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後方兵科が異世界転移!?  作者: お芋さん
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35話で「渓谷」と表現していましたが・・・間違っていました。

「峡谷」と修正させていただきました。


渓谷・・・山にはさまれた、川のある所。

峡谷・・・両岸が高く切立った急崖から成る幅の狭い谷。


うぅ(泣)・・・己の学のなさを恥じるばかりです。

 古井とパントムの索敵能力が高いおかげで、ロックリザードは簡単に見つかった。場所は街道から少し離れた単独の小高い岩山の山頂付近。5匹ほど確認された。山頂と言っても、岩山は山裾に少し緩やかな斜面があり、ある所から急な角度で立ち上がり、すぐに緩やかな斜面へと変わる。山の断面を取ればそれはきっとブーニーハットのような形をしていることだろう。ただ、ブーニーハットの様に円状に広がる岩山ではなく楕円・・・それもかなり細長い楕円の形に広がる岩山であった。

 山頂部分はそれなりに広い。ロックリザードを刺激しないよう離れた場所にヘリをつけて地上要員は全員降りる。その後間宮(ヘリコプター操縦中)には上空で待機してもらう。天幕を展開しパントムからの監視情報を確認した。ロックリザードの位置に変化は見られなかった。


「よし。ではこれから徒歩である程度距離を詰める。ロックリザードは移動速度が遅いとの情報があるが・・・一応、約500m程度は距離を取ろうと思う」

「「「了解」」」

「ロックリザードへの接近は俺とナイチンゲールの二人で行う。残りの者は京藤の指揮の元、天幕の警戒に当たってくれ」

「ごめん。ボクがもっと狙撃ライフルをうまく使えれば・・・」

「いや。気にしなくていいよ。それぞれ皆には専門外のことをお願いしているという自覚はあるから」


 今回狙撃を石田が行うには理由がある。それはそれぞれの適正の問題だった。京藤は基本すべての武器を扱えるが・・・逆にそれぞれの適正値は低い。以前、当人の自己申告で減装弾を利用していることがわかっている。今回の固い相手を確実に仕留めるにあたり減装弾では心もとないと判断したのだ。次にナイチンゲール、彼女の兵科は衛生兵。衛生兵はアサルトライフル系と医療系ガジェットなどに適性を持つ。逆に他の装備への適正は低い。特殊技能の回復系の能力に特化したユニットで、それなりに直接戦闘も得意としていた。しかし、狙撃ライフルは全くの専門外だった。続いて、湯川は工兵だ。一般的に工兵はサブマシンガン系とロケットランチャー・地雷などへの適正が高く、それ以外への適正が低い。しかし、湯川は特殊技能へ特化したユニットだった。湯川は施設科で、陣地構築の能力を持っている。ゲーム内では陣地構築によって、陣地内のユニットにバフ効果(命中率や防御力のアップなど)を与えたり、敵ユニットにデバフ効果(移動阻害や命中率ダウンなど)を与えることを得意としていて・・・バランスをとるためか、直接戦闘能力の低いユニットだった。最後の瑞山も工兵だ。とはいえ事情は湯川と同じ。その能力は特殊技能へ割り振られていて直接戦闘は不得手だった。彼女の特殊技能は榴弾砲や迫撃砲といった間接照準射撃系の武器を極めて高い精度で運用できるというものであった。

 このため、安全のため最も直接戦闘能力の高いナイチンゲールを伴って石田が狙撃を行うということになった。


「よし。じゃあ、行ってくる」


 石田とナイチンゲールは天幕を出た。タブレットの地図情報を頼りにロックリザードのいる方へ向かって歩く。歩くこと約15分ほど。遠くの岩の上にいるロックリザードを見つける。素早くその場で中腰になり、双眼鏡を取り出し確認する。視界の中央の岩の上に1匹いるロックリザードは体を太陽の方へ向け目を閉じている。どうやら日光浴を楽しんでいるようだった。岩の手前には3匹のロックリザードが寝そべっている。1匹ほど姿が確認できないが、それはおそらく岩陰にいて見えないだけだろう。

 ロックリザードはトカゲをそのまんま大きくしたような見た目をしていた。トカゲの体の上側を大きな鱗で覆い所々ごつごつとした形状をさせればロックリザードの完成だ。体は薄茶色~茶色といった感じの色をしていて、意外と個体によってその濃さに違いがあった。


「測距計によると~・・・ここから距離511mで・・・仰角無し。風は・・・ないね~」


 ナイチンゲールが同じように中腰になり測距計などを使って狙撃に必要な情報を集めてくれている。

 石田はバレットM82A3を取り出す。そしてこの時石田は思い違いをしていることに気が付かされてしまう。

 M82はヘリや軽装甲の車両を攻撃する目的で作られている。使用する弾はM2重機関銃などでも使われる50口径(12.7mm)弾だ。そして恐ろしい話に、セミオートマチックだ(ボルトアクションの様に手動で排莢、装填作業を行わなくていい)。・・・弾が大きいということはそれを撃ち出すための火薬量も多いということ。火薬量が多いということは、銃身は強度を増すために肉厚になる。さらに狙撃銃と言えばボルトアクションだが・・・当然それらと比べ構造が複雑で、多くの部品を使うことになる。・・・ご理解いただけるだろうか?M82は(バージョンにより異なるが)重量13kgもある。比較対象として30口径(7.62mm)弾を使うライフルと重量を比較してみよう。まず、セミオートマチックのMk.14やM39EMRは重量約5kg程度、ボルトアクションスナイパーライフルのM40は(バリエーションにより異なるが)重量約3~4kgとなっている。ちなみに自衛隊の89式5.56mm小銃は重量3.5kgほどだ。いかにM82が重たいかがわかっていただけたと思う。

 しかし、FPSゲームにおいて銃の重量が動作に反映されることは少ない(というか見たことない)。たとえハンドガンを装備しようとも、M82を装備しようとも・・・視界を動かす速度は操作感度で調整できてしまう。そして、常に動く視界の中心あたりに狙いをつけた武器が視界と同じ動きをするのだった。・・・そう武器はどんなものであっても振り回せてしまったのだ。とはいえ一応、石田はかつての世界でサバイバルゲームをしたことがある。だからその時使っていた電動ガンの感覚で重量3kg程度だろうと勝手に思ってしまったのだ。・・・本当は13kgもあるバレットライフルを。

 石田は両手を腰の位置まで降ろす。そこで右手でグリップを、左手でハンドガードを握る動作をする。すると手に握る感触があり、それを引き上げるとバレットライフルが現実世界に姿を現した。そしてその瞬間、その手に重量がのしかかる。想像をはるかに超えて重たいため・・・石田はバレットライフルに引っ張られそのまま前のめりに倒れてしまう。当然両手はバレットライフルを握っているため受け身など取れるはずもなかった。


 石田は大地にキスをした。


―ガシャン

―ガンッ


「ふっ・・・司令・・・ククッ・・・大丈夫~?」


 ナイチンゲールは倒れる瞬間を目撃したようだ。笑いをこらえながら、石田に安否を確認した。石田はそのままバレットライフルに体重を掛けないような動きで右に転がり、大地にあおむけに転がった。


「ーーッ!ーーーッ!!!」


 鼻を強く打ち付けると涙が出る程とても痛い。ましてそれが体重を乗せた打ち付けであればなおの事。声にならない悲鳴を上げながら石田はのたうった。


『プッ・・・フフフ・・・』

『フ・・・フフ・・・』


 タブレットの通信音で、京藤達の笑いをこらえている声が聞こえる。仰向けになって見えた遥か上空にはパントムが飛んでいた。どうやらその偵察映像を見ていたのだろう。

 少しの間、石田は鼻を抑えて痛みに耐えた。痛みが軽く引いてから、起き上がる。


「司令、大丈夫?」

「何とか・・・。めっちゃ痛かった」

「そりゃ、そんな重たいもの取り出すんだったら気合入れとかないとね~」

「はい。失念してた・・・」

「フフっ。気を付けてね~?」


 ちなみに、石田にはフィールドが展開されている。しかし、どうやらこれは攻撃にカウントされないようで・・・その痛みは直接イシダを襲ってしまったのだった。

 石田は頬を叩き気合を入れなおす。バレットライフルを持ち上げバイポッドを開く。銃口をロックリザードの方へ向けて、ライフルを降ろした。双眼鏡を取り出しロックリザードの状態を確認する。


『大丈夫だよ。ロックリザードに動きはなかったよ』


 通信で京藤が状況を教えてくれる。


「ありがとう」

『うん。周囲の状況の監視は任せて』


 伏せ撃ちの状態になりライフルに着く。バレットライフルには長距離狙撃用の拡大率の大きなスコープが付いている。スコープの脇についているダイヤルを回し500mの距離に合わせる。スコープをのぞき込みロックリザードの姿を確認する。と、ここで気づく。


(あれ?・・・やばいめっちゃブレる)


 500m先のロックリザードを狙う・・・。4匹見える中から1匹のロックリザードに標的を決める。その個体はちょうどこちらに側面を向けていて被弾断面積が最も大きくなっていた。


 さて狙うということの大変さを文章に起こしてみる。

 ロックリザードの全長は1.5mで、その体の中央を狙ったなら左右に75cmづつ・・・という範囲に納めなくてはいけない。つまり500m先で誤差75cmに抑える必要がある。これは手元の角度に直すと0.086度という角度になる。・・・・・・これじゃわかりにくいか。仮にバイポッドの位置から手元グリップまでが60cmあるとする。すると手元が0.9mmほど動くと銃口が0.086度動くことになる。

 うん?中心から片側0.9mm・・・左右両側で1.8mm以内に収める程度なら何とかなるって?


 狙撃するにあたって銃の操作だけでなく、他の問題もある。現実の銃がゲームの様に狙ったところに弾を送れるのか・・・ということだ。回答は当然「そんなわけない」。工場で大量生産された弾には誤差がある。工場などではその誤差を小さくするため日夜頑張る人たちがいるし、最近ではQC(Quality Control:品質管理)検定でもって品質管理についての知識を広く普及させようと取り組む組織もある。驚いたことに米軍のとある海兵隊基地には誤差を限りなく小さくするために、1発づつ手作業で弾薬を製造する後方部隊があったりするほどだ(*1)。そこまでの努力を重ねても・・・当然誤差は残ってしまう。

 例えば500m先で半径15cm(直径30cm)の円の中に集まるような弾があるとしよう。そうなると100%標的に当てるためにはその円をすべて標的の中に収める必要がある。つまり、標的の左右の端から15cm内側の範囲を狙わなければ外してしまう可能性が出てくる。つまり手元のブレで許されるのは500m先の標的中心から左右に75 – 15 = 60cm以内に収める必要が出てくる。こうなると先述した0.086度がさらに狭まり・・・0.068度、手元の操作では0.71mmとなる。・・・そしてもはや計算もしたくないが、照準のずれは左右方向だけでなく上下方向にもある。左右に大きく上下に小さいロックリザードは・・・左右方向より上下方向のずれが天敵だ。

 さらに発射時の反動、スコープの中心はグルーピングの中心と重なっているのか、風はあるのか、コリオリの力による弾道の曲がり・・・。弾が外れる要因はいくらでもある。


(やばいな。呼吸で体が動くだけで照準が外れる・・・スナイパーならヘッドショットを狙うべき?・・・いやいやいや・・・手元をわずかに動かすだけでこんなにも照準位置が変わるのにそんなことできるわけないじゃないか!)


 石田は息を止め狙いを定める。当然、その中心はロックリザードの胴体真ん中だ。そして・・・


―バッ


 独特の大音量の銃声を立てて発射する。胴体中心を狙って発射された弾丸は狙い通りに飛ばなかった。しかし、かろうじてロックリザードの右前足をとらえた。右前足は吹き飛び、腕を持っていかれる衝撃でロックリザードの体が横倒しに転がり、奥の岩にぶつかり止まり、動かなくなった。

 突然大きな音が鳴ったことを受けて、そのほかのロックリザードは驚き、慌てて動き出した。見えていた残り3匹と岩陰から1匹が飛び出し、視界の奥・・・つまり石田達から離れる方向に逃げて行った。


「命中!」

「京藤さん、周囲の状況は?」

『攻撃を受けて4匹のロックリザードは逃げ出しているね。周囲に接近する生物とかは見られないよ』

「了解じゃあ、接近する」


~~~~~


 ロックリザードのもとにたどり着いた後は、古井を除く全員を集めて調査した。まず捕らえた個体は体長1.62mほどで、重量が38kg強。足の長さなどから考えると体高は20~30cmほどといった感じだ。人間からするとほとんど地面を這うような形で接近してくるのだろう。ロックリザードの鱗は一枚づつが大きく固かった。鳥の翼の様に、鱗と隣の鱗が半分程度重なりながら生えていた。生える方向は頭から尾に向かって生えている。鱗一枚でもなかなか固いがそれが重なって生えているおかげで確かに貫通させるのは難しいのかもしれない。加えて、固い鱗同士が重なる構造をしているおかげで一枚の鱗に打撃を集中しても。その重なった鱗へと力が伝搬していき、分散されるような状況でもあった。

 まず拳銃弾の射撃試験を行った。垂直に撃ちこむと距離によっては弾かれてしまった。ごくごく至近距離、10mほどの距離なら何とか弾が鱗を貫くようだった。しかし、ロックリザードは地面を這うように移動してきて、そこに斜めに撃ち込むことが予想される。この場合弾が斜めに当たり衝撃をそらされてしまったため、3mの距離になってようやく貫通できる状況だとわかった。つまりロックリザード相手に拳銃は使い物にならなかったようだ。

 次にライフル類の射撃試験を行った。同じく垂直に打ち込む場合は距離100mでも鱗を貫通することが分かった。しかしロックリザード相手に100m以上離れると照準が困難なためどの距離から貫通できるかはちょっと試していない。拳銃と同じく斜めに打ち込むこともテストしたが、こちらも垂直の場合と同じく、照準が難しいため100mでのテストが限界だった。そして100mでも一応鱗を貫通することが分かった。なお京藤さんの弱装弾の場合、鱗を貫通させるのに80mが限界だった。

 このことからロックリザードを攻撃するときは拳銃弾を利用するサブマシンガンはNGで、アサルトライフルを利用することとなった。

*1

https://www.youtube.com/watch?v=hoFbyb4fQUk&index=9&list=PLIQuS4QqflngC0zDVXSHN1UqToRNO9OK9

32分12秒~


バレットM82について調べているときに面白い話を見つけました。

なんでもアメリカではフルオートの銃の販売は制限があるそうですね。

でもセミオートの銃は販売しても問題ないらしいです。

そう、M82も民間向けに販売されているそうです。

で、めちゃくちゃ殺傷能力が高いじゃないですか・・・だから

「テロリストの手にわたってテロ行為に使われる危険がある!」

という批判があったそうです。それに対する回答が

「犯行に使用される銃はほとんどが隠し持つのに適した拳銃などの

コンパクトな物で、M82は大きさ、重量からして犯罪に適さないし、

犯罪に使用された前例も皆無である」

だそうです。・・・それでいいのか?

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