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初投稿です。頑張ります!
「時代は異分野ミックスだ」
そう誰かが言った。和楽とロックを組み合わせ有名になったグループがあった。教育学の分野に経済学で切り込んだ研究者たちがいた。DNAのらせん構造を解き明かしたのは物理学者と化学者だった。なるほど、日本語と英語をわざわざ混ぜ合わせたこの名は、その考え方をよく表しているように思える。(ただ語呂は悪いよね・・・。)
「リアルウォー」
異分野ミックスを極めたようなオンラインゲームだった。オンラインゲーム特有のサービス開始後に追加の配信を行うことで多くの種類のゲームを一つのゲームに詰め込んで行ったのだ。このゲームでプレイヤーにはまず領地が与えられ箱庭ゲームとしてスタートする。ある一定まで開発が進むと、所属する王国の戦争という形で戦場に駆り出される。この戦争は領地の資金力、人的資源、工業力をもとに計算された兵力を持っての戦略ゲームとなっている。この段階ではまだチュートリアルなので、まずこの戦いに負けることはない。この戦略ゲームで勝利すると新たな領地が与えられる(箱庭が拡張される)。ここまでは戦略系箱庭ゲームとして理解の範囲に収まるのだが・・・。領地経営の際に、なぜか資金を稼ぐために「戦闘状態の他領へ援軍を送る(通称:遠征)」事ができる。そしてそのコマンドを実行すると、その戦場に送られる一兵卒としてFPSゲームが楽しめる。このFPSを有利に運ぶ方法は二通りある。
①領地での開発をしっかりする
FPS時に装備できるものは領地経営でもって開発した装備のみ。よって領地経営をしっかりしないとろくな装備もないまま、勝負することになる。
②軍隊を強化する
FPSゲームにあるまじきものかもしれないが、このゲームではスキルというシステムがある。領地経営で軍隊の演習を行うことや遠征にて勝利することなどでポイントが得られる。このポイントでもって兵士を鍛えられる。装備重量、移動速度、扱える火器のランク、リロード速度などなど...
まさかの箱庭、戦略と来てからのFPSというミックスである。だが、このゲームはさらにジャンルをミックスする。領地運営においてガチャと課金アイテムが存在する。領地経営において工業設備を発展させ工場・工廠を作ると、そこで装備・兵器に関してのガチャが行えるようになる。工場のランクに応じて排出されるレア度とその割合が変化する。また工場・工廠同様に教育施設でユニットガチャが行える。これらユニットは戦略ゲームを行う際のユニット(武官ユニット)や、領地の様々な部署に配置することで各種施設の能力を向上させるユニット(文官ユニット)であった。そしてこのユニットは育成ゲームとなっていたのだ。例えば武官ユニットは「艦〇れ」を想像してもらえばわかりやすい。演習と実戦でもってその能力を高められる。そして人気のある文官ユニットに歌姫系のユニットがある。これは箱庭としては領民の生産性を高める効果を持つユニットである。このユニットを鍛えるには音楽ゲームをする必要がある。
ここまでジャンルを横断してごちゃまぜにしておきながら意外なことにこのゲームは成功を収める。その要因となるのが、お友達システムだ。これはプレイヤー同士で領地を譲渡すること、他のプレイヤーの領地に所属することを可能とするシステムだった。これにより異なるジャンルの愛好家たちが一つの領地に集まり、それぞれのジャンルを楽しむことで領地を発展させ、さらなる高みを目指せるという社会的な性質を持たせることに成功したからだ。(領地間の友軍システムがありこれも含めてお友達システムとする人も多かった。こちらは遠征しにいく他領地を集めることや友軍領の装備・兵器をレンタルすることを可能としたシステムだった。このためPvPで非対称戦闘となることはあまりなかった。ただし、レンタルで使用する装備・兵器はモンキーモデルで本来の性能の7割程度に能力を制限される)
そしてこのゲームを楽しむ男がここにも。その男、名を石田一秀という。眼鏡をかけ、髪は短めにそろえ中背中肉の平凡な男だった。
この男は領地を共有することはしなかった。というのもFPSを主目的としてこのゲームを始めたためだ。FPS中においては先陣を切って突撃するタイプではなく、突撃を支援する中距離を好んだ。反射神経がそれほど良くない彼は最前線のすれ違い時の混戦や、大量の敵と遭遇した際の排除優先度の判断に問題があった。そして、中距離でちまちま戦う彼は「腰抜け」だった。ただ当人はそのことをよくわきまえていた。ゆえに地味で嫌がられることを率先して行った。AA(対空車両)による対空警戒、無人機などによる敵位置の特定、味方戦闘車両の修理、敵戦闘車両へのレーザーペイントetc...
彼は「チームで戦っている」という一体感が好きなのだが、行っているのはFPSゲームの本来の楽しみ方から外れたことだ。以前に取り組んだゲームでは「前線(戦闘の行われる場所)で戦力が減るだろ」などとよく批難された。その経験から領地を共有し、チームに所属することを嫌がった。もし所属すると批難がダイレクトに送られて面倒そうだと考えたためだ。「ゲームぐらい好きに楽しませてほしい」と考える彼は領地を共有する選択肢を捨てたのだった。
このゲームでは扱える武器、兵器などは領地における開発が必要となる。そして、開発効率を高めるには人材の教育・育成が必要となる。FPSだけを楽しむわけにはいかないという問題を彼は課金することで解決した。少なくない額の課金をし、通常の兵器と支援系に特化した装備・兵器を揃えた。このゲームでは友軍から武器のレンタルが行えた。そのため、攻撃系の装備や兵器を集めるチームは多くあったが、支援系の装備を充実させるところは珍しかった。このため支援系の装備がそろっている領地として、「友軍登録」の申請は多くあった。彼はその申請を断らなかったため多くの友好な領地を持った。
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-ピンポーン!
「宅配便でーす!」
「よっしゃ!届いたかッ!」
印鑑を手に取り玄関へ。先月のアップデートで「領地WARS」にVR機能が追加された。上手な人たちの養分ではあるけどFPSを中心に楽しむ人間としては是非やってみたいところだ。なのでVRヘッドセットを急ぎ注文した。
「印鑑お願いしまーす。」
「はい。」
「ありがとうございました。」
部屋に持って帰ると、さっそく開けてPCに接続する。ゲームを立ち上げてVRの設定を済ませる。
「さて、まずはVRってどんな感じなのか見てみるとしようか」
初めてのVRでいきなりFPSをプレイするのは感覚が追い付かないかも、と考えとりあえず領地経営モードを選択する。通常だとRPGゲームのようなTPS画面で、領地の散策や開発を行ったりすることができる。私の作った領地の街は・・・正直課金のし過ぎで見どころのない街のはずだ。武器・兵器の製造工場は欲しい、でも領地経営に時間をかける気がない・・・ということで7割がた課金アイテム「完全自動化工場」を並べているだけだからだ。でも艦船を浮かべている港湾部などは壮観な姿になっているだろうと思う。
「よっしゃ、準備完了。それじゃいざッ!」
ヘッドセットを装着する。
「・・・へ?」
画面が真っ暗だった。側面にある操作ボタンを押してみるも何の反応もない。
「えぇ~・・・。不良品?」
ヘッドセットを外すとそこにはVRの世界が広がってた。