私だけの大晦日
………クリスマスから幾分の日が経った、今日は大晦日だ。
だというのに……やべぇ仕事が終わらねー!
「ふぅ……大晦日なだけあって、スケジュールがパンパンだな」
楽屋でちょっと一休み、コーヒーがうめぇ。
私は演奏家を職業としている、だからこういう日っていうのはめっちゃ忙しい。ほら、年末のカウントダウンってよくあるでしょ?それをよく人間達に頼まれるからやってるんだ。カウントダウンがなんだよ、日付が変わるだけじゃないか。妹達との交流を奪うだなんて控えめにいってふぁっくー。
「幻達……何してるのかな……」
幻は、きっと寂滅とエルドラドと一緒に過ごしているよね。
「……寂しさで泣いてなきゃ良いけど」
…あぁ、休憩時間も終わってしまうな。戻らないと。
ピロロロロ
「……電話?」
私はすぐに電話に出た。
「どうしたの幻」
相手が幻だったから。
「………お仕事、まだ終わらない…の?」
「それは……」
正直、次の演目で終わりなのだが、それこそ年末のカウントダウンを祝う曲。だから、帰れない。帰るわけにはいかない。
「ごめんね、まだ帰れそうにないんだ」
「……大晦日、なのに」
その寂しげな声が私の胸に会心の一撃。
「ごめんね…正月は一緒に遊ぼうね」
「…! いや、いいんだよ!姉さんは……お仕事頑張ってるんだもんね……!寂滅姉とエルドラドと一緒に帰り待ってるね!」
…………電話越しに、年越しを祝う言葉も伝えてあげられない。
「お仕事頑張ってね!姉さん!」
そうして、ぷつりと電話が切れた。
「…こういう日だからこそ、家族と過ごすものだっていうのに。私は、馬鹿だなぁ…」
…と、自嘲して舞台に戻ろうとした時
「おっすおっす」
「…エニグマ?」
エニグマ、私の友達だ。
「顔色が悪いぞ、何かあったのか」
「妹分が不足しているせい」
「お前からしたらそれは重大事変だな」
「早めに終わらせたいけれど、生憎とそう簡単にはいかなくてね」
「へぇ」
「それじゃ、私は行くよ……」
帰るのは朝方になるな、そう考えながら向かおうとする。
「ちょっと頼みごとがあるんだけどさ」
「………あ?」
半ばキレながら返答する。
「次の演目、私にやらせてくれよ」
「…え?」
「大丈夫大丈夫、お前のことはよく知ってるよ。私はお前なんだから。口調同じにすればバレないって。楽譜見せてくれ」
「だ…だけど!」
「妹と一緒に年末ってやつを過ごしたいんだろ?だったら、そうしろよ。まだ間に合うはずだぜ?」
「………ああ、この恩は絶対に返すよ!!」
雪で積もった世界を下に、私は空を飛んで家へと向かう。今までにない速度で空を駆ける。雪が顔面に当たって痛い、それでも私は止まらなかった。止まってはいけなかった。
「…………!」
家の前に降り立つと、そこには幻達が居た。エルドラドが翼を傘代わりにして二人の上に翳している。ある程度雪が溜まっているので恐らく電話して数分後からここに居たと思われる。
ゴーン、ゴーン
除夜の鐘が鳴る。私はみんなのもとに駆け寄り抱きしめる。
「……え?」
幻はどうしてここに私が居るのかわかっていない様子。
「ごめん……みんな」
そして、この言葉を鳴らす。
「あけまして、おめでとう…」
しばらくして、みんなもまた言った。
「あけまして、おめでとうっ。姉さん!」
「あけましておめでとう、今年もよろしく頼むぜ」
「あけましておでめとう!叡智姉、おかえりなさい!!」




