Ep3:旧体育館の怪音(後編)
星見小学校の旧体育館で起きた怪音事件。
僕たち「星見キッズ」は、倉庫から聞こえる不気味な音と、逃げ去った謎の人物、そしてその人物が落とした「地下」と書かれた鍵を手に入れた。
次の日、放課後、僕たちは再び旧体育館に集まった。
真相を突き止めるため、そしてこの鍵が示す「地下」の秘密を解き明かすために。
「シュウ、昨日は本当に怖かった…。でも、気になるよね、あの鍵」カナエが手に持った鍵を見つめながら言った。彼女の目は好奇心でキラキラしていた。
「うん。この鍵が何を開けるのか、確かめないと。旧体育館のどこかに、地下への入り口があるはずだ」僕はメガネをクイッと直し、ノートに昨日の出来事を整理した。
「僕、録音データをもう一回聞いてみたけど、やっぱり金属音が気になる。鍵を使って何か動かしてたのかも」タクミが録音機を手に持つ。
「昨日、倉庫の奥に何かあったよね。床に落ちた音もしたし…」リナがスケッチブックを開き、倉庫の内部を再現した絵を見せた。彼女の記憶力は本当にすごい。
「よし、俺がまた先に入る! 昨日みたいな影には負けないぜ!」ケンタが気合を入れて拳を握った。
旧体育館の中は、昨日と同じく薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。僕たちは倉庫の扉に直行した。
扉を開けると、昨日と同じカビ臭い空気が鼻をついた。でも、今回はもっと慎重に進んだ。
「シュウ、床を見て! ここ、昨日何か落ちた場所だよ」カナエが指差した。
倉庫の奥、床に小さな金属の破片が落ちていた。
タクミが拾い上げて、目を細めた。「これ…錆びたネジだ。近くに何か機械的なものがあるのかも」
「地下への入り口が、機械で隠されてる可能性があるね。みんな、床や壁を調べてみて」僕は指示を出した。
リナが倉庫の壁をスケッチしながら、突然声を上げた。
「シュウ、この壁…なんか変。木の板が一部だけ新しいんだ」彼女が指差した壁を見ると、確かに他の古びた木と比べて、1枚だけ新しい板があった。
ケンタがその板を叩いてみた。
ゴン…ゴン…
「…空洞になってる! シュウ、絶対ここだよ!」
「よし、開けてみよう。ケンタ、力貸して」カナエとケンタが力を合わせて板を外そうとした。
ギシギシと音を立てながら、板が外れると、そこには小さな錠前がついた鉄の扉が現れた。
地下への入り口だ!
「この鍵、ぴったりだよ」タクミが鍵を差し込み、回した。
カチャリと音がして、扉が開いた。冷たい空気が吹き上がり、僕たちは思わず身を縮めた。
「シュウ…本当に降りるの? なんか、ヤバい感じする…」ケンタが震えながら言った。
「真相を突き止めるのが探偵の仕事だ。怖くても、進むしかない」僕はノートを握りしめ、先頭に立った。
地下への階段は狭く、湿った空気が漂っていた。タクミが持ってきた懐中電灯で照らしながら、慎重に降りていく。
階段を下りきると、そこはコンクリートでできた小さな部屋だった。壁には古い地図や書類が散乱し、錆びた棚にはガラス瓶や工具が並んでいる。
「ここ…何なの? 学校の下にこんな場所が?」カナエが驚いた声を上げた。
リナが地図を手に取った。「これ…星見小学校の設計図だ。でも、地下の部屋なんて書いてないよ。隠されてたんだ…」
「シュウ、ここの棚、動いた跡がある。誰かが最近使ってるんだ」タクミが棚の埃を指差した。
確かに、棚の周りだけ埃が薄い。その時、部屋の奥から低い音が聞こえた。
ゴトン…ゴトン…
「まただ! 怪音の正体、絶対ここにある!」ケンタが懐中電灯を向けると、部屋の隅に古い木箱が置かれていた。箱は少しだけ動いていて、中から何かが動く音がする。
「開けてみる?」カナエが僕を見た。
「うん。でも、慎重に。タクミ、録音準備して。リナ、箱の周りをスケッチして」ケンタが箱に近づき、蓋をそっと持ち上げた。
中には…大きなネズミが2匹! 驚いたネズミが飛び出し、箱がガタンと倒れた。
「うわっ! ネズミかよ! 怪音の正体、これだったのか…」ケンタがホッとしたように笑った。
「でも、待って。ネズミだけでこんな大きな音は出ない。もっと何かあるはずだ」僕は箱の底を見た。
そこには、小さな金属のリングが付いていた。リングを引っ張ると、箱の底が外れ、隠しスペースが現れた。中には、古い革のノートと、錆びた金属の部品が入っていた。ノートを開くと、かすれた文字で「星見計画」と書かれている。ページをめくると、戦時中の秘密施設についての記述が…。この地下室は、昔、軍が使っていた隠し部屋だったらしい。
「シュウ、これ…すごい発見だよ。学校の歴史に隠された秘密だ!」カナエが目を輝かせた。
「でも、誰かがここを使ってたってことだよね。昨日の影、あの人だろ?」タクミが不安そうに言った。
その瞬間、階段の方から足音が聞こえた。ドンドンと、重い足音が近づいてくる。懐中電灯を向けると、黒い影が階段を下りてくるのが見えた。昨日と同じ影だ!
「誰だ! 何してるんだ、ガキども!」男の声が響いた。
背が高く、黒いコートを着た男だった。顔は暗くてよく見えないけど、明らかに怒っている。
「まずい、逃げなきゃ!」カナエが叫んだ。
「ノートと部品、持ってくよ! 証拠になる!」僕はノートをカバンに突っ込み、みんなで階段に向かって走った。
男が追いかけてくる。
「そのノート、渡せ! お前らには関係ないんだ!」階段を駆け上がる僕たち。ケンタが先頭でドアを開け、体育館に出た瞬間、男がケンタの腕をつかんだ。
「離せよ!」ケンタが叫び、男の手を振り払おうとした。
「ケンタ!」カナエが叫び、男に体当たりした。男がよろけた隙に、僕たちは体育館の外へ飛び出した。
「校庭の奥に隠れよう!」リナがスケッチブックを握りしめながら走った。校庭の裏、茂みの影に隠れた僕たち。男は体育館の外に出て、辺りを見回している。懐中電灯の光がチラチラと動くのが見えた。
「シュウ、どうする? あいつ、絶対ヤバいよ…」タクミが震えながら囁いた。
「落ち着いて。このノートに何か重要なことが書いてあるはずだ。男が必死な理由もそこにある。まずは内容を確認しよう。そして…助けを呼ぶ」僕はノートを開き、ページをめくった。
そこには、「桜の木の下に隠された遺物」と書かれていた。
遺物? 願いの桜と関係があるのか? 男はそれを狙っているのかもしれない。
「シュウ、あいつがこっちに来る! どうする!?」ケンタが慌てて言った。
男の懐中電灯の光が、茂みに近づいてくる。僕たちの心臓はバクバクと鳴り、緊張がピークに達した。星見キッズは、この危機をどう切り抜けるのか――?
(後編 完)
次回への引き: Ep4では、シュウたちが男から逃げ切り、ノートに書かれた「桜の木の下の遺物」の謎を追う。男の正体や、星見小学校の過去がさらに明らかになり、事件は学校全体を巻き込む大きなものへと発展していく




