第36話:雨にも負けず、風邪なんかにも負けるわけがなく
せっせせっせとお粥を作るクロウです。
適当に塩を入れて味を整える。
ちょっと味見。……うん、こんなものかな。
出来上がったお粥を器に盛って、布団にくるまりながらウンウン唸っているモモグリさんの所まで持っていきます。
「モモグリさん、お粥作ったよ」
「ん……どうも」
それだけ言うと、体を起こしてお粥を食べ始めた。
なんとなくわかるだろうけど、モモグリさんは風邪を引きました。
馬鹿は風邪を引かないというのは嘘なんだね。
「あ、手がすべったー」
「熱いッ!」
モモグリさんは熱々のお粥がくっ付いたさじを投げつけてきました。明らかに台詞が棒読みだったので、わざとです。というか、投げつけるという行為をした時点でわざとだというのがわかります。
「今、馬鹿は風邪を引かないんじゃないの? みたいな失礼なこと考えてたでしょ」
こういうことに関してはやたらと鋭いモモグリさん。エスパーなんじゃないかとたまに思う。
「それにしてもこのお粥、味はまあまあとしても玉子が入っていないのは非常にいただけないわね。八十点」
玉子が入っていないだけでも一応高得点なんだ。
「言っておくけど、千点満点で八十点よ」
満点の値が大きすぎる。百点満点に直したら、たったの八点になるし。玉子評価は意外とデカかった。
散々ボクのお粥を批判しておいて、結局全部たいらげてました。残さず食べてくれて嬉しいです。
「クロウ君、デザートが食べたいな」
病人のくせに食欲旺盛です。まあ、何も食べないよりかはマシだと思うけど。
とりあえず冷蔵庫に入っていたアイスクリームを出しました。百円で買った、抹茶味のアイスです。
「却下」
却下されました。
「アイスはハーゲンダッツじゃないと認めない」
この人贅沢です。
やれやれとため息をつきながら、何か別のものを探します。
プリンがありました。これなら喉にもスッと通るし、風邪引きさんにはちょうどいいんじゃないかな。
「却下」
またか。
「牛乳プリンじゃないと認めない」
ちょっとカチンときたので、冷蔵庫から牛乳を持ってプリンにかけてやりました。
グーで殴られました。
モモグリさんは今日も元気です。