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038_ガーゴファミリー①

リンの日記_四月十九日(土)


 私は休日を利用して冒険者ギルド――ガーゴファミリーを訪ねていた。

 無論、冒険者になる為ではないし、フリーとして依頼を受ける為でもない。(ワークツリーは副業禁止ではないが)フリュウポーチにラムスの話をするためだ。昨日、私達は胡散臭い男――グローフと遭遇した。そこで彼が余計な事をぶちまけてくれたせいで、フリュウポーチにもこの件について説明する責任があると思ったのだ。予定を確認したところ「明日は…暇だ」との事なので、ガーゴファミリーのギルドを訪ねる事にした。

 スイングドアを開けると、数名の冒険者がこちらを向く。やはりムキムキが多く私の場違いな雰囲気が強い。冒険者ギルドはどこもこんな感じで、田舎でもガラの悪い冒険者は多かった。知り合いがいると言っても居心地が悪い事に変わりはない。(アセロラを連れてこなくて正解である。)誰とも目を合わせるな、私は野ネズミ…。ちなみにくっ付いてきたラムスは大喜びだ。このチビドラゴンは新しい場所が大好きである。花粉症から回復したこともあり、いつもの二倍は騒がしい。


「二階もあるぞ!」


 ラムスは叫びながらどっかに飛んで行った。

 壁のコルクボードには無数の依頼書がところ狭しと貼り付けてある。これらの依頼はガーゴファミリー所属の冒険者かフリーの冒険者が受ける事が出来る。


[Cランク_ダンジョン「トレント」の攻略依頼]

[Dランク_オークの討伐依頼]

[Eランク_群生スライムの討伐依頼]

[Eランク_ゴブリンの討伐依頼]

[Fランク_薬草採取の依頼]


 この他にも色々な依頼があった。冒険者ギルドの依頼リストを見れば、その土地の魔物の動き、薬草の群生地が分かる。これもお婆ちゃんの教えだ。新聞よりこっちの方が頼りになるんだってさ。


「おい、そこの嬢ちゃん…見ない顔…だな」


 聞き慣れた声に振り返ると、フリュウポーチが立っていた。いつも通りの格好、オフと聞いていた筈だったけれど背中には大剣を背負っている。


「〝見ない顔〟じゃないと思いますけど…」


「ここで会ったのは…初めてだ」


「そ、そっか、そうですね」


 よく考えれば二人で会ったのは初めてだ。私達には友達が少ないという部分以外で共通点がない。私がマゴついていると彼女はテーブルを指差した。他のテーブルでは冒険者達が酒を酌み交わしている。私は「じゃ、じゃあ」と言って席についた。


「敬語じゃなくて…いい」とフリュウポーチ。


「あ、うん…」


「何か注文…する?」


「えっと、お酒って気分じゃないけど…ジンジャーエールくらい頼もうかな…?」


 それを聞いたフリュウポーチが右手をパタパタと振った。すると受付のところにいたお姉さんが私達のところへ歩いて来る。私の姉と同い年くらいだろうか。ちょっとセクシーなウェイトレスワンピで、赤白のボーダー柄が金髪とよく映えていた。あと胸が大きい。彼女は私達のテーブルの前で両手を腰に当てた。


「コラ、ポーチ! アタシを呼ぶ時はちゃんと名前で呼ぶように言ったでしょう?」


「魔法陣職人が…注文するって」


 フリュウポーチは彼女の注意をシカトして注文を促した。金髪女性の視線がこちらを向く。


「あらら、もしかしてポーチのお友達!?!?」


 彼女のテンションの上がり幅がすごい。思わず視線を下に逸らしてしまう。


「ど、どうも」


「アタシはこのギルドでウェイトレス兼、受付を務めるスキット。ポーチがお友達を連れてくるなんて初めてだよ! この子は恋人、友達どころか…知り合いすら作らないんだから。あ、ポテト出してあげるからちょっと待ってな!」


「は、はい…! あとジンジャーエールを注文させて頂きます」


「あいよっ!」


 ちょっと圧強めではあるが、面倒見の良さそうな人である。フリュウポーチのお姉ちゃんみたいな役回りなのだろう。(というかガーゴファミリーの女性はフリュウポーチだけかと思っていた)一方のフリュウポーチは「つーん」とそっぽを向いてしまった。確かにグイグイくるタイプは得意じゃなさそうだ。彼女はカバンから自分の水筒を取り出した。

 私達の間に沈黙が流れる。フリュウポーチは気にしてなさそうだが、私はちょっと気になる。さっきのお姉さんが戻って来た時、あまりに会話が弾んでなければ心配されてしまうのではないだろうか?


 ウェイトレスのお姉さん――スキットが私のジンジャーエールを持って現れた。ジョッキに注がれた特大ジンジャーエールが机に置かれる。

 

「はい、ジンジャーエール。あとこれはサービス」


そう言って彼女は大盛りのポテトフライを置いて行ってくれた。


「こ、こんなに沢山! ありがとうございます!!」


「お礼なんていいよ。これからもウチのポーチと仲良くしてね。この子この前だって――


「いいから、あっち行って」


 スキットはまだ話した足りなそうであったが、フリュウポーチはスキットの背を押して追いやってしまった。良い意味でスキットは彼女の天敵なのかもしれない。そう思うと少しおかしかった。


「アナタも…笑わなくていい」


「あ、ごめんなさい」


 フリュウポーチは少しご機嫌斜めになってしまった。今までクールな印象しかなかったからそれはそれで可愛いと思うけど。


「それで…昨日の話は?」 フリュウポーチが私に促した。

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