はじめてのお見合い
お見合い
それはドラマの中の出来事で、振り袖をきた美女とお金持ちだけどさえないマザコン男がホテルのラウンジや料亭の一室で向かい合い、鋭角に切った竹に水を注ぐ装置がカコンカコン鳴り響くなか
「ご趣味は?」
などと形式的な会話をするもの
たまにイケメンが乱入して美女を連れ去ってしまうこともありますが
身近でそんな話は聞いたことがないですし美人でもない私には当然、縁のないものだと思っていました。
「あの、ご趣味は?」
喫茶店のすみのテーブル、向かいに座る男性がドラマのセリフそのままを口にします。
お見合い写真では黒かった髪が茶色になっていて(今日のために染めたのかな)と思うと申し訳ない気持ちになります。
「ズズッ」
横でスパゲティをすする音。知り合いのおじさんで、お見合いをセッティングした張本人です。
お見合いなんてかしこまった席、とてもじゃないけど耐えられないと恐縮する私に
「大丈夫、今はそういうんじゃないから。嫌だったら断ればいいし。友達作ると思って気楽にさ」
と営業の仕事をしているおじさんの口はうまく、親たちからのプレッシャーもあり
大きな窓を背に人の好さそうな笑みを浮かべるMさんの向かいに座ることになったのです。
(ああ、顔が熱い)
出がけにやってた天気予報は、5年に1度の冬の嵐を告げていたのに..いま私は窓からさす容赦のない西日に目を細めています。
さぞかし不細工だろうと思いつつ、先ほどの質問の答えを探しているとおじさんが言いました。
「それじゃあとは若い人たちで..ねっ」
口の周りをトマトソースだらけにして、微笑んでます。
(そんな急に?!)
戸惑う私を無視して、おじさんはおしぼりで顔をふくと伝票を手に颯爽と去って行きました。
「行っちゃいましたね…あははっ」
「ははは」
笑ってみますが、顔がひきつっています。
震える手でミルクティーに砂糖を入れると、砂糖はミルクの膜に包まれカップの底に沈んでいきました。
とんだことになってしまった。
初めてのお見合い、開始15分で二人きりにされてしまいました。
強い西日は相変わらず私の顔を照らし、肌から容赦なく水分を奪っていきます。
あたり障りのない会話をしながら、頭では別のことを考え始めていました。
向かいに座った彼
Mさんはぽっちゃり体型で素朴な外見。
学生時代は女性に縁がなく浮かない存在だったものの、人付き合いは良く先輩にはかわいがられてきたってタイプに見えます。
ご実家は自営業をされており、この町では独占的に仕事が請け負えるほど名の知れた会社でした。
そんな家の長男として周りからの期待も大きいでしょう。きっと親やおじさんの勧めを断れずにここに座ってるに違いない..
(お見合いは初めてだって言うし、まぁ今更相手が私であることは変えられないけど少しでも楽しんでもらえたら)
私は生来のサービス精神を発動させます。それからしゃべりにしゃべり、相手の話に耳を傾け赤べこのごとく同意。
Mさんに良い思い出をもって帰ってもらうことに全力を注ぎました。
― 1時間後 ―
「緊張してたんですけど、お見合いって楽しいですね」
うれしい言葉いただきましたー!
(いよしっ!!これだけ西日にあたり、後でシミになったとしてもそれは女の勲章。報われるってもんだね)
達成感に満たされ帰り支度を始めます。
「じゃあ、映画にでも行きましょうか」
(映画?!)




