」
ロロルーシェは予めセットしていたかの様に指を鳴らすと、イサム達は光に包まれる。そして一瞬で雪山から、緑豊かな大地へと視界が変わる。気になるのは苔の付いた大きな岩が、綺麗な間隔うで沢山ある事だけだろう。その先にロロルーシェの住む家と似た様な建物がある。
「本当に空が近い気がする」
「気では無いぞイサム殿! 我輩も始めてきましたが、何と言うか胸熱くなるものがありますな!」
「貴方の胸って何処よ……カル…」
ルルルの突っ込みにリンとシャンがゲラゲラ笑っている。そしてラルもクスクスと笑っていた。
「はっはっは! それはご想像にお任せ致します! ラル隊長が喜ばれて何よりだ!」
「こらカル! 私はもう隊長では無いのですよ!」
「いえ! 我輩は生涯そう呼び続けますぞ!」
「んもう! 頑固なのは姿が変わっても同じなのね!」
そんな話をしていると、周囲にあった岩が突如動き出し武骨な人の様な形に変わる。
「おっおい! なんか岩が動いてるぞ!」
「ふむ…流石に千年放置したぐらいでは壊れる事は無いなルルル」
「勿論です。この子達は岩で作成致しましたが、エルフの国の者達も恐らく健在でしょう」
「これもルルルが作ったのか?」
動き出す岩が綺麗に並び出し片膝を付いていく。それを見てルルルは頷いている。
「そうです、オートマトンの原型【ゴーレム】です。ただロロ様の魔素を得て動いているので、ゴーレムの主はロロ様ですが」
「なるほどなぁ…でもオートマトンの原型って事は、コアは無いのか?」
「ないですね、魔法で動く人形ですが意思は無いです」
大小様々なゴーレムが片膝ついて座っている。しかも千年放置していたらしいが全く壊れていない。ルルルは一つ一つを確認しているが問題はないらしい、そしてロロルーシェはイサム達を呼び寄せてこれからの予定を家で話すと言ってきた。ゴーレム達を無視しながら、イサム達は家の中へと入っていった。




