Ep11:校長日誌の謎(前編)
・夏休みの終わりと新学期
夏休みが終わりを迎え、9月の初旬、星見小学校に再び活気が戻ってきた。蝉の声が遠のき、朝の涼しい風が校庭の桜の木をそよがせていた。
通称「星見キッズ」は、夏休みに星見一族の不正を暴いた後、少しの休息を楽しんだ。しかし、シュウの心にはまだ引っかかるものがあった。
星見計画の古い日記に記された
「星見の真の目的は未来への希望を託すこと」
という言葉だ。
その意味を解明する手がかりが、どこかに残っているはずだと感じていた。
新学期初日の朝、校門で待ち合わせた5人は、ランドセルを背負いながら談笑していた。
カナエが元気よく手を振って言った。
「シュウ、お盆に海に行ったんだけど、めっちゃ楽しかったよ! でも、また事件が気になって眠れなかったんだから」
「そうなんだ。僕も夏休み中、星見計画のことを考えてた。まだ謎が残ってる気がするんだ」
シュウはメガネをクイッと直し、ノートを手に持った。
「夏の財宝事件でバタバタしてたけど、次は何が待ってるかな?」
ケンタがサッカーボールを足で軽く蹴りながら笑った。
「ねえ、夏休みの冒険、町中で有名になったよね。みんな、星見キッズのこと褒めてたよ」
リナがスケッチブックを手に持って微笑んだ。
タクミがタブレットを操作しながら言った。
「ネットでも話題になってる。星見一族の不正が明るみに出たから、町の開発計画が変わったみたいだよ」
教室に入ると、黒板には新しい担任、田中先生の名前が書かれていた。
田中先生は穏やかな笑顔の女性で、夏休み中の活躍を褒めてくれた。
「みなさん、夏休みに町を救ったなんてすごいね。星見キッズ、頼もしいよ」
シュウは少し照れくさそうに頭を下げた。
「ありがとうございます。でも、まだ星見計画の全部は分かってないんです。もっと調べたいんです」
田中先生は目を細めて言った。
「そうか。なら、校長室に古い資料があるかもしれない。許可を取るから、興味があれば見てみてね」
・校長室への訪問
放課後、シュウたちは田中先生の許可を得て校長室に向かった。
校長室は古い木の扉が特徴で、窓からは校庭が見えた。
校長の山本先生は白髪の厳格な男性で、机の上には古い書類が積まれていた。
「星見キッズか。夏休みの活躍は聞いたよ。星見計画の資料か…。確かに、古い校長日誌がある。だが、重要なものだから慎重に扱え」
山本先生が書棚から分厚い本を取り出した。
日誌は革表紙で、ページは黄ばんでいた。シュウが慎重に開くと、1940年代から始まる記録が並んでいた。
リナがスケッチブックで表紙を写しながら言った。
「これ、すごく古いね。星見計画のことが書いてあるかもしれない」
シュウがページをめくると、
「1945年9月、星見計画の最終目標は平和教育の基盤を築くこと」と記されていた。
カナエが目を丸くして言った。
「平和教育? 財宝や不正とは違う目的みたいだね」
「うん、でも詳細が書かれてない。『基盤の鍵は地下に隠された』ってあるだけだ」シュウがノートに書き込んだ。
タクミがタブレットで校舎の設計図を調べた。
「地下…。夏に見つけた地下室とは別の場所かもしれない。旧体育館の隣に小さな倉庫があるけど、そこが怪しいよ」
「じゃあ、明日探してみよう!」ケンタが元気よく提案した。
・謎の訪問者
翌日、放課後、シュウたちは旧体育館の隣にある小さな倉庫に向かった。
倉庫は錆びた鉄扉が特徴で、草が生い茂っていた。
タクミが錠をハックしようとした時、背後から足音が聞こえた。
振り返ると、見知らぬ男が立っていた。
黒いスーツを着た中年の男で、冷たい目つきをしていた。
「お前たち、星見計画を嗅ぎ回ってるな。やめなさい。それ以上進むと危険だ」
「あなた、誰ですか? 星見一族の関係者?」シュウが冷静に尋ねた。
男は一瞬黙った後、笑いものだと言わんばかりに言った。
「私の名は関係ない。だが、星見計画の秘密は一族だけで守るべきものだ。日誌を元に戻せ」
「それは無理です。真実を知る権利があります!」カナエがきっぱりと言った。
男はポケットからナイフを取り出し、威嚇するように構えた。
「なら、力で止めさせてもらう」
「逃げよう!」リナが叫び、5人は倉庫の裏に隠れた。
男がナイフを振り回しながら追いかけてきたが、茂みに足を取られて転んだ隙に、シュウたちは校舎の方へ走った。
「シュウ、あの男、誰だったんだろう? 怖かったよ…」ケンタが息を切らしながら言った。
「分からないけど、星見一族の残党かもしれない。日誌を守るために動いてるんだ」シュウが考え込んだ。
・夜の決意
その夜、シュウは家でノートを広げ、事件を整理した。
窓の外からは虫の声が聞こえ、夏の終わりを感じさせた。
タクミから電話がかかってきた。
「シュウ、今日の男、監視カメラに映ってた。顔は隠れてたけど、動きから身長や体型が分かる。データベースで調べるよ」
「ありがとう、タクミ。明日、また倉庫に行くべきか迷ってる。危険だけど…」シュウがため息をついた。
「危険でも、真実を知りたいよね。僕たちで解決しよう」タクミの声に力強さが込められていた。
「うん、みんなで相談して決めよう。明日、校庭で集合だ」シュウは電話を切り、ノートに「星見の平和教育とは何か?」と書き込んだ。
倉庫の謎と日誌の秘密が、シュウたちの新たな挑戦を予感させていた。
星見計画の真実が、地下に隠された鍵と共に明らかになる日は近いかもしれない。
(Ep11前編 完)




