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ロックリザードの死体を載せるために新たな73式トラック領から取り出し、そこにロックリザードを載せた。トラックは荷台に幌の付いていないものを使った。ファティの見た目は小柄な少女の体なのにロックリザードを易々と持ち上げてみせた。
トラックに死体を載せ終わるとそれを領に戻して、今度は人を運ぶためのトラックを用意した。先ほどと同じ幌が付いていないトラックを5台用意した。幌が付いていない方がルブアの兵士たちも安心できるだろう。あとルブアにトラックに乗ったまま行っても、味方の兵士が乗っているってことで警戒させずに済むかもと要らないことを考えた。
トラックを5台準備したのち領へ馬と馬車を運び込んだ。馬は軍馬ということで良く調教されているようだった。馬を触ったことのない石田であったが手綱を握って引くだけでイメージ通り動いてくれた。特に苦労することもなく馬たちを領に運び込んだ。
ロックリザードの死体を積み込む時から一連の作業中、ルブア兵らからの視線と歓声が鬱陶しかった。ファティがあの見た目で死体を持ち上げたことは石田も一緒に驚いたが、トラックの運転席から京藤らが降りるだけで「おぉ!」と歓声が上がるのだ。男の野太い声でな!というか果ては馬車を引く馬を移動させるだけでザワザワしていたのには正直辟易した。
まぁ、いろいろあったが計画通り死体の回収、トラックの準備、馬車の収納を終えた。ロミナ達は指示通り1組20人程度で5つのグループを作っていてくれた。それぞれトラックに乗り込む。人間の姿をしていたファティはトラックに興味があるようだったので石田の運転するトラックの助手席に乗せる。ファティは器用なものでトラックに乗り込むとその翼と尻尾を変身の魔法で隠していた。全員の乗車が完了し、ルブアに向かって出発したのだった。一応安全のために、古井には上空から周辺を監視しておいてもらった。
ルブアに到着したのはその日の16時頃の事だった。街道とはいっても現代のようなアスファルトが敷かれているわけではなく、砂利道だ。ただ馬車が通るため意外とわだち等々あって路面の凹凸が激しかった。おかげで速度が出せず意外と時間がかかってしまった。乗り心地が悪いこと以外は特に何かに遭遇することもなく到着できたので、その点はよかった。ただ・・・石田は車を運転しながら車酔いする・・・という初めての体験をしたのだった。(一般に、車酔いしやすい人間でも運転すると車酔いしにくいと言われている)
ルブアの入口には冒険者と思われる恰好をしたグループが数組いた。遠くから砂煙を上げつつ接近するトラックに驚いて軽い騒動が起こったそうだ。幸いアディが門番をしていたおかげもあって、その騒動は大きくなる前に沈静化された。
―キキー(×5)
トラックが街道から90度脇にそれて止まる。街道をトラックがふさがないように配慮して止まったのだ。川の字をというには台数が多いが・・・それぞれ横に並んだ状態で停車する。それぞれのトラックから乗員が降りる。意外なことにトラックを降りるルブア兵の中には乗り物酔いをしたものがいなかった。そう、唯一青い顔をして車を降りた人物が一人。石田だ。
石田は運転席から降りるとそのまま膝をついて四つん這いの姿勢になる。
「うっぷ・・・」
助手席の扉が開き軽い足音がパタパタと駆けてくる。ファティが四つん這いの石田の脇に来て話しかける。
「・・・お主大丈夫か?」
「・・・・・・フー・・・ウプっ・・・何とか・・・」
絞り出すように回答する。ちょうどとなりのトラックから降りた京藤とナイチンゲール(同じ車両に乗っていた)が石田のもとに歩いてやってくる。
「大丈夫かい?」(京藤)
「司令~・・・もしかして車酔いですか~?」(ナイチンゲール)
ナイチンゲールが石田の隣に屈み、その背中をさすった。異常を感じとったのか湯川達も石田のもとに集まった。
「あれ~・・・もしかして車酔い?・・・ちょっとかっこわる~・・・」(湯川)
「え?司令・・・運転されてましたよね?」(瑞山)
「まぁ、あの道路では車酔いしても仕方ないですよ。私も辟易してましたしね」(間宮)
「あ~、あたしもそれは思った。道路整備きちんとやってんのかね~・・・土木系を預かる者としてはあの街道は許せないわ~・・・」(湯川)
間宮がタブレットを操作して薬を召喚した。
「司令。これ、酔い止めです。水が必要ですから・・・天幕召喚できますか?」(間宮)
「・・・りょうかい・・・」(石田)
石田もタブレットを取り出し天幕を召喚する。
「イスズ。司令を頼むね。ボク達の方で馬車の搬出とかやっとくから」(京藤)
そういって京藤達は天幕に歩いて行った。少ししてゲートが開いた。ナイチンゲールら3人がゲートに向かう中、1人京藤が石田の方へ歩いてきた。ありがたいことに水をコップにつぎ、石田の元まで持ってきたのだった。
「はい。水だよ」
「・・・ありがとう」
石田がそれを受け取ると、京藤は石田の脇を抜けトラックの後方、ルブア兵たちの方へ歩いて行った。石田は受け取った水で間宮の差し出した薬を飲む。飲み込んでおよそ10秒ほどで驚きの効果が表れた。胃のあたりのムカムカする感触や世界が回るような眩暈がきれいさっぱり無くなる。
正直かつての世界で散々車酔いに悩まされた石田は、この効果の高さに驚く。
「あれ?」
(こんなに早く、完璧に症状が改善されるとは・・・これも異世界に来た影響?・・・それともゲームの効果なんだろうか?)
「如何したのじゃ?」(ファティ)
「あー・・・いや、車酔いが・・・全くなくなった?」
「そうですか。それはよかったです」(間宮)
石田は立ち上がり体の状態を確認する。特に異常は感じられなかった。周囲をぐるっと見回して(と言ってもトラックとトラックの間にいるのでそんなに見るものはないが)見ると、ゲートの方ではナイチンゲールたちが馬を引いて出てきているところだった。トラックの後方を見ると京藤がロミナと話をしているようだった。
(あれ?・・・俺することない?)
実際見ているうちにナイチンゲールらが6台の馬車を取り出してしまったし、京藤がロミナ達を連れて馬車に行き荷物の確認を行ってもらっている。(石田達が盗むようなことはしないが、念のための確認)ナイチンゲール達はそのままトラックの荷台に乗り込み落とし物等が無いかを確認していった。
『あのー・・・司令。古井です』
石田のタブレットに通信が入る。
「あ、はい。こちら石田です」
『ルブアにも到着しましたし、そろそろ警戒監視任務を終えてもいいと思うのですが・・・』
「あっ。・・・そうだね。古井さん。帰還してください」
『了解。RTB』
通信を終えてタブレットをしまう。体からすっと力が抜ける感触がある。パントムが帰還したのだろう。京藤が石田のところまでやってきて報告した。
「トラック内に忘れ物は無し。馬車の方の検品が終わったら引き渡し完了だよ」
「ありがとう。助かった」
「どういたしまして。体調の方は大丈夫かい?」
「あぁ。間宮さんからもらった薬が効いて酔いは収まったよ」
「よかった。でも一応念のために天幕の方で休んでいてよ」
「分かった」
石田は素直に京藤の指示に従った。その後約10分ほどでルブア軍の検品作業も終わり、何もなくなったものがないことが確認された。そして一応トラック内の落とし物もロミナに確認してもらってから5台のトラックを領へと片付けた。
その後、ロミナ達が天幕にいる石田のところまで来てお礼を述べた。護衛を依頼しようと思っていたが石田らの好意でルブアまで運んでもらえたこと、そのおかげで行程が短縮できたことを特に感謝していた。護衛費用(運送費用?)の支払いは明日の昼頃に城へと受け取りに来てほしいということでこの日は別れた。ロミナ達がルブアに入るのを見届けてから(何せ100人程度の部隊だから動かすのも少し時間がかかった)石田達も天幕を片付け、門をくぐった。
門番にはアディがいて納税の処理をお願いした。この時にトラックが近づいて騒ぎになりそうだったことを伝えられた。その騒動を抑えるのに大変だったという愚痴とともに。
税を納めた後石田達は冒険者組合にに向かう。
(さてさて、ラージとか、ギガントとか混ざってるけど、ちゃんと依頼達成になるだろうか?)
私は車酔いしやすいタイプの人間です。
驚いたことに自分で運転していても車酔いしたことがあります。
って言っても路面状況が悪いこと、当日体調が悪かったこと、
その日の運転が荒かったことなどが影響した結果ですけど・・・。
まぁ、その経験をして以来運転は慎重に、車酔いしにくい運転を
心掛けるようになりました。




