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051_ラージ・スライム②

 スワローが池の真ん中でこけた。


「ちょっと! なんかここ凄いぬかるんでる!!!」


 しかし魔物は彼の叫びなんかお構いなし。巨大スライムは大きく飛び上がると、スワロー目掛けて飛び込んだ。

 

 あ…!!

 

 あまりに唐突なことで私もガスタも反応できない。スワローはラージ・スライムに踏み潰された。最後に「ぷぎゃ!」って断末魔が聞こえた気がする……。


 ス、スワロー!!!!!!!!!!!!


 ラージ・スライムはその後も地面を跳ね回っている。私とガスタは顔を見合わせると、恐る恐るスワローの潰された場所を確認した。ところがそこには彼の魔導書が落ちているだけで、スワロー自身の姿はどこにもない。


「あそこだ…!」


 …!?


 ガスタの指さした方を見る。なんとスライムの身体にスワローが貼りついていた。魔物が跳ねる度に彼の身体は前後左右へとしなる。


 不謹慎だが、ちょっと面白いな…。


「いくらアイツが若くてもこれ以上振り回されたらギックリ腰になるぞ」とガスタ。


「た、確かに…」


 スワローはぐったりして動かない。振り回され過ぎて酔ったのかもしれない。ここはダンジョンだ。どんなに自身があっても単身で突っ込むべきではなかったのだ。そんなスワローを視界の隅に置きつつ、ガスタは淡々と敵の戦力を分析する。


「大きさは強さだ…デカいものが厄介なのは仕事と同じだな」


「そうですね。あれだけ大きいと何処から手をつけるべきか…」


「ふん、デカいタスクがある時ほど明確に役割を分担するんだ」


 ガスタがそう言った直後、スライムが私達目掛けて飛び込んできた。私はそれを回避すると勢いよく駆けだす。


「そうだ、君がスライムのヘイトを集めろ。僕は指示とサポートに徹する」


「わ、分かりましたぁ!」


 私はとにかく逃げた。そしてスライムがこちらへの興味を失いそうになると攻撃を行い、また逃げる。ガスタは離れたところから私に支持を出しつつ、遠距離攻撃をスライムへと飛ばした。あのパーリーピーポーの二の舞はごめんである。スワローのようになりたくない一心で私とガスタはスライムを攻撃し続けた。連携と呼べるかは分からない…しかしお互いの役割を明確にしたことは大当たりだった。


 ――その後も淡々とヒット&アウェイを繰り返す。五分、十分、十五分と時間が経過し…スワローは終始スライムに貼りついていた。


「スロトン!」


【スロトン_投石強化の魔法】


 私の投げた石(いつもより大きめ)がぶち当たると、ついにスライムは形を保てなくなりドロドロと崩れ落ちた。三十分かけてなんとかラージ・スライムを撃破することに成功。魔物が光の粒になって消えると、どさりとスワローが地面に倒れ込んだ。


「俺の筋肉が死んだ…マジで一生分の背筋使ったわ……」


「単独で突っ込んでいくからだ。ちゃんと周囲を見るように言ったよな?」


 姑先輩ことガスタがチクチクとこぼす。スワローよ、その先輩の説教は長いぞ。なんなら同じ話題を複数日に渡って掘り返されることすらある。だが奴も今回のことで学習しただろう。ラージ・スライムに貼りつき振り回されるなんて経験はそう簡単に出来るものではない。


「なかなか面白かったぞ」


 ガーゴの団長が拍手をしながら近づいてきた。本当に面白いと思ったのか、皮肉なのかは分からんが…私たちは苦笑いを返した。狼の獣人――フリュウポーチは私達の戦いにはさして興味がなかったようで、砥石で武器の手入れを行っている。そんな彼女の鼻がピクリと何かに反応した。


「どうしたポーチ?」と団長。


「ビスケット…の匂いがする。他の誰かがこのダンジョンに来てる…な」


「マジかよ、先を越されちゃ面白くねえな」


 私たちは荷物をまとめると更に上流へと歩を進めた。道中でも魚人やジャコ、スライムといった魔物が次々と襲ってくる。運動できる私とガスタが攻撃を行い、視野の広いガスタがサポートを行う。何だかんだこの役割分担が一番しっくりきているのかもしれない。

 その後もスライムの群れを撃破したり、魚人のドロップアイテムをガスタと奪い合ったり、青い花の花畑でお昼休憩を取りながら…少しずつダンジョンを進んでいった。そしてダンジョン突入から七時間。私たちはついに川の上流へとたどり着いた。


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