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ノルが闇の靄と消える少し前、コンコンと扉を叩きロロルーシェの部屋をディアナが訪れる。
「どうしたディアナ? 顔色が少し悪いな」
「ロロ様…イサム様の夢を見ました。思い過ごしなら良いのですが…いつもよりも鮮明に…イサム様の顔が映り、酷い顔をして下りました……とても…とても…」
そして泣き出すディアナの涙を優しく拭くロロルーシェに彼女は更に話しを続ける。
「イサム様の所有しているコア……その誰かをイサム様自身が、命を奪う可能性があります……あくまでも夢の中の話ですが……」
「なに? ふむ……」
ディアナがイサムのコアになった理由は、恐らく彼女の能力【予知】が関係しているだろうとロロルーシェは気が付き、もしもの為にとイサム達と共に行動させずに待機させていた。結果として彼女の能力によりイサムを救えるはずだと思っていたが、今回はその仲間をイサム自身が殺してしまうとディオナが言う。
ジヴァ山にミケット達を助けに行ったイサムからの連絡はまだないが、確認しようとした時にメルから念話が入る。
『ロロ様今宜しいでしょうか?』
「メルか、こちらから連絡しようとしていた所だ」
『ミケット達は無事に助ける事が出来ました、ですがお姉様が闇に連れ去られました』
「ふむ…ノルを連れ去れるほどの奴か…厄介だな…」
『私達はこれからアールヴに向かおうと思うのですが、エルフの国へ行くのは私も初めてなので助言を頂きたいのですが』
しかしロロルーシェはそれを止める、それは先程のディアナの話を聞いていたからだ。
「話は分かった、だがエルフの国に行くのは別の者に行かせる。その場所にイサムを残し、他の仲間達は全員こちらへ帰る様にしなさい。良いか、全員戻すんだ」
『え? 何故でしょうか?』
「理由は教えられない。だが今回は私が行く、エルフ達にも確認したいことがあるからな」
『ですが……分かりました…イサム様に伝えます……』
ロロルーシェは念話を切る、心配そうにディアナが見つめる。
「イサム様は大丈夫でしょうか……」
「ふむ…ノルが連れ去られたと言っていたが、あの子はオートマトンの中でも相当強い。と言う事は相手は同じ位の力を持つ闇だろう。イサム以外は全員こちらに戻す」
そしてロロルーシェは別な相手に念話を始めた。
「ルルル、ノルが闇に連れていかれたそうだ。行先は恐らくアールヴだ、お前も来い。それとラルも連れて行く」
『ええええ! そうなのですか!? 至急向かいます! それと部下を連れて行きたいのですが……』
「それはお前に任せよう。準備が出来たら上に来い」
『分かりました。直ぐに準備致します!』
ルルルと念話と切り、次に大迷宮の九十層で守護しているラルに念話を繋ぐ。
「ラル、今大丈夫か?」
『はい! 私にご連絡すると言う事は、何か御座いましたか?』
「ああ、ノルが闇に連れ去られた様だ。今からエルフの国アールヴに向かう、お前も来い。そこの守護は他の者にしばらく任せよう」
『何ですって! ノル様が! 分かりました直ぐに上へ向かいます!』
ロロルーシェはため息をつき椅子に深く腰掛ける。それを不安そうに見つめるディアナを膝にの上に乗せ話しかける。
「未来が見えるって事は、それを阻止する事も出来るって事だ。お前が得た力は人を助ける事が出来る、これからその能力は更に強くなるだろう…良いか覚えておきなさい、強い力は悲劇を生む時も沢山ある。だが、それと同時に多くの人を助ける事も出来るのだ」
「はい……」
「良い子だ……私はこれから、お前の見た未来を防げるか確認してこよう。イサムはこの世界に必要な存在だ、彼を守る事が世界を守る事になると私は信じている」
ディアナを降ろし、ロロルーシェは立ち上がる。そして部屋から出るとリリルカとリリィが直ぐ傍にいた。
「姐さん、何かあったんですか?」
「おばあちゃん……とても嫌な予感がするの…イサム大丈夫かな?」
「ノルが闇に攫われたらしい。そしてディアナが見た予知夢では、イサムが仲間を殺す夢を見たらしい。だからイサム以外の仲間をこちらに戻す」
「そんな! ノルが連れ去られるなんて……信じられない」
「私もそう思うよ、だから今回は私を含めてルルルとラルを連れて行く」
「え! そうなの!? だったら私も!」
「私も連れて行ってくれ!」
ロロルーシェが出掛けると聞いてリリルカもリリィも同行すると言うが、それを即却下する。
「それは駄目だ、この場所を守る者が減るのは困る。わかるなリリルカ?」
「だけど……」
「リリィお前もだ、闇の王が蘇るまでまだ時間がある。その時の為に力は蓄えておくんだ」
「わかったよ……」
二人が肩を落とす所にルルルが現れる、いつもの白衣を脱いでミリタリー系の服装一式で身を包んでいる。その後ろには二人の部下、リンとシャンが居た。二人は髪をだんご結びにして、旗袍と言う服を着用している。リンは赤色でシャンは青色の言わばチャイナドレスに身を包み、滅多に会う事の無いロロルーシェが怖いのだろうかルルルの背に隠れている。
「お待たせ致しました。ロロ様、部下にはリンとシャンが同行致します。あとカルも是非とも力になりたいと言って下りましたので、許可があれば連れて行きます」
「そうか、カルも役に立つかもしれないな。あとはラルが来れば直ぐにジヴァ山の麓の町まで向かう、そこにイサムを待機しているからな」
「転移魔法で移動されますか? それともルサ鉄道で移動されます?」
「あの場所には転移記録が無いからな、列車で行くしかあるまい」
ルルルと予定を話しながら、家の出口へと向かうとそこにラルが立って待っていた。クリーム色の綺麗な髪に軽装ながらも上下銀の鎧に身を包み、腰には一振り装飾の施された立派な剣を帯刀している。
「来たか、カルも行きたいと言っていたがどうする?」
「そうですか…それはお任せ致します。彼も見た目はあれですが、その小さな体が功を生む場合もあるかもしれません」
「そうだな。ルルル連絡しておけ」
「分かりました」
そして一同が家の外に出ると、そこには既にカルが待機して待っていた。頭だろう部分に赤い鉢巻を巻いている。
「随分と速いな」
「まだ連絡していないのですが…」
「カル! 持ち場を勝手に離れるとはどういう事です?」
ラルの注意にカルはビクッゥと卵の体を震えさせる。
「はっ! 申し訳ございません! ですが! ノル様が窮地に陥っているとお聞きしたからには、吾輩もお力になりたいと思って下ります! 是非ともお供に連れて行って頂けませんでしょうか!」
「カル……連れて行くそうですよ…全く貴方は本当に昔からせっかち過ぎます…」
「ラル! もう少し強く言わないと、この卵には効果がないわ!」
カルはラルが好きな事を知っているルルルは、そう言うがラルは超が付く程に鈍感なので四千年経つ未だにカルの気持ちに気付いていない。
「揃ったな。では直ぐに北の町ダリオに飛ぶぞ、三人とも留守は頼んだぞ!」
「うん! 分かった!」
「お気をつけて!」
「イサム様をお願い致します!」
ロロルーシェは指を鳴らし、転移魔法を発動させる。即座にリリルカとリリィとディアナ以外は光に包まれて、北の町ダリオの入口に現れる。
「さて行こうか、麓の町でイサムを拾うのを忘れない様にしないとな」
「そうですね、私どもは列車に乗るのが初めてです。緊張します」
「そう言えばそうだな…」
ダリオに到着したのは良いが、ロロルーシェを含むこの場所にいる者達全員が列車に乗った事が無かったので、駅員に話を聞きながら乗車する事になった。
ルサの駅員もまさか大迷宮の主とは気づくはずもなく普通に他の乗客と同じ様に接していたが、ロロルーシェを始めラルもルルルも全員綺麗なので足を止める乗客や駅員も何処かしらソワソワしていた。




