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異世界旅行記 ~異文化交流って大変だね~  作者: えろいむえっさいむ
1章【異世界における異文化交流についての課題と考察、及びその実践】
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12・旅立ちのとき

前話のあらすじ「魔導は発動できたけど指切った」

 目覚めると、ここ最近で見慣れた天井だった。


 目覚めは最悪だった。右手の先がジンジンする。気絶する前に何があったかを鮮明に覚えていたため、自分の右手がどうなっているのか見なくてもわかっていた。恐る恐る右手をシーツから引きずり出す。シーツにこすれる僅かな刺激すら痛い。


 右手には、これでもか、というくらい包帯が巻いてあった。中指と薬指が包帯でぐるぐる巻きにされている。また添え木もされているのだろうか、何か固いものが包帯の内側で一緒くたに巻いてあり、2本の指が固定されている。まるで異世界の人みたいな手になったな、とどうでもいいことを思い浮かべて苦笑した。


 左手で切れたはずの薬指を触ろうとして、だいぶ迷ってから、先端に軽く触れる。触れたことを後悔するほどの激痛が薬指の根元から生じる。どうやら、切れた指を無理やりくっつけて固定してあるのだろう。このまま指がくっつけばいいけれど、そうじゃないならむしろ取り外した方がいいのだろうか、と悟は悩む。神経がくっついてくれたら最高だけれども、もし指が壊死でもしたら大変なことになる。日本の病院ならくっつけてくれそうだけど、ここは異世界だ。日本の高度な医療技術と同じだけの施術を期待しないほうがいいかもしれない。


 ただ、魔術なんてある世界だし、治癒魔法とかあったらうれしいなぁと悟は思ったが、そのことを否定した。治癒魔法なんて便利なものがあるなら、とっくに左肩の傷も治してもらっている。悟は目の前が真っ暗になった気がした。


 落ち込んでいると、アイツァが部屋に入ってきた。不安そうな、心配そうな顔をしてくれている。やっぱりお人よしな性格なんだろう、その表情にだいぶ悟は救われた気がした。


 アイツァは隣に座ると念話の球を握った。悟も枕元に置いてある玉を右手で取ろうとして、すぐ左手に変えて握った。


『汝、指の具合は如何?』


『大丈夫です、たぶん。めちゃくちゃ痛いけど』


 悟は念話をするとき、頭の中のノートに文字を書くイメージを使ってみたら、アイツァに驚いた顔をされた。どうやらきちんと伝わったらしい。今までケータイのメールを打つイメージで文章を送ろうとしたがうまく伝わってなさそうだったからである。やはり、きちんと文字を理解し、把握しながら念じたほうが伝わりやすいようだった。


 悟は右手を見ながら恥ずかしそうに呟いた。


『まさか自分の使った魔導で大怪我するなんて思ってませんでした。注意が足りなかったですね』


『……否、我の注意が足りなかったゆえ。魔術が自らの身体に影響する可能性を示しておらなんだ。師匠としての不徳なり。謝罪する』


 綺麗な声で「ごめんなさい」とアイツァは異世界語で謝った。悟は気にしないで、とか大丈夫、とか伝えたかったが、まだ異世界語はそこまで覚えていない。仕方ないので念話で伝える。


『気にしないで、そのことに気付かなかったオレも悪い。火の魔術が使えて調子に乗ってたってのもあるし』


『……そうか、感謝する』


 アイツァは頭を下げた。悟はもう一度『気にしないで』と伝えると、右手の包帯を見ながら聞いてみた。


『それよりも、切れた指はどうなったの? まだ痛むけどくっついてるのかな? それとも治癒の魔術とかあるの?』


 アイツァは首を振った。


『治癒の奇跡は我には使えず。水の魔術にて血液を凝固させ、無理やり傷口を添えただけなり。幸いにして、切断面が綺麗だったゆえ、時が経てば元通りになるやもしれぬ。再び動くかどうかはわからぬが……』


 ……あ、やっぱりあるんだ治癒の魔術。魔術じゃなくて奇跡って言ったっけ?


 悟はとにかく、気絶した自分を治療してくれたアイツァに感謝した。下手くそな発音で「ありがとう」と異世界語で言い、その後念話で『怪我の治療大変だんったろうし、ほんと助かった』と伝えた。


 アイツァはそれを聞くと、首を振ってから悟の顔を見た。そんな真正面から凝視しないでほしい、美少女にそんなに真っすぐ見つめられると顔が赤くなる。


『否、修行中の弟子の身の安全は師匠が保証するのが筋なり。故に我は、汝のその傷に対して責任あり。時と金銭の余裕はないが、致し方なし。治癒の奇跡を受けに向かう。少し待て』


 そう念話で告げると、アイツァは駆け足で部屋から飛び出ていった。扉も開けっ放しである。廊下を走る足音と、階下からガチャガチャする音が聞こえる。


 呆気にとられて呆然としていると、少し経って階下から『支度ができたゆえ急いで1階に来られよ』と念話が飛んできた。念話って遠距離でもできるんだなと今更ながら知った。


 悟は右手を気にしつつもゆっくり起き上がって部屋の外に出る。今まで厠と寝ていた部屋以外の場所には行ったことがないので少しだけ迷う。アイツァが走っていった方向に進んでいくと階段があり、そこを下るとリビングのような開けた場所に出た。そこにはアイツァの姿はなく、変な人型のロボットみたいのが2体いて悟は驚いた。幼稚園児が粘土をこねて作った顔のない人形のようなものだ。ただのマネキンかと思ったが、そのロボットは悟を認識すると、明後日の方向を指さした。あちらに行け、ということらしい。


 粘土ロボットに少なからずビビりつつ、悟は指を指した方向に向かうと、外へと向かう扉があった。家を出る。家の外は新鮮な空気と、森特有のさわやかな匂いがあった。今まで家に篭っていた分、久しぶりの外の空気はおいしかった。


 外にはアイツァが、いつも来ている黒のローブで、頭にフードを深くかぶって立っていた。背中にはアイツァの小柄な体が隠れるほどの大きなリュックを背負っていた。アイツァは悟を見ると、念話の球を握った。悟も慌てて球を握る。


『街に出向くなり』

次話「ようやく家の外に出る引き篭り2名」


※うわああああぁアップロード遅れたあああああぁすいませええええぇん。

 書き溜めておいた分が尽きた+ちょっと帰宅が遅れたのが原因です。本当申し訳ないですm(_ _)m

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