表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後方兵科が異世界転移!?  作者: お芋さん
19/94

19

祝!累積2000PV!いやったー\(^o^)/

うれしさのあまり速攻書き上げたぜ!

素人の妄想垂れ流し小説にもかかわらず読んでくださる皆さんに感謝!

 衝撃的な事実が発覚した。その後、京藤さんからフォックス族がなぜ土地を追われたのかその経緯を報告し、天幕を出て行った。


(フォックス族の人たちも大変だなぁ・・・。「推測だけど」と前置きを置いてたけど、砂漠の南では水不足が原因で戦争が起きたってことで間違いないんだろうな・・・)


 あくまで推測ではあるが・・・と前置きを置いていたが京藤さんの予測では水不足による水源をめぐる争いが起こったのではということだった。


 京藤さんが出て行ってからしばらく、どうやって現地通貨を獲得するかを思案していたが妙案は浮かばなかった。

 ふと別のことを思い出した。


(そういえば、タブレットを昨日から確認していないな・・・)


 タブレットを取り出す。画面をつけてみると報告という項目が現れていた。報告の横に②と表示が出ている。報告をタップする。すると「資源利用状況」と「戦闘結果」が表示されていた。資源利用状況を選択した。


『警告!

 ご利用の端末には閲覧権限がありません。

終了』


(あれま・・・これはやっぱ館に戻ってPCを使わなきゃだな)


 戦闘結果を選択した。


『盗賊制圧任務終了

 結果:成功

次へ→』


『京藤:Lv.7 ← Lv.4


・戦績       経験値

敵無力化      22 x100exp

拠点無力化    1 x100exp

拠点確保     1 x200exp


・その他活動   経験値

協力員指導    13 x100exp

完全ステルス   1 x1000exp

不殺        1 x1000exp


古井:Lv5 ← Lv.4


・戦績       経験値

索敵アシスト   50 x25exp


・その他活動   経験値

生体調査     1 x500exp

夜間飛行     1 x1000exp


ナイチンゲール:Lv5 ← Lv.1

敵無力化      28 x100exp

拠点無力化    1 x100exp

拠点確保     1 x200exp


・その他活動   経験値

完全ステルス   1 x1000exp

不殺        1 x1000exp

カウンセリング  1 x500exp


石田:Lv6 ← Lv.5


・戦績       経験値

指揮アシスト   50 x10exp


・召喚       経験値

施設        1 x100exp


・その他活動   経験値

完全ステルス   1 x1000exp

不殺        1 x1000exp

協力員獲得    13 x100exp



次へ→』


『京藤:Lv.7

獲得称号

特殊部隊:完全ステルスを成し遂げた。

人道主義:作戦を通して誰も殺さなかった。

教官:現地協力員へ指導を行った。


獲得スキル

特殊部隊:夜間の視界を3%延長する。

人道主義:火殺傷系武器の効果が5%増加。

新米教官:教官として演習を行うと、獲得経験値を10%増加させる。


古井:Lv.5

獲得称号

夜鷹:夜間飛行を実施し成功した。

→夜間奇襲専用機『ナイトホーク』への機種転換資格を獲得した。

→ナイトホーク格納庫が開放された。


獲得スキル

機体熟練Lv.2:発動~出撃にかかる時間を10%短縮する。


ナイチンゲール:Lv.5

獲得称号

特殊部隊:完全ステルスを成し遂げた。

人道主義:作戦を通して誰も殺さなかった。

カウンセラー:カウンセリング活動を行った。


獲得スキル

特殊部隊:夜間の視界を3%延長する。

人道主義:火殺傷系武器の効果が5%増加。

カウンセラー:所属部隊の士気低下を5%抑制する。


石田:Lv.6

獲得称号

人道主義者:不殺の作戦を指示、成功させた。

→スキル「ご安全に!」を獲得。

訓練ブローカー:訓練を領外に提供した。


獲得スキル

ご安全に!:召喚を介さずに直接フィールドの付与、修復、解除が行えるようになる。


完了』


 京藤さんの称号を確認する。


(教官?・・・指導を行ったって・・・何指導したんだろう?まぁ、でもそれでポイント入ったっていうのはいいね。つまり彼女を成長させるなら誰かを指導させればいいってことだよな?しかも経験値+10%ってでかいな)


 古井さんの称号を確認する。


(あ・・・へー・・・称号の獲得によって開放されるようなものもあるんだな・・・ってことはつまり色々な称号を手に入れていかなきゃ領の能力を取り戻せないってことか?)


 ナイチンゲールの称号を確認する。


(へー・・・でもカウンセリングって・・・看護師の仕事じゃない…よね?・・・まぁ、ゲームの設定だったわけだし別にいいか・・・)


 自分の称号を確認する。


(おっ!この「ご安全に!」ってスキルはいいな。これならフォックス族の人たちにもフィールドを展開してあげられる。・・・いや待てよ?・・・これって自分にもかけられるんだろうか?)


 ふと自分にもかけてみるのを試してみようとする。すると、どうしたことか不思議なことに消費MP(どの程度の脱力感があるか)が何となくわかった。


(あれ?・・・えーとMPを消費するっていうのがなぜか理解できた・・・。まぁ、その原理は脇に置くとして・・・発動するってこと・・・だよね?)


 疑問に思いつつもとりあえず「自分にフィールドを展開」と念じる。すると体から力が少し抜ける感触があった。体の周辺の空間が七色に輝きフィールドが現れた。現れたといっても七色に輝いた次の瞬間には輝きとともに見えなくなったのだが、どうやらフィールドが展開されていることが漠然と分かった。フィールドが展開されている感覚はすごく不思議な感じで・・・そう、たとえるならば何かに包まれている安心感・・・のようなものを常に感じる状態になった。


(へ?・・・おー・・・これがフィールドの中か。この安心感は・・・なるほど。召喚してくれって頼むわけだな・・・)


 などと考えていると、天幕に古井さんが入ってきた。


「司令。朝食の準備ができました」

「あ、ありがとう今行きます」


 古井さんに続いて天幕を出る。古井さんについていくと砦の端(出入口と逆)に調理場があった。

 調理場といっても簡単なものだった。キャンプ場の調理場の様に、壁などの仕切りはなく外から丸見えだ。調理場の上には木で作られた簡単な天井が用意されていて、中央に石で作られたかまどがある。今はそのかまどの上に大鍋が設置されていた。かまどの奥には木製の机があってあそこでいろいろ調理したのだろう。包丁や野菜の切りくずなどがあった。そしてかまどを囲むように椅子が置かれていた。

 で、肝心の料理は大鍋の中に雑炊みたいなものがあった。結構おいしそうだ。京藤さんがお皿によそって持ってきてくれた。


「司令。どうぞ」

「ありがとう」


 その後各自お皿を持ってそれぞれの皿に雑炊をよそっていった。

 それぞれがよそっている途中ナイチンゲールさんが、女性二人を連れてやってきた。その女性二人はやはり中東系の顔立ちでよく似ているが、年齢差があった。おそらく母と娘だろう。二人ともとても綺麗だった。女性は若いころに娘さんを生んだのか見た目的には30代に見えた。そして娘さんは高校生程度に見える。なるほど二人とも盗賊が襲うのもわからんではないメリハリのあるボディをしていらっしゃる・・・。

 で、その女性らはナイチンゲールさんに続いてやってきたので近くに座ることになった。男(盗賊たち)に襲われたばかりなのであまり見ていたらいらぬ緊張をさせてしまうと思って目をそらした。

 さて、全員が料理を持って椅子に座ったのでやはり例のあれが始まった。ガパティが声を出した。


「神とイシダ様に、食事を授けてくださったこと感謝いたします!」

「「「「感謝します!」」」」


 突然の合掌に例の女性二人 + ナイチンゲールさんが驚いていたよ。

 食事は雑炊しかないから、皿のを食べたら各自必要に応じてお代わりしてた。ちなみに結構おいしかった。しいて言えば・・・ちょっと塩気が足りなかったかな?


 食後、ユニットの3人に司令天幕へ集まってもらった。一日の活動前に朝礼・・・みたいなものを考えて状況の報告と、戦闘結果について話した。

 まず京藤さんから朝食前に話があったフェーネさんからの情報を説明してもらった。そして現地通貨を稼がなくてはならない状況を説明した。

 次に戦闘結果について各自に知らせた。各自の獲得したスキルなどを全員で共有した。これでお互いそれぞれの能力が必要になった時、頼ることができるだろう。

 話すべきことをすべて終えてから、最後にちょっと気になったことをそれぞれに聞いてみた。


「そういえば、古井さん。盗賊たちの分の朝食は?」

「先ほど持っていきましたよ」

「そっか。ありがとう」

「はい」

「あと、ナイトホークの機種転換資格どうする?」

「え・・・ナイトホークってあれですよね?」


 F-117ナイトホーク。おそらく世界初の量産されたステルス機だ。型式番号にFの頭文字が付く場合、空対空戦闘を得意とする戦闘機を意味している。しかしこの機体はステルス性能を求めた結果、空対空戦闘能力はほぼ皆無となっている。というのは操作性よりもステルス性が重視されたため、極めて操作性が悪いのだ。また、その形状から揚力(飛び上がる力)が小さく、速度を高めて揚力を稼がねばならないという特徴を持つ。このため離陸時の加速距離が長く必要となる上、着陸時も高い飛行速度を維持したまま飛行場に接近、そのまま着陸しなくてはならない。

 優れた性能を持つ機体であることは間違いないのだが、いろいろとパイロット泣かせな機体なのだ。


「少し考える時間をいただいてもいいでしょうか?」

「いいですよ。あ、ただ乗る乗らないは別として、機体の確認に行ってもらっていいですか?動かせる状態にあるか見てきてもらいたいんです」

「はい。了解しました」

「お願いします」


 次にナイチンゲールさんの方を向いた。


「ナイチンゲールさん。朝食時に女性が3人見えなかったけど彼女たちは大丈夫?」

「外科と内科的な治療はすべて終了したんだけどねー」


(すげぇな・・・さすがゲーム内技術・・・)


「やっぱり男性が怖い感じ?」

「うん・・・みたい。骨折するほど殴られたり、いろいろされていたみたいだからね・・・」

「うわぁ・・・それは・・・男性恐怖症にもなるな・・・」

「うん。心の問題は学生時代に軽く習った程度で、専門ではないんだけどねぇ・・・。すでに忘れかけた知識を総動員して頑張っているよ。記憶によると、安全な人もいるって理解してもらうのが一番だったとはず・・・ただ、それを理解してもらうためには、そういう人と交流しなくちゃいけないから・・・。でも彼女たちはそもそも男性の前に出るのが怖くて動けなくなっちゃうからねぇ・・・」

「ありゃ・・・」

「今はまだ心が落ち着かないから、過剰に反応しているだけだと・・・思う。時間を置くしかないねー」

「そっかぁ・・・うん。引き続きお願いしますね」

「りょーかい!頑張るよ」


 そして最後に京藤さんだ。


「京藤さん。フィールドは自分にも張ることができるみたいだ。今度からは前線で手伝えると思うよ」

「ダメだよ!」

「ダメです!」

「ダメー!」


 と3人に否定されてしまった・・・。


「いいかい?君はここで指揮するのが仕事なんだ。それに・・・常に見守ってくれる人がいる・・・そういう安心感を与える存在なんだよ?」

「えぇ。イクちゃんの言う通りです。もしあなたに何かあれば私たちが危ないとか・・・そういう話ではなく、心配なのです」

「うんうん。二人が言う通りだよ!」

「あ・・・えー・・・はい」

「ここでちゃんと見ててよ?」


(う~ん・・・でもさっきの戦闘ログを見た後・・・京藤さん、戦闘についてどう?とか聞いてたじゃん?)


 と思って食い下がろうとする。


「でも・・・」

「「「い・い・で・す・ね?」」」


 と3人そろってこちらにズズイと近寄り圧力をかけてきた。うん・・・いい匂い~・・・って違う違う。


「はい」

「まったくー。司令として自覚に欠けるてる以前に、自身の価値もわかってないんじゃない?」

「そうかもね・・・はぁ・・・」

「どうしたらご自愛いただけるんですかね・・・」


 と散々だった。はは、どうやら食い下がっても無駄みたいなので話題を変える。


「あ・・・えー・・・あ、そうだ京藤さん。自分にフィールド張ってみたら、安心感がすごかった。なるほど召喚してくれって最初言っていたのが理解できたよ」

「はぁ・・・確かにそれも君がくれる安心感の一つだけどね・・・」

「違うんですよ。そういった機械的に与えられるものだけではなくてですね・・・」


 京藤さんと古井さんがさらに続けようとしたところ・・・


「ああ!そうだ!その手があったかーっ!いやったぁー!」


 とナイチンゲールさんが歓喜の声を上げた。


「うわっ?!なっちゃん、どうしたの?」


 なっちゃんて・・・素が出たのかな?あ、ちなみに今のは京藤さんだ。


「いや、そう!司令なら確実な方法で安心感を与えれるんだ~!」

「へ?」

「しかも男だよ?!これならいける!」

「えと・・・どうしたの?」

「司令!被害者女性に会ってフィールド張ってみてくれる?」

「へ?」

「荒療治だとは思うけど彼女らが、男性に対する恐怖心を克服できるかもしれない」

「荒療治過ぎないっ!?」

「いやいや、でもでも、ちょっとやってみてよ!」

「・・・わかった」

「えと・・・どうしよう?司令はこの後一回、領に戻るんだよね?」

「そうだね。その予定。昼ぐらいには帰って来ようと思う」

「えーと、じゃ、できるだけ早く元気にしてあげたいからすぐお願い!彼女らに説明してくる!」


 そういってナイチンゲールさんは天幕を出て行った。残された3人で顔を合わせた。


「大丈夫かな?」

「まぁ、彼女がそう判断したのですから大丈夫ではないでしょうか?」

「だといいけどなぁ・・・」

「うん。確かにちょっと心配だね・・・」

「まぁ、なるようになるか・・・」


 古井さんがこちらに向かって敬礼した。


「司令、フォックス族の方に盗賊の監視をお願いしてから領の空港に向かいますね」

「はい。お願いします」

「はい。ではまた後程」


 そういって天幕を出て行った。


「じゃあ、ボクは一足先に帰って資料を用意しておくね」

「あ、そうだ、ちょっと待って。その前に聞きたいんだけど、昨日フォックス族の人たちに何指導したの?」

「・・・相手の拘束の仕方と、暴れたときの取り押さえ方だよ」

「あ・・・へー・・・なるほど。ありがとう」

「うん。じゃあ、先に領のほうへ行っているね」

「はい。お願いします」


 京藤さんはPCを操作してゲートを開き、天幕を出て行った。

(さて・・・多分さっきの話から分かる感じだと・・・格闘訓練とかになるのかな?・・・ってことは道場でも開いてお金を稼ぐか・・・?)


 と一人、お金の稼ぎ方について思案を巡らせる。


(でもなぁ・・・無名の道場に人が来るとは思えないし・・・。どこかでデモンストレーションでも?・・・いやいやいや。そんなチャンスないだろうしなぁ・・・。まぁ、一案ぐらいには考えておこう。他には古井さんの能力を生かして・・・地図でも作って売るか?・・・それはそれで面倒ごとを呼びそうだよな。衛星が上がる以前は地図情報と言えば軍事情報だったしなぁ・・・。ナイチンゲールさんと病院天幕で、まんま病院を開く?・・・それもなぁ・・・)


 とここでふと気づく。


(あれ?これってどれも女性の能力を使ってお金を稼ぐってことで・・・俺はただのヒモか?え・・・えー・・・でも、そうだよな・・・。そうなっちゃうよなぁ・・・。それはダメってことで、自分がお金を稼ぐなら・・・。この世界で何ができる?)


 と、一人「う~ん」とうなっているとナイチンゲールさんが戻ってきた。


「司令っ!了解取れたよ!ついてきて!」

「了解取れたの!?」


(多分・・・ナイチンゲールさんが強引なんだろうな・・・)


 ナイチンゲールさんについて病院天幕へ移動する。病院天幕の入口は相変わらず閉じられていた。中に入る前にナイチンゲールさんが一度立ち止まった。


「ここでちょっと待ってて。中から声を掛けるから、そしたら入ってきて」

「了解」


 天幕の前で待つ。するとフェーネとフォックス族の女性2人がやって来た。1人は30代程度で愛嬌のある顔立ちをしている。もう1人は50代程度の女性で、がっしりとした体格で世話焼きのおばちゃんって感じだった。


「あ!イシダ様。どうされたのですか?」

「あ、フェーネさん・・・それと・・・」

「私はシュメーラと申します」


 30代の愛嬌ある女性が名乗った。


「私はマハだよ。よろしく!」


 50代の女性が名乗った。先の二人が敬語なのに対してとても砕けた感じで話しやすそうな方だ。


「あ、はい。シュメーラさんとマハさんですね。自己紹介ありがとうございます。私は今から中の女性らの治療を手伝うことになってます」

「そうなんですか」

「フェーネさん達は?」

「私たちは朝食の食器を回収しに来ました。先ほどの朝食が終わった後で一度見に来たら全然手を付けていなかったので・・・そろそろ食べ終わったかなぁ・・・って」

「あーなるほど。ご苦労様です」

「いえ。全然苦労なんてことはないですから」


 中ではまだ女性の覚悟が決まらないのかな?まだ呼ばれない。


「えーと・・・そうだ。フェーネさんたちってあの救出した女性たちと会話できるんですか?」

「はい。少しイントネーションが違うことがありますが、ほとんど同じ言葉なので会話できます」

「へー・・・じゃあ昨日の晩、何か会話されたんですか?」

「・・・えぇ。少しだけ」


 とここでマハさんが会話に入ってきた。


「あの、イシダ様・・・どうかあの子たちを救ってあげてはもらえないかい?」

「見ていてとてもつらそうなんです・・・」

「え?・・・何かあったんですか?」


 マハさんが前に出て手で顔を近づけるようにとジェスチャーしてくる。指示に従ってマハさんに顔を近づける。マハさんも天幕方向に音が響かないよう手を口元に添えて、小さな声で話した。


「あの子たちね、あまりにつらい状況に耐えかねて死んでしまいたいって思ったんだってね。盗賊の持ってくるご飯を食べずにそのまま餓死しようとしたらしいのよ」


(あー・・・だから栄養失調・・・)


「昨日の晩も今朝もあの子らはご飯を食べようとしなかったんだよ・・・」

「・・・」

「腹ペコってそれだけで辛いことなのに、それを超えてでも死にたいって望んじゃうほどの絶望だったんだろうねぇ」


(空腹に悩まされながらも逃避行を続けたからこそ・・・空腹の辛さはわかるんだろうな・・・)


 空腹に耐えながらも生きる希望を捨てなかったフォックス族、絶望の底で空腹よりも自害を選んでしまった女性・・・。どこで差がついたのか・・・。


(いや、その差ははっきりとしているか・・・。フォックス族は可能性は低くとも状況改善に向けて行動できた・・・。ここの女性らは状況を変えるためできることなど何もなかった・・・。この差は大きい。確か「学習性無力感」と言ったか?うつ病とよく似た症状を示すらしい・・・。いや、だが彼女らは彼女らにできる精いっぱいを実行に移したのだからそれには当たらないのか・・・?いや、自殺することを努力とは言ってはならないか?)


 どちらにしても精神的に相当の傷害を負っているのは間違いない。

 天幕の入口からナイチンゲールさんが出てきた。フェーネさんたち3人に気づき喜ぶ。


「あ、フェーネちゃん、シュメーラさん、マハさんちょうどよかった!今時間ある?ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」

「はい、大丈夫です」

「中でね、一人ずつ手を握っていてあげてほしいの。少しでも恐怖心が薄れればって思って」

「はい了解です」

「あ、じゃあ、先に入って。司令はもうちょっとだけ待っていて」


 そういって中に3人を連れて入っていった。

 今度は時間がかからなかった。3人が入ってからすぐ、中から声がかかった。


「司令、どうぞー」


 病院天幕に入る。天幕の最奥にMRIにロボットアームをつけたような装置がある。あれが簡易自動診療システムだ。通常のMRIはリング状の装置内にベッドが動き入っていくのだが、この装置は逆にリングがベッドの周辺を動くようになっていた。そしてその稼働するリングも細く小型になっている。導入時にナイチンゲールさんが「簡易」と頭文字が付くだけあってやはり精密な測定や検査できる症状に制限があると言っていた。

 そしてMRIもどきの手前には机と資料が入った棚が置かれている。本来は医師があそこで診察するのだろう。そしてさらにその手前では病床が並んでいた。現在は脇によけられ中央に広くスペースが作られていた。


(なるほど、時間がかかったのはできるだけ処置にかかる時間を短縮できるようにという配慮だったのか。)


 開いたスペースの中心に車いすに座る3人の少女がいた。年のころはおそらく中学生程度、3人とも顔立ちが違うため姉妹とかの関係ではなさそうだ。3人の少女は肌が荒れていて痩せこけている。髪の毛も傷んでいるのかまとまりがなく、寝ぐせがついているみたいに毛先があちこちを向いてしまっている。ただ、おそらく痩せこけてしまう前は美少女だったのだろうというのがわかる。こちらに気づくと全員目を見開き、口を堅く結び軽く震え始めた。

 少女らの脇にはそれぞれ腰を下ろしたフェーネ、シュメーラ、マハが付いていて少女の左手を両手で握っていた。マハさんなんかは少女の手をさすってあげながら「大丈夫・・・大丈夫だよ」と声をかけている。

 驚いた後、怒りがわいてくる。


(って、幼いな!そうか女性としか報告受けてなかったからな・・・マハさんが「あの子」って言ってたけどそういうことか。おいおい・・・ここの盗賊はロリコンか?こんな年端もいかない少女をこんな状態になるまで痛めつける・・・。人間の所業とは思えねぇ・・・。チクショウ・・・)


 ナイチンゲールさんが視界を遮るように立った。


「ほら、まだ彼女らは男性が怖いんだからそんな風に見ちゃダメだよ!それと、できるだけ手早く処置しちゃって!」

「あ・・・あぁ。ごめん」

「気持ちはよくわかるけどね。ほら、急いで。でも慌てずにね」


 ナイチンゲールさんはイシダの左手を取って少女らの前に連れていく。


「「「っ!」」」


 近づくと少女らは息をのみ、顔のこわばりが強まった。


「大丈夫。ほら、このひと暴れないよ?」


 ナイチンゲールさんが握っているイシダの手を持ち上げて少女らに見せながら声をかけた。


(あぁ!この手を握るってことも男性が女性のコントロール下にあるって暗示で、少しでもストレスを和らげようとの行動なのか!)


 なぜかはわからないが、そう思ってしまった。べ・・・別に残念がってねーし・・・。

 ナイチンゲールさんが声を落として問いかけてきた。


「ね?この距離からでもフィールド張れる?」

「ちょっと待って・・・無理みたいだ・・・」


 消費するMPが思い浮かばなかった。


「そっか・・・じゃあ、私のフィールドはいじれそう?」


 「フィールド解除」と試しに考えてみると消費MPが何となくわかった。


「あぁ、うん。できるみたいだね・・・」

「ってことは触るぐらい近くないとだめってことだねー・・・よし!」


 ナイチンゲールさんに引かれ、左端の女の子の手前まで行く。ナイチンゲールさんは握っている左手を離し、今度は左手首を握った。

 腰を落とし少女に視線を合わせる。恐怖が高まっているのか目尻に涙が見える。ナイチンゲールさんの誘導に従い左手を少女の右手に重ねた。


(フィールド展開!ついでに最大出力!)


 少女の周りの空間が少しの間七色に輝いた。


「あ・・・!」


 少女の口から声が漏れた。顔のこわばりと震えが止まる。そして驚きの表情へと変わる。


「よし!」


 ナイチンゲールさんがイシダの左手を離し、両手でガッツポーズをとった。


(うん。この要領だな)


 右手を伸ばし真ん中に座っている女の子の右手へ重ねる。


(フィールド展開!)


 同じように七色に輝く。


「あ、あぁ・・・!」


 顔から力が抜け、呆然とした顔になる。それから少しして泣き崩れそうな表情へ。

 2人にフィールドを張り終えたので一度立ち上がり3人目のもとへ行こうとする。すると2人目の女の子が前を通り過ぎる際に、左手の袖を握ってきた。


「?」

「いやぁ・・・」


 泣き崩れそうな表情をして袖を握られた。とりあえず、左手でその子の手を握り返し笑顔を向けた。


「大丈夫だよ」


 その場からでも3人目に手が届くので一度腰を下ろして少女と視線を合わせる。

 3人目の子は先の二人の反応に驚いたのか困惑した顔でこわばっていた。右手を伸ばすと一度体がビクッと跳ね上がった。そのまま右手を伸ばし手を重ねる。


(フィールド展開!)


 3人目の子の体の周りが七色に輝いた。

 これで全員フィールドを張り終えた。すると後ろからナイチンゲールさんの驚きの声が聞こえた。


「あっ!」


 その次の瞬間背中に軽い衝撃と、抱き着く感触を感じた。後ろを振り返ると1人目の女の子が背中に抱き付いてきていた。さらに左手で握り返している子も立ち上がり正面に来るとイシダの胸の左側に顔をしつけ抱き着いてきた。


「ああぁぁっぁぁぁぁ!」

「うわああぁあぁ!」


 抱き着いてきた2人が大きな声を上げて泣き出した。右手を見るとやはり3人目の女の子も目に涙をためていた。車いすから立ち上がり、イシダの胸の右側に頭を押しつけやはり抱き着き泣き始めた。


「あぁぁぁっぁぁぁぁ!」


 フェーネさん、シュメールさん、マハさんがそれぞれ近づいてきて、手を握っていた女の子の背中をさする。それぞれが涙をためながら声をかけた。


「グスっ。よかったねぇ。泣けたんだねぇ」

「大丈夫・・・大丈夫だよ・・・」

「もう安心だからね・・・」


 その後3人はしばらく大声で泣き続けた。



~~~


 えっ?泣いてる間、何してたかって?少女といえど女性の胴体部分に触れるのは抵抗があったので抱き着いてきた手や腕を軽くポンポン叩いてなだめていたよ。うらやましいなんて思うだろ?残念、女性の涙ってどうしてこんなにも男の心を乱すんだろうね。3人の涙に囲まれて、思考が停止していたよ。ただひたすら無心に彼女らをなだめていた旨ここに報告するよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ