9話 出会
僕は宿屋で眠るところだった。
すでに僕の傍で寝息をたてているミアとルナの頭を撫でてみる。
寝ているはずなんだけど、気持ちよさそうな顔をしてくれる。 相変わらず二人は可愛い。
しかし、寝る時は僕は新しい肌着の上下で見た目はおかしくはないと思うんだけど、ミアとルナは下着姿だとちょっと子供らしくない恰好になるので、その上に以前着ていた肌着の上着を着せているのだが、獣人の村の肌着では見た目がダサい。 今度は眠る時の服を買ってあげようかな、子供らしいのがいいな。
僕は少し、楽しくなった。
僕の異世界での生活は今の所は順調ではある。
お金もまだ70万ギル以上あるし、素材屋に売れる魔物の死体も沢山保管してある。
武器は最強の村正。 防具もこの町で最高の物を選んだつもりだ。
しばらくは冒険者としてランクアップを目指しつつミアとルナの魔法の熟練度を上げていこうと思う。
とはいえ、さらに先と考えていくと、昔の事も思い出したりもする。
僕は田舎の山育ちだったけど、爺ちゃんと父さんのおかげで裕福な家庭で育つ事ができた。
ただ、母さんは僕が8才の時に父さんと離婚して、まだ1才くらいだった弟を連れて母さんは家を出ていったのでその後どうなったのかは分からない。 弟があのまま成長していたら、今のミアとルナと同じくらいの歳なんだろうな。
爺ちゃんは僕が小学校に入った時くらいに亡くなったので、洞窟での死闘の時に久しぶりに思い出すことができた。 あの頃の僕は本当に糞ガキだったなぁ。
それから、今まで父さんと暮らしていた訳だけど、母さんと離婚してから父さんは海外勤務とかよく行ってた良いところの会社を辞めて家でゴロゴロするだけのダメ人間になっちゃたんだよな。
爺ちゃんと婆ちゃんに世話になったからと、ちょくちょく家に来て父さんの世話とか、僕に色々教えてくれた湊さんが居なかったら、僕は早々に野垂れていたかもしれない。
あのまま肝試しに出かけなかったら。
僕は都会へ進学していく友人たちを見送って、地元に残って父さんの面倒を見続ける生活を続けていく人生だったろうな。
別に働かなくても家に余裕があったとはいえ、ダメ人間になった父さんと一緒に暮らし続けていく日々は僕にはとても辛かった。 でもしょうがないとも諦めてもいた。
遺書を父さんと湊さんに送ったとはいえ、あっ、一応一緒に肝試しに行った二人にも出したけども、おかげで今は割り切って異世界の生活を満喫出来ている。
もしこの先に使命とやらを果たして向こうへ戻れるとしたら、僕は戻る気はあるのだろうか?
僕の傍で気持ち良く眠っているミアとルナを見つめ、また頭をなでなでしてみる。
この子達は、獣人の村を出て僕と一緒に暮らすと決めたのだ。
まだこんなに子供なのにその決断は無謀とも思ったけど、素直に凄い事だと思う。
人間にさえ慣れていないと思うのに、多分、不安で仕方ないと思うんだけど、僕を頼りにしてくれている。
僕は二人の面倒を見ると決めたけれども、この可愛らしい子達の期待に応える為にも、なるべく幸せに育てていきたいと思っている。
あと、やっぱり飼い主は思った以上に大変なので番だっけ? これ以上番を増やすのは止めとこう。 なるべく僕が主体で責任を負わないように気を付けよう。
僕がこの世界で一人ぼっちにならずに済んだ温もりを、改めて大切にしようと心に決めた所で、僕も眠りについた。
次の日の朝。
朝ご飯を頂いた後、野営で使った下着を洗濯してそれを干していく。
今日は冒険者ギルドに行く事もないので、僕は戦闘用の赤い装備をストレージに納めているんだけど、ミアとルナは魔女っ娘衣装を装備している。 二人とも装備をとても気に入っているようだ。
普段は私服で良いと思うんだけど、まあ飽きるまでは自由にさせておくのがいいかもしれない。 普段着としても別段おかしいと言う感じでもない。 町中で鎧を装備してる人もいるにはいるしね。
なので、普段着の僕と魔女っ娘二人で、まずは昨日頼んだホーンラビットの肉と素材代を貰いに行くとしよう。
「ごめん下さい。」
「おう、ミナトモ。 昨日の素材代だな?」
店の中にいたビフトロさんは気さくに返事をしてくれる。
「あと、畜産の肉を色々売って欲しいかなと。」
「ふむ。 うちは買い取りが主で、卸す店は決まっているんだけどな。 個人に卸す相手は大体貴族の連中なんだよ。」
どうやら一般人に素材を卸してはいないようで、取引する個人も大体貴族等の富裕層のみらしい。
「だけど、これからも狩った食用にできる魔物を持ってきてくれるなら取引してもいいぜ。」
結構、狩りの対象で討伐される魔物でも、食用に狩って店に卸すとか素材として持って帰る冒険者は少ないようだ。 ストレージを使って魔物を移動させる人は僕が初めて見たらしいし、ストレージ持ちでも魔力に依存した効果の為、貴重な枠を魔物の死体で埋めるという概念は浮かばないらしい。 素材の回収は主に馬車の荷台等を用意して行うようだ。
もちろんこれからもホーンラビットは狩る対象なので、寧ろ渡りに船といったところだ。
「はい、これからも依頼と併用して素材は回収していく予定なんで、ぜひ。」
「とりあえず、ホーンラビットの肉は1つ銀貨25枚ってとこで、毛皮は銀貨2枚で引き取るが、どうだ?」
まあ、Eランクの魔物なので素材が安いのは当たり前、むしろお金になるだけ儲けものだ。
「はい。 肉は8体を買い取って貰って、2体は僕が引き取ります。 毛皮は10体買い取りで。」
「併せて銀貨220枚ってとこだが、解体料を貰って、金貨2枚と銀貨15枚を。」
そういって素材代を僕に払ってくれた。
「それで家の肉が欲しいってのはどんなのが欲しいんだ?」
「牛と豚と鶏ですね。」
牛は1頭がとても大きいので、ダイアーウルフより大きい。 半分の肉で銀貨50枚。
豚は1頭で銀貨50枚。 鶏は1羽で銀貨10枚で5羽を買い取った為、金貨1枚と大銀貨を5枚払った。
それでも今回のホーンラビットの素材代だけでお釣りがでるので十分だろう。
色々な肉が補充された為、これからの野営の食事がより充実するかもしれない。 ミアとルナもとても嬉しそうに肉を見つめていた。
「ご主人様、いろんな肉増えたにゃ。 お肉食べたいにゃ。」
店を出て並んで歩いているミアの言葉にルナも力強く頷いていた。
「でもなぁ、町とか宿で料理出来ないっぽいのが難点なとこだよな~。」
町中で料理をしてる風習はないし、それは町の周りもそう。 そして宿の部屋でお店の品以外を食べるってのもなさそうだった。 料理を町で楽しむには家を借りるか買うかしてこの町の住民として登録する必要がありそうだった。
何となくだけど、冒険者とかが税を免除される代わりに、割高で町にお金を落とす事が条件という事が見えてきていた。
冒険者を続けても住民になれば節約になるだろうけど、その分、この町に税を払っていく事になる。
長い期間この町に住む予定なら、さっさと住民登録することも考えた方が良いのかもしれない。
僕は何となく、これからの事を考えたりして、目的の服屋に辿りついた。
二人を連れて店内に入ると、この間の店員さんが声をかけてくれた。
「あら、この間の、え? お嬢さん達が来てる服というか装備って。」
僕の後ろのミアとルナを見て、店員さんが言葉を失っている。 やっぱ服飾を商売にしているだけにライバルな店の品も詳しいのだろう。
ミアとルナの着ている装備を眺めては羨んでいるけど、その本体を褒めてやってくれ。 装備のお蔭でより可愛い我が飼いネコとイヌを。
とはいえ、主の内心も知らずに二人は店員に自慢している感じではあった。 とても嬉しそうである。
「それで本日はどのような品をお探しで?」
「えっと、この子らに合う、寝間着って言うのかな。 下着でって言うのも品が無くてさ、可愛く見せれる奴で、あとできれば肌触りが良い素材で。」
「一応、良いものはあるのですが、ご予算はどれくらい使えますか?」
「まあ、あなたがお勧めする物を買ってあげるよ。」
正直、ルナの靴下にストッキングを混ぜてくれたのはセンスが良かった。 この店員は美的センスが高いと思う。
「わっかりました。 ではお二人様、奥に一緒にいいですか?」
店員さんに連れられてミアとルナが奥へと。
それからしばらくして、店員が二人を連れて戻って来た。
「お二人の好みも添えた品になりますが、ご主人も確認しますか?」
「いや、二人が気に入った物ならそれをいただくよ。 いくらかな?」
「はい! では、一着1800ギルのところを、併せて3000ギルでいかがでしょう。」
寝間着に銀貨18枚か、この間買った衣類に比べたら大分良い品なのかもしれない。
僕は店員に銀貨30枚を払った。 店員はとても喜び、また帰りにはおじぎをしてくれた。
もう新しい衣類で揃えておけるし、獣人の村の衣類は処分させても良いと思うと僕は思った。
それから、ダンカンさんの約束の日まで、三人で仲良く過ごした。
新しい寝間着は凄く肌触りの良い品で、めちゃくちゃ可愛くみえるシュミーズという感じだった。
旅の補充も十分だし、次回の依頼も準備完了という感じだな。
とりあえず、宿を一旦引き払ってからダンカンさんの所へ。
ダンカンさんは相変わらずだった。
そして毛むくじゃらの魔物は1体で金貨5枚で買い取ってくれた。 なので金貨50枚追加。
正直、依頼で稼がなくてもこの素材を売ってるだけで生活できそうだ。
毛むくじゃらの魔物は後、11体居たので、まとめて1週間でまた支払いという事でお願いした。
その後は冒険者ギルドに行って同じ依頼を受ける。
僕のストレージを使った素材売りの方が絶対稼げるとは思ってはいるが、まだ低ランクの依頼なのでここは信頼を積んでいくとしよう。
討伐依頼に出発する前に食事を済ませ、以前に馬車を借りた所でまた馬車を借りる。
そしてまた前回の野営地点を目指して町を出発した。
前回で思ったのだが、町の近郊ではダイアーウルフみたいなアクティブに襲ってくる魔物は居ないようだ。
討伐依頼の魔物も森の中に進まないと出ないし、森を抜けた平地は割と安全なのかもしれない。
とはいえ、この依頼をこなしていけば、少しづつ野営地点を変えていく事になるだろう。
森に沿って続く道がどこまであるのか分からないけど、一度森を抜けた所を確認しても良いかもしれない。
なるべくまだ狩っていない地点や地図を確認していく事も冒険の醍醐味だ。
という事で、今回は森の入り口ではなく先に進む事にした。
すると、森の道の中で開けた場所に馬車や荷物はないけど、野営した後を見つけた。
誰かが使っていたのだろう。 辺りに人の気配は無いから、このままこれを利用させて貰ったら準備が楽になるかもと思い、僕は野営した後の場所を今回の野営地点とした。
森の中とはいえ、十分に開けている為、多少の魔物の対処も楽だ。 馬も固定しておけるスペースも十分だ。 テントを用意したら、簡単に拠点が完成した。
まだ夕方には時間が余っているので、ジャイアントバットがでるまでには違う魔物を倒す事にしよう。
僕はミアとルナを連れて、森の中へと進んで行った。
「リィズ! 早く援護しろ!」
森に響く若い男の声、どうやらあの野営後のパーティーが居たようだ。 まだあそこを使うのだとしたらちょっと面倒な事になるかもしれない。 やっちゃったなぁ。
僕は一応挨拶しておこうと声がした方へ向かった。 ミアとルナは少し警戒した感じでついて来てくれる。
「この! この!」
ホーンラビットらしき魔物を若い男性が片手剣で懸命に殴りつけていた。 元々焼け痕のダメージもあった為か、男の攻撃でようやく仕留めたといった所だろう。
そんな男性の離れた所に女性が息を乱して座っていた。
「どうもこんにちは。」
僕が気さくに話かけると、二人はこちらに注目する。 その表情から警戒心が見えるのはしょうがないだろう。 ミアとルナも僕を陰に警戒しているし。
「あ、あんた一体何だよ?」
ちょっとぶっきらぼうな男だが、顔立ちは整ってるし金髪がそれを際だたせた感じだ。 声の感じの通り年は僕より少し若いのかもしれない。
「僕らはEランクの冒険者で、この森の魔物を狩りに来たんだけど、君達も同業かな?」
男性は女性と顔を見合わせてから、僕に返事をする。
「俺もこいつもEランクの冒険者だ。 依頼のホーンラビットを狩りに森で戦っている。」
どうやらホーンラビットの依頼が被ってしまったようだ。 この辺りは他の魔物を狩るか違う場所に行った方が良いかもしれない。
とは言え、彼等の状態も気になった。
男性は粗末な剣、おそらく鉄ではない、銅の剣かな。 それに私服姿だった。
そして女性も、粗末な小さな杖と厚手の私服で、二人は駆け出し感が十分だった。
更に、二人ともいつから森にいたのか分からないが、顔とか衣類が少し汚れているのが目立った。
「ホーンラビットなら僕らも依頼を受けているんだけど、そっちの達成度はどれくらいだろう?」
「俺達はこいつでようやく5匹目ってとこだな。 頑張ってもう1日狩ったら、一旦町へ戻らないといけない。」
そういう男の声が力ないのが気になる。
「ホーンラビットがあまり見つからなかった感じかい?」
「いや、これも何も、もっと上手くやれると思ったのに。 リィズがちゃんと攻撃当ててくれないから!」
そう言って、男は息を整えている女性を怒鳴った。
「ご、ごめんなさい。 でも、もう魔力が余り無くて、少し休まないと。」
「あ~もう、本当に足ひっぱってくれるよ。」
男は女性に文句を言っているようだ。 そして女性はただ小さく縮まっている。 ちょっと可哀想に思ってしまった。
「もうじき夕方になると思うけど、どうするんですか?」
「ジャイアントバットはやっかいなんで、明日の為に今日は早めに野営地点に戻るかな。 ほら、行くぞ。」
「待って、まだちょっと休ませて。」
「僕ら多分君達が使っていた野営場所を拠点にしてるから、そのまま道具とかに触らないなら焚火とか場所は使って貰っていいよ。」
「あ、そうなんだ。 あなた達はこれからホーンラビットを狩る感じですか?」
「ホーンラビットだけじゃないよ。 ジャイアントバットとキラービーも狩る感じだね。」
「ジャイアントバットとキラービーもなんて凄い。」
そう言って女性が僕の後ろにいるミアとルナを見つめていた。
やはり飛行する魔物は魔法が有効なので、恰好から魔女っ娘な二人が倒してくれるのを察してくれたようだ。
そんな女性にちっと舌打ちさせて男性が女性に話かける。
「せっかくだから、野営地点を使わせてもらおう。 ほらさっさと行くぞ。」
彼等が去った後に僕らも森を探索に入る。
彼等が倒したホーンラビットはとても素材に使える状態では無かった。 勿体ないけど、まあこれが普通なのかもしれないね。
ほどなくして、ホーンラビットやキラービーを発見し、ミアとルナの魔法で片付けた。
ホーンラビットはルナの風魔法で倒す為、ジャイアントバットはミアがなるべく倒すように心がける。
二人とも初日のような光景が嘘のように普通に魔法が使えるようになっている。
相変わらず僕が魔法を援護するとはいえ、その発動までの魔法が安定してきている。 威力や効果を上げるにはもっと強い敵を倒す必要があるかもしれないが、今はこれくらいの魔法で十分だろう。
今日は余り狩りの時間も無かったという事で、魔力切れもなく討伐依頼が進んだ。 ジャイアントバットが3体、キラービーが2体、ホーンラビットが2体といった感じだ。
明日は、あっちのパーティーが狩りをするなら、少し違う方向で狩りをした方が良いかもしれないな。 どっちに転んでも、Eランクの依頼は1週間もかからずにこなせるのが強みだな。
そうして、ミアとルナを連れて僕達は野営の準備をしていた拠点へと戻った。
拠点につくとあの二人が焚火でくつろいでいた。 ご飯はすでに済ませているのかもしれない。
「それじゃ、僕らはこれからご飯の用意に入ろうか。」
僕の声にミアとルナが元気に返事をして料理を手伝ってくれた。
色々な肉を用意できたとはいえ、一気に使うのは勿体ない。 なので、ミアとルナにそれぞれで肉料理を作る事で納得して貰ったが、肉食な夕飯になっちゃってるな、最近。 美味しいから良いんだけど、健康にどうなんだとは思う。
用意ができ、焚火に鍋と、焼く為の用意を進めていると、焚火でくつろいでいた二人のお腹がぐぅ~と結構大きな音をさせた。
「えっと、そっちは食事は済ませたんですよね?」
「今日の分は食べたよ。 後は暗くなったら寝るだけだけど、まだ眠れないって感じかな。」
ぶっきらぼうな感じで男が話てくれるけど、まだお腹が空いているのが分る。
それにしても、寝るというにはテントも張っていない、このまま焚火を前に座って過ごすつもりだろうか?
そのまま僕らは食事に移っていくのだが、ミアとルナは美味しそうに自分達が作った肉料理を堪能していた。
しかし、僕は二人が気になって仕方ない。
しょうがないので、二人に鍋をよそってやって料理を勧めてみた。
「良いのかよ?」
「まあ、要らないなら‥‥。」
僕がそう言う間もなく僕の手からよそった器を男が取り上げる。 どうやらとても欲しかったっぽい。
男が女性に器を渡した所で、礼を言って来る。
「まあ、ありがたく頂くよ。」
女性もたどたどしく頭を下げると、二人は料理を口にした。
「うんめぇ。」
「おいしい。」
同時に感想を言って、そして美味しそうにぺろりと食べ終わる。 ミアとルナもそれにあっけを取られるが、構わず食事を再開させた。
僕は、ミアの肉料理を残して、ルナが作ってくれた鍋を自分の分と残りを二人に分けてあげた。
ミアはともかく、ルナは少し不機嫌になったがしょうがない、寝る時にちょっと多めに撫でて機嫌を取ってあげよう。
「えっと俺はアムス、まあ戦士だ。 そしてこっちが。」
「私はリズリットです。 火と土の魔法が使えます。」
お腹が膨れて安心したのか、二人は警戒心を解いてくれたようだ。
そしてリズリットは火と土の魔法が使えると言うとても優秀な魔法使いだ。
「僕は水巴 宗馬です。 こっちが僕の番のミアとルナ、二人とも獣人族なんだ。」
なんて紹介してみた。
ミアは愛想良く笑ってみせたが、ルナは相変わらず機嫌が悪いようです。
「主様、私は食事の片づけをしてきます。」
「にゃ? ミアも手伝ってくるにゃ。」
食事を終えたルナが早々に片付けを始めたので、ミアも慌ててそれを追っていった。
「二人はいつから狩りを?」
「今日で5日目かな、目的の数までちょっと届かなかったけど、そろそろ戻らないと食料が余り無くて。」
どうやら1日で1体ペースで狩っていた感じだろうか。 まあ、1日を徒労で過ごすのは精神的にもきついだろう。
そして途中で帰るとしても、報酬を受け取らずに補給できるのだろうか?
「町で一旦補給する感じでしょうか?」
「いや、もう路銀も怪しくて、これ以上借金もできないから、一旦ギルドで個別分の報酬を貰おうかと。」
それだと、固定報酬が無いからかなり少ない報酬になってしまい、次はまた初めから狩り直しになってしまうだろう。
「もうすぐ借金の支払い日なんで、ちょっと討伐依頼を受けてみたんだけど、思ったようにいかなかった。」
そういってアムスは悔しそうに顔を歪める。
それを聞いているリズリットの顔は先ほどの安堵さもすでに無く、表情は暗い。
「あの、私、魔法で何とかしようと頑張ったんですけど全然上手くいかなくて。 こんな事は失礼なのは分かっているんですけど、あなた方の狩りを見せて貰えませんか?」
「おい、リィズ!」
「だって、このままじゃもう私達終わりだよ? 分かってるの?」
リズリットに言われているアムスは苦い顔をさせている。 彼らがとても厳しい状況であるのは察したけども、この先もこのような事が続くのは目に見えている。
だからこその学びとも思える。
お願いしますと頭を下げるリズリットに、また同情してしまう僕だった。




